9 幸福ちゃんは幸福?
それからあたしは、考え続けた。
(どうしたら、幸福ちゃんを捕まえられるのかな……名前には、魔法が掛かっているから、その魔法を解くしか、無いのかな?)
けれど、魔法を解く方法など、知るわけもない。
あたしはゼリーを見つめていた。
(ゼリーに、魔法が掛かってるって書いてあるけど――「仲直りの魔法」だもの。)
でも、本当に魔法などあるのだろうか……つくりものではないのだろうか。
そんな疑問が、あたしの頭の中をよぎる。
幸福ちゃんは、柱時計の裏にひっそりと隠れている。まるで、「つかまるもんか!」と叫ぶように。
でも、幸福ちゃんは、あたしをいとおしそうに見つめる。
(もしかしたら……もう家に帰りたいのかも。)
そこで、あたしは幸福ちゃんに話しかけた。
「お家に戻る?」
「いや。」
(うそだー。)
「今なら、連れてってあげるよ。幸福ちゃんがあたしから逃げたいって思っているわけじゃないでしょ?」
幸福ちゃんは黙り込んだ。かなり、悩んでいるよう。
何秒かしたあと、幸福ちゃんは口を開いた。
「かえ……る。」
(え?かえる?それとも、帰る?)
あたしの心が通じたのか、幸福ちゃんは、「お家に、帰る。」と言った。
(良かった……これでやっと幸福ちゃんをつれて帰れるぞぉ……。)
部屋では、かえるたちが遊んでいる。
桜ちゃん、芽ちゃん、夜空ちゃん、春ちゃんは四人でおままごとをしている。
七色ちゃん、若葉ちゃん、花ちゃんはおしゃべりしている。
空くん、海くんはお昼寝。
ふたりは、すごいいびき。
「zzzZZZzzzZZZ……。」
そこに、幸福ちゃん、魔法ちゃん、紅葉ちゃん、葡萄ちゃんを連れてきた。
「これで、1、2、3……十三人か。残り十一人か……半分は超えたね。
(まだ捕まってないのは、おおくん、ちゅうくん、夏ちゃん、七音ちゃん、五月ちゃん、薔薇ちゃん……。星くん、輝石ちゃん、粉雪ちゃん、霞ちゃん。それから……あ、ちびくん。)
ちびくんは、きっと捕まえるのが大変だろう。あたしから逃げるように命令したのはちびくんだもの。
(そういえば、輝石ちゃんは、大丈夫かなぁ……。)
そう心の中でつぶやきながら、かえるたちを見つめていた。




