7 かえる劇場
(輝石ちゃんを助ける!絶対!)
そう思いながら美容院に行っていた。
すると、ふとあのことを思い出す。
みんなが逃げ出す前のこと――。
あたしは、かえるのぬいぐるみを使って、お話を作っていた。
かえるたちが演じる、舞台。
その意味で「かえる劇場」と呼んでいた。
今日はあたらしく、とても大きいおおくんが学校に転校してきた話にした。
かえるたちの声は、すべてあたしが言った。かえるたちを動かすのも。
そして、先生役の、七音ちゃんが言った。
「今日は、あたらしく転校してくる子がいます。」
「わー!」
「誰?だれ?」
「本当に?」
生徒役の子達がざわめく。
「静かにっ!」
七音ちゃんが注意。
「はい!こっちにおいで。」
そしておおくんが教室に入ってくる。
「わぁ。」
「おっきい。」
生徒役の子達の声を掻き消すように、おおくんが言った。
「おおくんでーす。よろしくね!」
自分に「くん」をつけていた。
それから、授業が進み、休み時間になった。
「ZZZ。ZZZ。」
おおくんがうたた寝をしていた時だった。
あのちびくんが自分の何千倍もあるおおくんに乗った。
「わーい!わーい!」
飛び跳ねて遊んでいる。まるでおおくんがトランポリンになったかのように。
しかし、おおくんは気付かず、給食の時間になった。
ここでは、さっき以上の事件が起こった。
おおくんが、デザートのフルーツゼリーを全て食べてしまったのだ。
一つ残らず。
すると、ゼリー大好き(という設定)ちびくんが、大激怒。
ちびくんは何度も泣き叫んだ。
「ぼくのゼリー、返してっ!」
「ぼくのジェリー、返してっ!」
「ぼきゅのジェリィーかえじでっ……。」
ちびくんは、だんだん悲しくなってきて、何を言っているのか分からなくなった。
おおくんは、そんなちびくんを殴った。
ちびくんは、保健室に連れてかれた。
その間も、おおくんは暴れて、ほかのクラスメートを殴ろうとしたが、先生達が止めにきた。
他のクラスメートは、おおくんから遠ざかった。
しかし、先生の何百倍もあるおおくんを倒せるはずがない。
そこで、おおくん並みにデカい校長先生と、副校長先生が、教育委員会へ連れて行った。
おおくんは、ちびくんを殴った罰として牢屋に入れられてしまった。
(残酷な話だけど、あくまでフィクションだし。)
そう思っていたけれど、よく作った話だな、と自分でも思う。
そして、あたしは美容院へと駆けて行った。
(あたしには、輝石ちゃんを救えるんだ!)




