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ネコのお正月2

 今回から「ネコに肉まん」シリーズとしての連載になりました。

◇これまでにお話◇

 肉まんのおうちには毎年お正月になると親戚がやってきます。

その中には、肉まんの天敵、親戚の子どもたちがいます。

この子どもたちには手をやいていて、肉まんにイタズラばかりしてきます。前回も、自慢の毛並みを逆立てられたり、ひげを引っ張られたりしました。

しかも、反撃をしようとすると、ご主人様に怒られています。

今年はどうなるのかな?



ネコのお正月2


「『ネコセレブ』おいしいにゃん♪」

ぼくはあたたかいお部屋で、高級キャットフードの『ネコセレブ』に囲まれていた。

「ここにあるネコセレブ全部食べていいのかにゃ? 幸せだにゃ~。こんなに食べられるなんて夢みたいにゃん♪」

 ぼくは、この上ない幸せに包まれていた。


 そんなときだった……!


「あけましておめでとう!」

ぼくの耳元で大きな声がしたのだ。

「にゃー!!」

 思わず叫び声を上げたぼくを子どもたちがはしゃぎながら見ている。

「また、こいつらにゃ……。いつもぼくにイタズラする子どもたちにゃん」

 ぼくはハッと我に返り、キョロキョロと周りを見渡した。

さっきまでたくさんあった『ネコセレブ』はすべてなくなっている!

「ひょっとして、さっきまでのできごとは夢?」

 ゴシゴシと目をこすって周りをみたものの、

『ネコセレブ』はどこにもなかった。どうやら夢っぽい。

「ぼくは夢でもいいからネコセレブが食べたかったにゃん。

新年早々、ぼくの邪魔をして~! 今日こそはおしおきするにゃ!!」

「にゃ~!!」

 子どもたちに飛び掛かかろうとしたぼくは、

突然、首根っこを捕まれた。

「痛いにゃ~ん!」

 後ろを振り向くと、ご主人様がぼくの首根っこを掴んでいる。

いつものごとく、こっぴどく怒られてしまった。

こいつらが悪いのに、どうして分かってくれないの。

「新年早々、切ないにゃん……。っていつもならここで鳴いて諦める所だけど、

今年のぼくは一味違うにゃ!こんなことでは、くじけないにゃん」

 ぼくは野望に燃えていた。

「今年こそは、昨年、食べられなかったおせちをいただくのにゃ~」

 ぼくの作戦はこうだった。

みんながいるリビングにおせちが運ばれる前にいただくというもの。


 キッチンに行くと、黒塗りの箱に入ったおせちがいくつもテーブルの上に並んでいた。

「おせちにゃん。おいしそうだにゃ~。それ、ジャンープ!!」

ぼくはテーブルの上をめがけて飛んだ。

「あ、あれ? おかしいにゃ!?」

あんなに勢いよくジャンプしたのに、テーブルの上に届いていない」


「それ、もう一度! ジャーンプ!!」

 やっぱり届かない……。

ぼくのお腹が去年より重くなり、

高く飛べなくなっていたのだった。

「そんな~。今年こそ食べられると思ったのに~。でも、ここであきらめたら去年のぼくと変わらない。策を練るにゃん」

 リビングに戻り、

ぼくの定位置であるストーブの前で策を練ることにした。

ストーブの前はほどよくあたたかい。

「スピピ~。スピピ~」

ぼくは居心地のよさに負けて、いつのまにか寝てしまっていた。


「肉まん。肉まん」

 ぼくを呼ぶ声が聞こえてくる……。

ぼくは目を開けると子どもたちがいた。

子どもたちはお刺身が乗ったお皿を手に持っている。

「何の用にゃ! これ見よがしにぼくの目の前でお刺身を食べる気かにゃ!!」

 ぼくは警戒をゆるめず、キッと子どもたちをにらんだ。


 すると、子どもたちの一人がお刺身をおはしでつまみ、

ぼくの口元に近づけてくる。

「も、もしかして、お刺身をくれるのかにゃ? まっさか~」

 と目を疑ったけど、

子どもはいかにもぼくに食べさせようと待っている。

「肉まん。アーンして」

 お刺身を食べさせようとしている子どもはそう言った。

 もしかして、ぼくはこの子たちのことを誤解していたかもしれない。

今まで、ぼくにイタズラをいたのではなく、本当はぼくと遊びたかっただけなのかも。

 それか、ぼくに振り向いてもらいたくて、

ひげを引っぱったり色々とちょっかいを出していたのかもしれない。

 いや。ぼくのことが好きだから、うまく好きだと伝えられなかったのかもしれない。

「それならもっと早く気づけばよかった。これからは、もっと仲良くしてあげるにゃん」

 それなら……。

 ぼくは子どもたちの好意を受け入れることにした。

「アーン」

 ぼくは大きく口を開けてお刺身を食べようとした。

すると、ぼくの口元の直前でお刺身は消えて、子どもの口に入っていた。

「お刺身おいしい~」

 子どもはニコニコしながら言った。

「にゃ! 食べさせるフリをしただけにゃ! 期待だけさせておいて~!」

 子どもたちは笑いながらぼくの前から立ち去った。

「くやしい~!! 今まで受けたことのない究極のイタズラにゃ!

絶対に許せない。そして、来年こそは絶対におせちを食べるにゃん!!」

 とぼくは心に誓った。


《終わり》

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