表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『霧島華音』 ~『不思議』の『何でも屋』~  作者: hermina
第6章 『千重の桜』
41/60

『千重の桜』 其の四

『霧島華音』の扉の前に『本日休業』と札が下げてある。


「今日も、華音さん達居ないのかぁ・・・」


「用事があって出かける」と玄関先で会ってから一週間。

花子さんが「ちょっと今日は・・・」と言っていたので、その日だけかと思っていたんだけど・・・

その間に、『桜』が『咲いている』と言う目撃情報もだいぶ増えた。

・・・と言うより、毎晩咲いているんだよね。

それに不審者。

私が会ったのは桜井さんで、不審者ではなかったんだけど・・・

・・・こちらも目撃情報が上がっている。

なんだか、物騒になって来たなぁ・・・

とりあえず、目的の華音さん達が留守だったので、寮に帰る事にした。


「おかかーもっかなー」


「お帰りなさい、香奈さん。」


寮に帰ると、寮の玄関先に双子達が居た。


「あれ?・・・ただいま、二人ともって・・・」

「来てたんだ?」


「ええ、姉さんの何時もの思い付きだけの行動ですけど。」


「なにおー、その割には、ちゃんと付いて来てるじゃん!」

「ほら、前にもっかなにゲームあげるよーって言ってた事あったじゃん?」

「それを持って遊びに来たんだよ!」


「まあ、肝心の香奈さんは出かけていましたけどね。」


「でも、タイミングよく帰ってきたからいいじゃん?」


「と、行き当たりばったりな姉です。」


「そしたら、かおりんの所に行けば良し!!」


「私は、ついでか!!」


香織ちゃんが寮の玄関に降りてきた。

多分双子達が、インターホンで連絡だけして、部屋に行かず私と話していたからだと思う。


「まあ、いいけどさ。」

「香奈も帰ってきたんだし、私の部屋でゲームでもする?」


「らじゃ、それで行こう。」


「そういえば、香奈さん。もう、ご用事は済んだんですか?」


「ああ、うん。華音さんの所に行ったんだけど、留守だったの。」


「もう、一週間位見かけないんじゃない?華音さん。」

「全然、ログインもしていないみたいだし。」

「もう!深闇が居ないと、グランドクエストの進みが遅いのよ!!!」


「「「そっちの心配かいっ!!」」」


・・・そんなこんな?で、香織ちゃんの部屋でゲームで遊んだ。

そんな、ゲーム大会も5時頃にお開きとなる。


「じゃあ、帰りますね。」


「二人とも、また明日ね。」


「あ、私もコンビニ行こうかな?」

「途中まで、一緒に行こ?」


「あ、それなら香奈・・・24時間戦えるドリンク買ってきて。」


香織ちゃん・・・また徹夜する気だ・・・


「おっけ。」

「じゃあ、行ってきます。」


そしてコンビニの帰り、すっかり辺りは暗くなってしまった。

私は薄暗い学校へと続く坂道を、なるべく外灯の下を通って歩く。

そういえば、この辺りで桜井さんに会ったなぁ・・・などと思っていると、私の前に黒い影が現れる。


「・・・誰!?・・・ひょっとして、桜井さん?」


返事が無い。

まさか・・・不審者?私は坂道を下り、コンビニの方に戻ろうとする。

坂を下りきってしまえば、民家もあるし、コンビニもある。

しかし、後ろにも黒い影。

え?え?

前・・・坂の上からも黒い影が下りてくる。

ど、どうしよう・・・私・・・


「こんな所を一人で歩くなど、師の話を聞いていなかったのか?」


「・・・今度こそ、桜井さん?」


「なのじゃ。」


何時の間にか、桜井さんが私と黒い影の間に立っていた。


「まあ、姫にも頼まれておる事じゃし、守ってやる。」


姫??

誰??


「ゆけぃ『焔』!!」


桜井さんが黒い影を指さすと、指先から青白い炎が生まれ、黒い影に向かって発射される。

炎の魔法・・・みたいな感じ。

青白い炎は、あっと言う間に黒い影を包み、炎の柱を上げる。

黒い影は、かき消されたかの様に、消滅する。


「そぉれ、もう一匹じゃ!」


もう一匹?の黒い影も同様に消滅する。

まるで、華音さんの『魔術』みたい。


「片付いたようじゃな。」

「では、寮まで送ろう。」


「う、うん、ありがとう。」


寮までは、ここから数分。

あっという間に着いてしまう。

分からない事が沢山ある。

黒い影の事、そして・・・桜井さんの事。

私は思い切って、聞いてみる事にした。


「桜井さん。あの黒いのは何なんですか?」

「あきらかに・・・悪意・・・って言うか、良く分かんないですけど・・・そんな嫌な感じがしました。」


クラスメイトだというのに、敬語っぽくなってしまう。

桜井さんの持つ、独特の雰囲気からだろうか?


「む?姫から聞いていないのか?」

「あれは、『』だ。」


「闇?」


「夜を魅了するモノと書いて『』だ。」

常夜とこよにありて、現世うつしよを転覆させようとするモノ達だ。」


「とこよ・・・?・・・うつしよ??」


「常夜とはあの世・・・死後の世界。現世とはこの世・・・我々が住んでいる世界。」

「あ奴らは、死後の世界とこの世界を入れ替えようとしている。」


「え??」


良く分からない。と言うより、想像がつかない。

死後の世界とこの世を入れ替える??

入れ替わったら、私達の世界が死後の世界になるの??


「・・・まあ、あまり関わらない方が良いと言う事だ。」

「詳しい話なら、事が済んだら姫に聞けば良い。」


姫??

そういえば、さっきから姫って言葉が出てきてるけど??


「あの・・・姫って誰です?」

「私の知っている人なんですか?」


「む?」

「・・・ああ、姫とは呼ばんのだな。」

「お前達の呼び名だと、『霧島華音』だな。」


「え?華音さん?」

「何処かのお姫様なんですか??」


言われてみれば、毎日ドレスを着ている。

・・・ゴスロリっぽいヤツだけど。


「まあ、それも本人に聞いてくれ。」


そういえば、さっきから違和感・・・

・・・あ、そうか。


「桜井さん、ひょっとして、今の話し方が素ですか?」


「む?」


「・・・『のじゃ』って付いてませんよ?」


「あ。」


あ。って言った!今、あ。って言った!!

って事は、わざと付けて話してたんだアレ・・・


「か、勘違いするなよ!?我は別にわざと『のじゃ』と付けてた訳ではなく・・・」

「そう、たまたま、たまたま付けるタイミングがなかった・・・のじゃ。」


「・・・」

「ぷっ、桜井さん可愛いっ・・・あはははは。」


「何故だ、何故笑う?」

「今の会話の流れに、笑う所など一つも無かった筈・・・なのじゃ。」


「あ、うん、そうだね・・・あははは。」


そうこうしている間に寮へと着いてしまった。


「では、また明日・・・なのじゃ」


「あ、う、うん・・・おやすみなさい。」


結局、桜井さんの事は聞けずじまいだった。

まあ・・・華音さんの関係者・・・みたいだから、花子さんみたいな感じなのかも??

それに・・・事が済んだら??

分からない事を聞いたつもりだったが、聞いても訳が分からなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ