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ネコとお正月9

「いっただっきまーす」


 子どもたちはおせちを食べている。

今日はお正月だから子どもたちが来ている。


さっき、大トロとタイのお刺身をもらったからお腹は満たされたし、

いつもぼくにちょっかいを出してくる子どもたちは、

おせちに夢中だから今のところは危害をくわえてくることはないはず。


 安心して定位置のストーブの前に行き、


「スピピ~。スピピ~」


 眠った。


 それから数時間たって、


「パチン」


 と手が叩かれる音や、


「パシーン」


と何かが飛ぶ音も聞こえてきた。


「随分と騒がしいにゃん。何をしているのかにゃ?」


 気になって目を覚ますと、

子どもたちが口々に痛いって言っている。

よく見ると、お互い、おでこをおさえている。どうやらおでこをぶつけたらしい。


「部屋の中を走り回っていたのかにゃ~。それだったら、もっとドタバタと音がするはずだから違うみたいにゃん」

「んにゃ?」


 子どもたちの目の前には、カードみたいなものがいくつも並んでいる。

そして、子どもたちは真剣な眼差しで見つめている。

紙には文字と絵が書いてある。


「二兎を追う者は一兎をも得ず」


 とご主人様がカードを見ながら読み上げると


「はい」

「パチーン」


と子どもたちがカードを叩いている。


そして、叩いたカードをとってよろこんでいる。


「あれってもしかして、かるたかにゃ?」


 ぼくは、テレビでかるたを見たことがあった。

かるたは、読み札にあった絵札を誰よりもたくさん取った人が

勝ちという遊びらしい。


「ちょっと騒がしいけど、かるた取りに夢中ならぼくは安全にゃん。

もう一眠りしよう」


 そう思い、


「スピピ~。スピピ~」


 と安心して眠っていたら。


 すると、


「ピューン」


 とぼくのもとに飛んできて


「バシッ」


 ぼくの頭にかるたが当った。


「痛いにゃ!」


 どうやら、子どもたちが取ろうとしたかるたが

飛んできて、ぼくに当たったらしい。

それを見ている子どもたちが笑っている。


「にゃ~!」


 ぼくは嘆いた。



「ちりも積もれば山となる」


 ご主人様はぼくに気にすることなくカードを見ながら読み上げた。


 すると、


「はい!」


 子どもたちは声を上げて、目の前のかるたを取っている。

かるたが当たったときは痛かったけど、かるた取りは楽しそう。


「ぼくもかるた取りがしたいにゃん。あれならぼくにもできそうにゃ! けど、子どもたちよりも早く取れるかにゃ~」


と疑問に思った。

子どもたちの方がかるた取りに慣れているから、有利かもしれないには間違いない。

それに、ぼくの手は子どもたちと比べると小さいし手の長さも短い。体系的には不利。

おまけにぼくはネコだから人間と比べると力が弱いから、取り合いになったら負けちゃうかも。


「けどぼくは諦めたくないにゃん。どうしたらいいかにゃ~」


 と考えていたら


「あっ!」


ぼくはひらめいた。ぼくはネコだから人よりも素早く動けるから、スピードなら負けないはず。

耳をよーくすましてパッと動いたら取れるはず。

次は絶対に取ろう。


ご主人様はカードを持っている読み札を読みあげた。


「焼け石に水~」


 焼け石に水だから、「や」って書いてあるのを探さなきゃ。


「どれかにゃ~」


 目を凝らして探した。


「あっ! あったにゃ!」


 ぼくはお目当てのかるたを目掛けてジャーンプ!!


「やった~。取ったにゃん。みんな見て見て~」


 ぼくは満足していた。

けど、なんだかイヤな視線を背中に感じた。

恐る恐る振り返えろうとしたらご主人様に首根っこを掴まれた。


「痛いにゃ~ん」


 ご主人様が怒っている。


「きみは、あっちで見ていなさい。参加しなくていいです」


 ふと周りを見ると、かるたがあっちこっちに散らばっている。

どうやら、ぼくがジャンプしてかるたを取ったときに

周りにあったかるたを飛ばしてしまったみたい。


「お行儀よくかるたを取ろうとしたら、他の人に取られちゃう。

だから仕方ないにゃん!」


 ぼくは鳴いて猛抗議した。

 けれど、


「邪魔しないの!」

 

 ご主人様に怒られた。


「やだ~。ぼくもかるた取りやりたいにゃ!」


 と目で訴えた。


「ダメです。きみの言いたいことはよく分っています。でも、どうがんばっても、

きみの重い身体では、飛びついただけでかるたが散らかってしまいます。子どもたちが

かるたを飛ばしたとしても、きみのようにたくさん散らかすということはありません」


 ご主人様は言った。

うぅ~。それはそうだけど……。ぼくはぷっくりした自分のお腹を見た。


「そうだ。そーっと飛ぶならいいでしょ。どうかにゃ? ピョーンと。ねっ」


ご主人様を見ると、


「ダメです」


 ぼくの言いたいことはしっかりと伝わっていたが、首を振った。

どうやらダメっぽい。これ以上ぼくがなにかしたら怒られるだけだから、あきらめよう。

ぼくは少し下がってかるたを見つめた。


 その間、子どもたちはぼくが散らかしたかるたを並べ直した。


「はーい。みんな。次の札を読むよ」


 子どもたちはかるたを見つめた。ご主人様は次の札を読み上げた。


「ネコに小判!」


 そう言うと、子どもたちはかるたではなくぼくを見て笑っている。


「それってどういう意味? 理由は分からないけど、笑われているのは、やな気分にゃん。

今年も散々なお正月にゃん……」



《終わり》


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