表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/15

1 かえるさん

「ぼくのゼリー、返して!」

 ちびくんの声が響く。

 実は、このこえはちびくんの声ではなく、あたし――姫蘭(きら)の声。

 かえる劇場という遊びをしている。

 どういう遊びかというと、かえるのぬいぐるみを動かして、お話をつくる遊び。

 楽しくないと思うかもしれないけど、意外と楽しいの。

 今は、ゼリー大好きちびくんが、ゼリーを取られて泣いている場面。

 ゼリーは無いけど、あるつもりでやっている。

「ぼくのゼリー返してっ……。」

「やだね~!ゼリーはもう食べちゃったもん。」

「ちび。ゼリーは今度買ってあげるよ。」

「やだやだやだっ!」

 一人三役を演じながら、ちびくん、その親役のちゅうくん、ゼリーを食べたおおくんを動かしている。

(楽しいわ~!)

「ゼリー!ありがと……。」

 お話が終わった。

(次、何にしよう。)

姫蘭(きら)ちゃーん?」

 聞いたこともない声が、あたしを呼んでいた。

 だっ……誰……?

 振り向いてみると、それはちびくんだった。

「やっほぉ!ぼくだよー。」

「ぎゃあああああっ!」

(しゃ、喋った!)

 あたしはとても大きな声で叫んだ。

 今までに出したこともない声で。

「驚かないで。」

(驚くに決まってるじゃない。)

 ちびくんは、当たり前のように喋る。

「あのさ、『かえる劇場』っての?あれいや。」

「え?」

「ぼくも、そのほかのみんなも、嫌がってるよ。」

 あたしは、声を失った。

(あたしは、あのかえる劇場が大好きだったのに……。なのに、嫌がられていたなんて……。)

 悲しい……。

「ふんっ。」

(な、何今の?)

 ちびくんは、指を立てて、「逃げるんだ!」とみんなに命令した。

 何をするの!

 あたしの心の言葉は、ちびくんには届かなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ