表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/143

ネコとハロウィン

「ホワーン」

 んにゃ? ぼくは甘いにおいで目が覚めた。

ご主人様がキッチンで何か作っているみたい。

「お菓子でも作っているのかな?」

 お料理好きなご主人様はお菓子をよく作る。


 だけど残念ながら、ぼくの口に入ることは、あんまりない。

人間が食べるものは、ネコにとって体によくないものが多いらしく、

食べさせてもえることは、ほとんどない。

たまに食べさせてもらえることがあっても、ほんの少しだけ。


 けど、ご主人様の作るものはいつもおいしい。


「今日のお菓子は、ぼくも食べられるといいにゃ~」

と思いながら、また

「スピピ~。スピピ~」

 と眠ってしまった。


 それから少し経って、

「肉まん。肉まん……」

 ぼくのことを呼ぶ声がして目を覚ますと、

目の前には、オレンジ色の大きなかぼちゃのお化けがいた。


「にゃー。お化けー!」

 ぼくはビックリして声をあげた。

 すると……。

「んにゃ?」

 よく見たら、かぼちゃお化けのお面をかぶった子どもたちだった。

もう、人騒がせな…… じゃなくて、ネコ騒がせ話だよ。

ぼくのビックリした姿を見て、子どもたちが笑っている。


 子どもたちはかぼちゃお化けのお面をかぶったまま、ぼくに何かを言っている。

 なにない。

「遊んでくれないと、イタズラしちゃうよ~!」

だって。

「何もしていなくても、いつもぼくに、イタズラをしているくせに!

どの口がそんなことを言うにゃ! 今日こそはおしおきするにゃ~」

ぼくは子どもたちに飛びかかろうと近づいたときに、TVから大きな声が聞こえてきた。

ふとTVを見ると、おばけや魔女の格好した子どもたちが、


「トリック・オア・トリート!」

と言いながら、

大人からお菓子をもらっている様子が映っていた。

「あっ、今日はハロウィンだにゃん。だから、魔女の帽子をかぶったり、マントをはおっていたりと、ハロウィンの仮装をしているんだね。

だからと言って子どもたちがぼくに

イタズラしていいわけではないけれど……。


 ご主人様がお部屋に入ってきて、子どもたちに手作りのかぼちゃのお化けの顔をしたクッキーをプレゼントしていた。

さっきキッチンで作っていたやつっぽい。

子どもたちは大喜びして食べている。


 その間に、ご主人様はおぼんの上に何かを乗せて運んできて、テーブルの上に置いた。

よく見ると、それはかぼちゃのプリンだった。

「いいにゃ~、おいしそうにゃん。ぼくも食べたいにゃ!」

羨ましそうに見ていたぼくに、子どもたちはスプーンでプリンをすくって持ってきてくれた。

「もしかしてくれるのかにゃ?」


 けど、お正月のときは、お刺身をくれると思いきや、

わさびをたっぷりつけたお刺身だったし、今回も怪しさ全開。

う~ん、子どもたちには毎回ひどい思いをさせられているけど、

今日はプリンだからそんなことはないかも……。

いやいや、そんなことを思っていつもぼくは騙されている。

「今回は騙されないにゃ!」

ぼくは子どもたちを徹底的に無視することにした。

しつこく何度もプリンを口に近づけてくるけど、ぼくは無視をし続けた。


 すると、子どもたちはやっと諦めて、自分たちだけでプリンを食べ始めた。

「ふぅ~、やっと諦めてくれたにゃ。しかし、おいしそうにゃ~」

羨ましそうに子どもたちを見ていたぼくに、ご主人様が近づいてきて、目の前にお皿を置いた。

 なんと、ぼくの目の前には、たくさんのクッキーとプリンが!

「これ、食べていいのかにゃ?」

 ご主人様はニッコリとほほえんでいる。どうやら食べていいっぽい。


 ご主人様がぼく専用に作ってくれたネコが食べても安心なお菓子みたい。

ぼくのこと、気にかけてくれていたのかもしれない。

「こんなにたくさんのお菓子を食べていいなんて、ぼくは幸せなネコだにゃん。早速食べるにゃん」

「パクっ」

 おいしい~。幸せってこうゆうことを言うかもしれない。こんなにたくさんあるのだから、ゆっくり味わって食べないともったいない。

「うにゃ!?」

 二口目を食べようとしたそのとき、ぼくのクッキーとプリンに何か黒い液体が飛んできて、

「ベチョ」

 っとくっついた。

ぼくがあっけに取られていると、続いて白いウニャウニャしたものがかけられ、さらに赤いものがブチューと飛んできた。


「何が起こったにゃ!?」

ぼくのクッキーとプリンは、黒、白、赤とまじったすごい色になっている……。


 そして、最後に茶色い粉みたいなものがパラパラと振りかけられた。

その先を見上げると、そこには子どもたちがいた。

手には、ソース、マヨネーズ、ケチャップ、こしょうを持ち、

笑いながら飛びはねて、大はしゃぎをしている。


呆然としていたぼくは、何が起こったのかやっと理解をすることができた。

「ひどいにゃ~!!」

 ソースにマヨネーズ、ケチャップ、こしょうがかかったクッキーとプリンなんて……

「もう食べられるものじゃないにゃ!!」

 今までに受けたことのないような仕打ち……。


 あっ! 思えばさっき、子どもたちは「遊んでくれないと、イタズラしちゃうよ~!」

って言っていた。

「やられたにゃ……。まさか、こんなにひどいことをされるなんて……」

 あのとき無視なんてしないで、

きちんとかまってあげればこんなことにはならなかったかも……。

やっぱり、無視をすることはよくないことなんだね。


「ぼくも友だちに無視をされたら嫌だにゃ……」

何だかすごいクッキーとプリンになっちゃったけど、

残したら、せっかくぼくのために作ってくれたご主人様に申し訳ない。


「パクっ!」

うっ、この世のものとは思えないすごい味。

「まずすぎにゃ~」

ハロウィンがトラウマになりそうなくらい凄い味だった。



《終わり》


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ