『千重の桜』 終 ~『華音』が消えた日~
「『霧島華音』?何それ??」
「私も聞いた事ありませんよ?」
「それに、華音さんに花子さんだっけ??そんな人知らないよ?」
翌日、香織ちゃんと双子達に昨日の出来事を話した。
その反応は、華音さんも花子さんも知らない。
『霧島華音』という店も知らない。
「そうだ、転校生の桜井さんは?」
「転校生?」
「あはは、もっかなー3年の2学期・・・しかもこんな中途半端な時期に転校してくる人なんていないよー」
「まあ、確かに私達の学校『麗華高等学校』は、エレベーター式に大学に行けるので、そういう意味では、転校されてくる方が居てもおかしくは無いのかもしれませんが・・・」
「む、その手があるね。」
「・・・まあ、どちらにしても、転校してきた方は居ないですね。」
「どうしたの?香奈。ちょっと変よ?」
「・・・ごめん、ちょっと疲れてるのかもしれない。」
「私、今日は早退するね?」
「あ、・・・うん、分かったわ。茨城先生には言っておくわ。」
分からない。
みんなまるで・・・最初から華音さん達が存在しなかったような口ぶり。
私は知っている。覚えている。
華音さんを花子さんを桜井さんを『霧島華音』を・・・
しかし現実は、まるで華音さん達を否定しているかの様だ。
・・・こうして、私以外から、華音さん達の存在が消えた。




