『花の城の音姫』 ~香奈の章~ 其の十
「香奈に頼みがある。」
私に頼み?
「私に出来る事なら、何でもするよ。」
「ありがとう。香奈。それで何だが・・・」
「・・・黒猫を探して欲しい。」
「え?黒猫??」
さっきの話から、どうやったら猫探しに繋がるんだろう?
私は疑問をそのまま口にする。
「華音さん。なんで猫探しなんですか?」
「あーその・・・なんだ・・・」
「うむ。やはりこの事も話すか・・・」
(華音様。往生際が悪いですよ?)
(香奈の事も話さないと、その猫探しは成立せんですよ?)
「本当じゃぞ、姫よ。」
「覚悟を決めい。」
クラーケンさんと桜井さんもまくしたてる。
「え?私の事??」
そう、華音さんの話が衝撃的過ぎて、私の事なんてすっかり忘れていた。
そもそも、私は何故、華音さんの事を忘れなかったのだろう??他の皆も華音さんと友達だったのに、すっかり忘れている。
「・・・私が華音さんを覚えている理由ですね?」
「そうだ。」
「もう・・・単刀直入に言う。」
「香奈は・・・」
「私の生まれ変わりだ。」
え?私が華音さんの生まれ変わり!?ってだって華音さん・・・目の前にいるんですけど??(獣だけど。)
余りにもストレートに言われ、混乱する。
「え、えーーと・・・どういう事なんですか?」
「正確には、体の生まれ変わりって事になる。」
「魂の方は・・・私がまだ存在しているから、輪廻の輪には入っていないが、体は喰われてしまったのでな。」
「つまり・・・体だけ輪廻転生??して、それが私という事ですか??」
「まあ、そういう事だ。」
「だから、私の事も忘れていない。私の瘴気に対しても耐性がある。」
「夜魅が見えたりするのも、私の体にその資質があったのだろう・・・私は強大な夜魅になったのだからな。」
むむむ〜〜分かったような、分かんないような・・・
でも、私が『この世のモノ』だったという事は確かみたい・・・
って。
そもそもまだ、猫探しに繋がらないよ?
「ああ〜分かっている。まだ猫探しの理由にならないな。」
「私は近々再封印される。その前に新たな憑代が必要だ。しかし、適合する人形はもう無い。」
「・・・本来ならば、香奈を憑代にするのが一番だ。なんたって私の転生体だからな。」
「勿論、それは却下。親友の体を乗っ取ってまで現世にいようとは思わん。そこでだ・・・」
華音さん自身、ちょっと焦ってるのかもしれない。大分早口で一気に話す。
私の体を憑代にするのが一番とか、さらっと凄い事言った所為だと思う。
「そこで、黒猫の『かのん』だ。あやつはそもそも生物じゃない。」
「私の瘴気で生み出した使い魔の様なモノだ。故に・・・私のチカラの一部・・・まあ、記憶と僅かばかりの能力・・・と言った所か・・・位なら移せる。」
「はれて私も現世に戻れると言う訳だ。」
つまり、華音さんが私達と暮らせるようになる為には、黒猫の『かのん』ちゃんを探さなければならないって事ね。
漸く私は理解する。
「それで、心当たりは?」
「アイツは時々ふらっと居なくなるからなぁ・・」
「でも、てうしから出る事は無い。店の辺りか・・・学校・・・漁港辺りも怪しい。」
「つまり、分からないって事じゃろ?姫。」
「扉も開いた事じゃ、儂も手伝おう。」
(勿論、うちも手伝うよ?香奈。)
「ありがとうございます。桜井さん。クラーケンさん。」
「それでは、行って来ます。華音さん。」
私達は、祠を後にする。
表で待っていてくれた、香織ちゃん、知真ちゃん、葉和ちゃんに事情を話手伝って貰える事になった。
こうして、私達の猫探しが始まった。
「・・・あれ?・・・私一人此処から出られないんだけど・・・?」
「お〜〜い・・・」




