『花の城の音姫』 ~香奈の章~ 其の四
PM9:00
私達は部室を出て、花子さんのトイレへと向かう。目的のトイレは教室一つ分先と直ぐ近くにある。
夜の静まり返った旧校舎は、それだけで恐怖を感じさせるのには十分。全員が無言で歩く。
「このトイレ・・・ですよね?」
「じゃ、じゃあ、手順通りに・・・もっかな〜宜しくね?」
前回と同じく私が花子さんを呼ぶ事となった。
香織ちゃんは兎も角、双子達に至っては、トイレから出ていたりする。
ま、いいんだけどさ。
コンコン・・・
「花子さんいますか?」
コンコン・・・
「花子さんいますか?」
コンコン・・・
「はな・・・」
がちゃっ
「おそーーーーいっ!!遅いですよ香奈ちゃん!!」
「ひゃぁぁぁぁぁぁ」
私は、食い気味に扉から出てきた女の子に驚いて飛び退く。
後ろを見ると、3人は固まっている。
って、あれ??
「花子・・・さん??」
其処にいるのは、小学生位の女の子。
「この子が・・・花子さん??」
復活した香織ちゃん。
香織ちゃんが言うのは、容姿の事だろう。
おかっぱ頭に赤い服といった”いかにも”な感じではなく、今風のお洒落な小学生って感じなのだ。
って、小学生位!?私の知っている花子さんはお洒落な大学生風・・・な筈なんだけど・・・
「香織ちゃんに双子ちゃんもいるね?」
「『黒歴史ノート』以来かなぁ??」
『黒歴史ノート』!!
花子さんからでた言葉で確信する。この事実を知っているって事は、私の記憶にある花子って事。
でも、本人に一応確認してみる。
「花子さんは、私の知っている花子さん何ですね?」
うーんと暫く考え込む花子さん。
「そうなると思うよ。でも、実際何処まで改変されているか分からないからねぇ。」
そしてまた、うーんと考え込む。
「あの〜私達、大分に置いてかれてるんですけど・・・」
「説明してくれないかしら?」
「おk。ちょーっと訳のわからない話になるよ?」
花子さんによると、この世は改変されたらしい。と言っても、生活すべて天と地がひっくり返るような改変ではない。
『霧島華音』はこの世に存在しない。
改変された事項は此れに関する事。華音さんに対する記憶や出来事全てが別の事に改変された。
だから記憶にない。関係した事は別の事柄に改変される。
説明を聞いてもなお、私達には理解できない。特に香織ちゃんと双子達は華音さんや桜井さん・・・まして、花子さんに対する正確な記憶すらない。
理解出来なくて当たり前。記憶が残る私でも、良くわかっていない。
そもそも、一体誰が改変をしたの?そして、何故私には記憶が残っているの??
「香奈ちゃんに何故記憶が残っているのか、それは私にもわからない。」
「逆に私に何故記憶が残っているかは説明できるよ。」
「教えて下さい。花子さん。」
「私が華音様の事を覚えている理由は・・・」
『この世のモノ』じゃないからだよ。
花子さんの言った言葉。『この世のモノ』じゃない。火事で死んじゃって、幽霊に・・・いや、神様になったから。
この世と言うカテゴリーから外れた存在なのだそうだ。
・・・
・・・
・・・
じゃあ、私は?
私は?何時??・・・何時???
『この世のモノ』じゃなくなったのだろう??




