『船幽霊(もうれんやっさ)』 序 ~伝承の起~
世の中に不思議な事は結構ある。
例えば『幽霊』はいるし、『魔術』だってある。
そんな『不思議』を扱う『何でも屋』があるのは不思議じゃ無いのかも知れない。
その日は、月も出ていて風もなかった。
「今日は、夜釣りには良い日だな。」
1人の男が言って、仲間と共に船で釣りに出た。
ところが如何した訳か、急に霧が立ち込め辺りを包んでしまった。
「真っ暗になっちまった」
「灯を付けてくれ」
「いや、駄目だ、つかねぇ・・・」
「何とかして、引き返すしかない。」
と、やり取りをしていると・・・
沖の方がぼーっと光って、呻くような声が聞こえてきた。
もうれんやっさ、もうれんやっさ・・・
声と共に、光はどんどんと近づいてくる。
もうれんやっさ、もうれんやっさ・・・
それは、一そうの船だった。
そして、その船が近くまで来たとき・・・
海中より、『白い大きな手』が現れた。
そして・・・
「いなが・・・貸せぇぇぇぇぇぇ」
と薄気味悪い声をあげた。
「お、おい、何なんだ・・・!?」
「い、いながって何だよ!?」
「ま、待て、確かひしゃくの事だ・・・」
「じゃあ、ひしゃくを貸せばいいのか?」
「駄目だ、そのまま貸したら船を沈められてしまう。」
「底を抜いたひしゃくを貸すんだ!」
「い・な・が・・・・貸せぇぇぇぇぇぇ」
「う、うぁぁぁぁぁぁ」
男は『底を抜いたひしゃく』を海へと投げ入れた。
すると、『白い大きな手』はひしゃくで海水をすくうことが出来ずに、消えた。
しかし・・・
もうれんやっさ、もうれんやっさ・・・
声と共に今度は複数の光が近づいてくる。
そして、目の前には沢山の『白い大きな手』が・・・
「い・な・が・・・・貸せぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ」
「こんなに、ひしゃくなんてねーよ!!」
「くそう、何なんだよ!!」
1人の男は海に飛び込んだ。
『白い大きな手』達は、船に積んであった”桶”を持つと、船に海水を入れはじめた。
「なんだってんだよ!!」
「船が沈むぞ!!」
そして、他の男たちも海へと飛び込んだ。
救命胴衣や、浮き輪があった為、
何とか自力で岸までたどり着いた男達ではあったが、船は沈められてしまった。
その頃には、すっかり霧も晴れて穏やかな海に戻っていたと言う・・・
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今回のお話は、「もうれんやっさ」という、
銚子市に伝わる伝承、怪談にherminaの解釈を加えアレンジしたものです。
ちなみに、いながって言われても、分かりませんよね()笑
ひしゃくを渡さなかったらどうなるのか?とも考えて、こんな感じに・・・
さて、次回から本編です。
早めに更新できたら言いなぁとは思います。