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ネコとお月見

「ただいまー」


 んにゃ~。ご主人様が帰ってきた。

リビングに入ってくると、買い物をしてきたみたいでお買い物バッグを持っている。

あと、細長いイネっぽいものを持っている。

なんだろう……。ぼくは近づいて行った。

枝分かれしていて、ふわふわしているものがついているように見える。

毛?それとも棘?? 細いからさわっても痛くなさそう。

なにそれ?


「コレはススキっていうんだよ。お供えに使うんだ」


 お供え……。へ~え~。いままであんなお花? みたいなものを

飾ったことあったっけ??

まぁいいにゃん。

ご主人様はキッチンに行った。何かを作るみたいだにゃん。


 夕ごはんの時間にしてはちょっと早い気がするけど、おやつでも作るのかにゃ。

できれば、ぼくにも食べることができるものにして欲しいにゃ。

人間の食べ物でネコが食べることができるものは限られているから。

それにすぐにできるわけじゃないし……。そんなことを考えていたら


「スピピ~。スピピ~」


 いつものように眠った。


 んにゃ? 目が覚めると、すっかり日が落ちて外は真っ暗になっていた。

そして、窓が開いていることに気がついた。


「ご主人様、窓、閉め忘れちゃったのかにゃ?」


 周りを見ると、ご主人様はいなかった。もしかして、外に出たのかも。

ぼくは縁側に出た。すると、あることに気がついた。

台の上にお団子がピラミットのように山高く積まれていた。

そして、ススキは花瓶に生けてあった。


「お団子がいっぱいだにゃん」


 お団子を見て思わず、

 

「ジュルジュルジュル」


 ぼくのよだれが出てきた。


「きみー。起きた? お団子には近づかないでコッチへおいで」


 ご主人様は縁側に座っていた。

ぼくはご主人様の隣に座った。


「お月様キレイだね。お月見日和だよ」


 本当だにゃん。お月様はまんまるでキレイだにゃん。


「今日は十五夜でお月見をする日なんだよ」


 お月見ってなに?

 ぼくはご主人様を見た。


「十五夜は、キレイなお月様を眺めるだけじゃなくて、

お米や野菜がたくさんとれるようにお願いをしたり、収獲できたことを感謝するんだ。

お月様が夜の暗さを明るく照らしてくれているから、お月様へお礼を伝える日でもあるんだよ」


 十五夜にはこんな意味があるんだね。


「ススキやお団子などをお供えすることもコレに関係していて

ススキには、悪霊や災いなどから収穫物を守り、

来年の豊作を願う意味がこめられている。

お団子はお米を使っているから次もたくさん収穫できるようにと

いう意味もこめられている。

そして、お団子はお月様のように見立ててお供えするから山のように積んでいるんだよ」


 しばらく月を眺めていると、ご主人様は立ち上がり縁側を歩いて行った。

 そして、お団子が置いてある台を運んできた。


「きみにもあげるよ」

「ぼくにもくれるの?」


 まさか食べられるとは思っていなかったからビックリした。

ご主人様はお団子を食べやすいように小さく割ってくれた。


「慌てて食べないでね。のどに詰まらせたら大変だから」


 ぼくは小さくなったお団子を食べた。

 一方、ご主人様はきなこやあんこをつけて食べている。


「ジ~」


 ぼくはご主人様を見つめた。視線に気づき、手を止めた。


「お団子はあげられても、甘いものをあげるわけにはいきません。

糖分の取りすぎは身体によくないからです。それに、きみに味が分かるとは思えません」


「え~。ぼく、あんこ食べたいにゃ~」

「ダメです」

「じゃあもうちょっとお団子ちょうだい」

「お団子はもうダメです。ネコには少量だけしか食べさせられない食べ物だからです」


 どうやらお団子はネコとってあまりよくない食べ物のものらしい。

 けど、


「チラリ」

 

 目の前に食べ物があると食べたくなるにゃ~。

こうなったら強行手段!


「にゃ~。」


 ぼくはお団子が乗っている台を目がけて飛びついた。


 すると、


「ヒョイ」


 ご主人様は台を持ち上げた。


「アレ?」


 ぼくはそのまま何もない縁側に落下した。


「ズテーン」


 ぼくはお腹を打ちつけた。痛いにゃ。


「そうなると思っていました。コレ、しまうよ」


 ご主人様はお団子を乗せた台を持って、リビングに入り、


「ピシャン」


 窓を閉めた。


「え! 待って。ぼく、入れないにゃん!」

「少しはそこで反省していなさい!」


 ご主人様はぼくに背を向けた。


「え~!」


 ぼくは悲しくなった。

 そして、


「ピュ~」


 冷たい風が吹いてきた。


「ブルブルブルブル」


 寒いにゃ。もうしないから開けてにゃ~。

 寒しからさらに悲しくなった。


「ドンドンドンドン」


 必死に窓を叩いたけど、開けてくれなかった。

 しばらくはこのままっぽい……。


「ピュ~」


 また冷たい風が吹いた。



《終わり》 



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