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ネコとふうせん

「ピンポーン」


 玄関チャイムの音が鳴った。


「んにゃ~。誰か来たっぽいにゃ~」


 ご主人様はすぐに立ち上がり、玄関に向かって歩いて行った。

 ぼくはキャットフードのCMに夢中で、誰がきたかも気にならなければ、話し声さえ聞こえなかった。


「じぶじぶと煮詰めておいしさが詰まった、新商品『じぶ煮味』のキャットフード。

いつものキャットフードに飽きたネコちゃんにどうぞ!」


 ネコセレブみたいな高級品もいいけど、変わった味もいいにゃん。

と思っていたら、CMが終わり、子どもたちが来たことに気がついた。んにゃ?

子どもたちは何かを持っていた。それぞれ、赤色。黄色。青色の丸いものを持っている。


 赤色の丸いものを持った子どもが、その丸いものを上に浮かせ手を離した。


「フワリ」


 と浮いて、また手に持った。どうやら、軽いものっぽい。

しかも薄そう。丸いからボールかと思ったけど、

もしボールならこんなに薄くないはずにゃん。


 コレってなんだろう?

ぼくは気になって子どもたちに近づいた。


「ふうせんをもらったんだ」


 ふうせん? ぼくは初めて聞いた。


「ふうせんはね、袋の中に空気を入れて膨らませるものなの」


 とご主人様は言った。


「肉まん。見て。おもしろいものを見せてあげるよ」


 なんだろう。ぼくでもわかるもの?


「ジャーン」


 そこには見覚えがある形のものがあった。


「あっ。イヌだにゃん」


 子どもの一人が見せてくれたものは、ふうせんで作ったイヌだった。


「ふうせんをクネクネしたり、ねじったり曲げたりして作ってくれたんだ」


 子どもは嬉しそうに話した。


 へ~え~。ふうせんってこんなこともできるんだね。


「幼稚園にバルーンアートが得意な人が来てくれて、そのときにもらったんだ。で、コレももらったの」


「コレはなに?」


 子どもの手のひらにはひょうたんみたいに先が細くて奥が丸く膨らんでいるような形をしている。

「ふうせんだよ。これに空気を入れて膨らませると大きくなるんだよ。コレみたいに」


 子どもたちはそれぞれ持っている丸いふうせんを見せた。


「えっ? 大きくなるの??」


 そんなわけないにゃん。小さい袋みたいのが、あんなに膨らむなんて……。


「きみ。さては疑っているでしょ。そんなわけないじゃないと言う顔をしている。

 

 ご主人様は言った。


 疑うに決まっているにゃん。だって、大きくなんかならないよ。


「じゃあ見せてあげるよ」


 子どもの一人が、


「フーフー」


 とふうせんをくちびるにはさんで空気を入れ始めた。

すると、どんどん膨らんできた。


「あっ。膨らんだにゃん!」


 その後も膨らまし続け、みるみる大きくなった。

手に持っていたふうせんと同じくらいの大きさになると膨らますのをやめ、

空気を入れていたふうせんの先端を縛ると丸いふうせんのできあがりだった。


「ほらね」


 わー。スゴイにゃん!!


「肉まん。はーい」


 子どもは、さっき膨らましたふうせんを投げてくれた。


「ツルッ」


 ぼくの肉球ではうまくつかめず落としちゃった。

つかまえようと追いかけるけど、触ると軽くて


「フワリ」


と浮くからなかなかつかめない。けど、ふうせんを追いかけるのは楽しい。


「にゃん♪ 楽しいにゃん♪」


 ぼくは、さわっては飛ばしてそれを追いかける。という繰り返しをして遊んだ。


 それを見ていた子どもたちは、またふうせんを膨らました。


「肉まん。おいで。新しいふうせんだよ」


 んにゃ? 新しいふうせんをくれるのかにゃ。ぼくは近づくと、くちびるからふうせんを離し、ふうせんの口をとじていないふうせんをぼくに向かって飛ばした。


「ピュー」


ふうせんは、音を立ててすごい勢いで飛び、空気がどんどん抜け、ぼくに襲いかかってきた。

あまりの速さとふうせんの勢いに


「にゃー」


 ぼくはびっくりして腰を抜かした。


「ポテッ」


 ふうせんは、元の小さい状態に戻って落ちている。


「やっぱり驚いた~」


 子どもたちはニヤニヤ笑っている。


 ひどいにゃー。こうなったらっ!


「にゃ~」


 ぼくは子どもたちに飛びつこうと走り出した。


すると、


「ピュー」


 また新しいふうせんがぼくに向かって飛んできた。


「えっ!」


 ぼくは、あまりの速さに逃げ切れず、空気が抜けたふうせんに当たった。

ちっとも痛くなかったけど、嫌いにゃん。


 よく見ると、子どもたちが次々にふうせんを膨らませている。

一気に飛んできたらたまったものじゃないにゃん。


 ぼくは急いで逃げ出した。


「ふうせんの使い方、違う気がするにゃ~」


 と思いながら。



《終わり》


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