ネコとアンテナショップ
「きみー。さぁココはどこでしょう?」
ご主人様はぼくに携帯電話に映っている写真を見せてくれた。
あっ。りんちゃんじゃない? 写真にはりんちゃんが映っていた。
りんちゃんは、ご主人様の昔からのお友たちで、ずっと仲良くしていたのだけど、
お仕事の都合で、今は東京に住んでいる。
りんちゃんの横にはひゃくまんさんがいる。
ひゃくまんさんとは石川県のご当地キャラクターで、
全身が金箔で派手な花柄。ちょびひげを生やしただるまみたいなキャラクター。
石川県? 金沢駅にあるひゃくまんさまは置いてあるから。
けど、映っている背景が金沢駅ではないにゃん。
写真のひゃくまんさんはどこか建物の前にいて、その建物はお店屋さんぽくて何かを売っているような場所みたい。商品棚や人影みたいなものも見えるから。
ん?よく見ると写真には「江戸本店」と映っている。江戸ということは東京?
じゃココはどこ??
「ココはね、東京にある石川県のアンテナショップなんだよ」
「アンテナショップ?」
ご当地商品やベントがある場所なの。ココは石川県のアンテナショップだから、
石川県のものが置いてあるの。
「へ~え~。だからひゃくまんさんがいるんだね」
りんちゃんから送られてきたラインの文章を読み上げてくれた。
『石川県には帰れそうもないので、気分だけでも行った気になろうと思って
石川県のアンテナショップに行ってきました。
1階は食品、地下はビールなどのお酒。2階は観光情報やワークショップなどのイベントが行われています。私は水引を作るワークショップをやっていたので参加しました。作った作品はコレです。初めて作ったけど、上手でしょ!』
写真にはりんちゃんの手のひらにはピンク色と緑色のお花の形をした水引が乗っている。
ピンク色がお花で、緑色が葉っぱだとすぐに分かった。
『それをアレンジしてしたものがコレです』
次の写真にはりんちゃんの髪の毛には水引のヘアピンがとめられている。
自分で作った水引をアレンジしてヘアアクセアリーにしたらしい。
「かわいいにゃ~」
※水引とは贈答品や封筒に付けられる飾りひもですが、
近年、置物やアクセサリーとし人気があります。
りんちゃんは手先が器用だから作るのも上手。
きっとご主人様は無理だろうな。同じようには作れないよ。
ご主人様をチラリと見た。
「ねえ、きみ。どうせ、りんちゃんみたに上手く作れないよって顔をしているね」
「えっ!」
ギクリッ。バレてるにゃん。
「きみよりは上手く作れます!」
それは当たり前でしょ。ぼくネコだよ。比べる方がおかしいでしょ。不器用なご主人様は自分でも自覚しているからことを言ったっぽい。
「そんなに言うなら水引アクセサリーを作ってりんちゃんに送ればいいにゃ!」
と心の中で思った。
すると、携帯電話で何かを調べているみたい。
「どれどれ」
ぼくは、ご主人様の携帯電話をのぞくと、ご主人様は水引のアクセサリーを見ていた。
丸い玉みたいに結んでいるものやお花やリボンみたいに結んでいるものなど、
ぼくにはどうやって結んでいるのかわからないけれど、どれもかわいかった。
「で、どうするの。どんなものを作るの?」
するとご主人様は、
「今度のりんちゃんの誕生日、水引のアクセサリーをプレゼントしよう。有名なところに買いに行こう。もちろんきみもいっしょに行こうね」
そうだよね。それがいいよ。これ以上ぼくは何も言わなかった。
《終わり》
※ここで書かれているアンテナショップの情報は、
いしかわ百万石物語 江戸本店が元になっています。