10 ダイヤモンドの行方
あたしは、輝石ちゃんを返すため、再びペットショップへ行った。
また、店長と喋る。
もう作戦は立ててある。
「輝石ちゃんを返して!」
あたしが言う。きっと、店長はこういう。
「だから、お前のじゃないの。」
そしたら、こう言い返せばいい。
「じゃあ、どこに証拠があるのよ。あたしが嘘をついてると思って?」
きっと、店長も言い返す。
「ああ、ついてると思うさ。」
でも、まだ秘策がある。
「じゃあ、嘘をついているとしたら、何しに来たと思う?お金を今持っていないあたしがどうすると思う?」
店長だって、負ける気がしないだろう。
「ここにいるペットを見に来たんだろ?それか、万引きでもしようと思ってんのか。」
「違うわ。ペットを見に来たって何の意味も無いわ。それに、万引きですって?ペットショップには大勢の人がいるはずよ。万引きする人を見ていないわけ無いわ。」
こう言えば、きっと勝てるはず。絶対勝てるはず。そして輝石ちゃんを返してもらう。
自信がある。
あたしは、ペットショップへ足を踏み入れた。
ケージには、犬と猫がたくさん入っている。当たり前だ。
輝石ちゃんも入っている。
さっき、連れて行かれた部屋に行く。
店長は、いるだろうか。
店長は部屋の中にまだいた。そして、あたしの方へ顔を向ける。
「何だよ。さっきのやつかよ。」
「輝石ちゃんを返しなさい。」
「何言ってんだ、そのダイヤモンドとか言っている奴は、ペットショップのもの。お前のじゃない。」
「じゃあ、なんでペットショップの物って言えるの?どこに証拠があるのよ。」
店長は、黙った。そしてあたしが付け足す。
「あたしが嘘をついていると思っていて?」
「ああ。ついてるだろうな。」
作戦通りだ。
「じゃあ、ついてるとすれば、何しに来たでしょう。言っておくけど、お金は、持ってないから。」
「万引きだろ?」
「いいえ。よく考えて。このペットショップには、大勢の客がいる。万引犯を見逃すわけが無いわ。」
「ふーん、じゃあペットを見に来たのか?」
あたしは、ちょっと微笑む。
「ペットを見に来て、なんの役に立つのよ。」
「動物の育て方、動き方とかな。」
「あら、ちょっと間違ってないかしら?見に来るだけで、育て方が分かるなんてその人はなんて秀才なんでしょう。」
「でも、動き方は間違ってないだろ。」
予想外の質問。何て答えたらいいだろう。
(もしかして、あたしが「なんの役に立つのよ。」と言ったから?)
あたしの責任。自分でどうにかする。えっと……えっと……。
「動き方なんてみてもどういう風に字で表さなきゃいけないのよ。面倒だわ。」
「動画を見せればいい。」
「じゃあ、その動画って、ネットで見れば良いじゃない。それに、ペットショップで写真を撮ってもいいの?」
「……。」
ほーら、黙った。輝石ちゃんはあたしがもらうわ。
「いいんだ。」
え?
でも、言い返す。
「本当に?輝石ちゃんをもらわれたくないから、都合よく言っているんじゃないの?」
「……。」
また黙った。
「じゃあ、あたしにちょうだい。輝石ちゃんを。あたしの勝ちよ。」
あたしが勝手に決めてるけど……いいか。




