『黒歴史ノート』 其の一
「つまり、この『ノートの異世界』に行ったまま、兄が帰ってこないという訳だな?」
此処は『ココロード』にある『霧島華音』
香奈が、香織、知真、葉和を伴って訪れている。
香織の話はこうである。
1週間前の週末の夜、何時ものように寝た。
気が付いたら、『異世界』だった。
しかも其処は、10年前に熱中したゲームの世界だった。
魔王を倒し、光に包まれると・・・目が覚めた。
「夢オチ?」
と思ったが、その内容が『黒歴史ノート』・・・
・・・昔、自分達・・・兄妹が考えた設定だったので、『黒歴史ノート』を確認に実家に行った。
その時は何でもなかったのだが、夜、寝ると『異世界』に行くようになった。
しかし『異世界』で、兄と再会できない。
すると実家の両親より、『直哉=兄』が目を覚まさない。
と連絡があった。
きっと兄は、『異世界』から帰れなくなったんだと思う。
との事だ。
「かおりんは帰ってこれるんだねぇ♪」
「あ、うん、ログアウトってメニューがあるの」
「???」
「まるで、オンラインゲームですね。」
「うん、実際オンラインゲームなの。」
「????」
華音以外の全員は首をかしげている。
「なら、実際に行ってみるとしよう。」
華音は2冊のノートを見ながら言う。
「実際にって華音様?」
「原因は?そもそも、ノートの世界って・・・」
「原因は付喪神だ。」
「付喪神って、長い間大事にされた物につく神様ですよね?」
「神様なのに、悪さをするんですか?」
「よく知ってるじゃないか、香奈。」
「確かに神様だ。」
「荒ぶれば禍をもたらし、和ぎれば幸をもたらす。」
「それが、付喪神だ。」
「しかし・・・」
「今回の場合は、悪さをしている訳じゃない。」
「だろう?香織。」
「はい、これは私と兄が望んだ世界です。」
「私達は、このノートに理想の世界を描いたんです。」
「終わることの無い、もう一つの世界を・・・」
こうして、大事に・・・厳重に箱に保管されていた『黒歴史ノート』に、『付喪神』が宿った。
『付喪神』は二人の望みを叶える為に、夢の世界に二人の理想の世界を作り上げた。
「えっと、この場でノートの『付喪神』を祓ったら?」
「馬鹿かお前は」
はうっ
っと、頭ごなしに馬鹿といわれる花子。
「そんな事をしたら、直哉が帰れなくなるだろう。」
「だから実際に行くと言ったのだ。」
「花子・・・『姫薙』」
「はい、華音様!」
「『夢』の『精霊』のチカラを借りて、夢の中の『異世界』に直哉を迎えに行く!」