ネコのお絵かき(後編)
ふと、カーペットを見ると、ぼくの周りは肉球の足跡だらけになっている。
遊びに夢中になっていて、全く気づかなかった。
「にゃー。どうしよう……」
ぼくはご主人様に首根っこを掴まれ、お風呂場に連れて行かれた。
そして、
「ガチャ」
お風呂場のカギを閉めた。
「これはもしかして……」
ぼくは嫌な予感がした。
すると、ご主人様はお風呂場にある液体の入ったポンプを押して、
泡を立てて、ぼくの身体を洗い始めた。
「くすぐったいにゃ~」
どうやらぼくの身体を洗っているらしい。
ぼくはコレがニガテだった。だってくすぐったいんだもん。
しかも、どんなに動かしても、
ご主人様がカッチリ身体を抑えているので、
身動きがほとんどとれない。くすぐったいのを我慢しないといけない。
「にゃにゃ~。くすぐったいにゃ~」
ご主人様の手が止まった。
「にゃ? 終わったのかな??」
と思いきや、
「ゴシゴシゴシゴシ~」
さらにさっきよりも強い力で洗い始めた。
「痛いにゃ~」
最初は優しく洗ってくれるんだけど、途中でめんどくさくなってゴシゴシしちゃうんだよね。だから、ものすごく痛い。
再びご主人様の手は止まった。
どうやら足も肉球も洗い終わったみたい。
「この後は当然……」
「ジャージャージャージャー」
ぼくの予想した通り、シャワーのお湯が勢いよく飛んできた。
「コレ、嫌いにゃ~」
ぼくは水もニガテ。だからお湯が身体にかかり続けている間、ずっと鳴きっぱなし。
五分後、
「キュ」
シャワーが止まった。
「やっと終わったみたいにゃ……」
お風呂から出してもらい、脱衣所でぬれた身体を拭いてもらうと、すっかり元の白い毛並みに戻っていた。
「ご主人様ありがとう。でも、半ば拷問に近かったから気分は複雑にゃん」
リビングに戻ると、子どもたちは遊び疲れて仲良くお昼寝をしていた。
さっきまで、お絵かき帳の紙で散らかっていたはずなのに、紙は一つにまとめられていて、ぼくが汚したカーペットもすっかりキレイになっていた。
どうやら、ぼくがお風呂場で身体を洗ってもらっている間に
子どもたちがカーペットを拭いたり、
散らかった紙を一つにまとめて片づけてくれたっぽい。
いつもは年に二回、身体を洗われていて、今
年はもうないと思っていたのに、
お絵かきのせいで、ムダに身体を洗われてしまった。
キレイにしてくれるのは嬉しいけれど、
水はニガテだからやっぱりお風呂は嫌い。
「二度とお絵かきなんてしないにゃ~」
と心に誓った。
本当に子どもたちが遊びにくると、いつもロクなことがない。
「きっと、ぼくにとっての疫病神に違いないにゃ!」
ぼくは気持ちよさそうに寝ている子どもたちを見てそう思った。
《終わり》