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『霧島華音』 ~『不思議』の『何でも屋』~  作者: hermina
第5章 『学校の七不思議』
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『学校の七不思議』 其の四

--------旧校舎トイレ--------



・トイレの花子さん。


旧校舎は、昔に火事で全焼したらしい。

その頃は、木造の校舎だったらしいけど、旧校舎と言っても立て直したので鉄筋コンクリート・・・だと思う。

それでも、年月が経ち、今は部室棟に割り当てられなかった部活の部室がある位で、殆ど使われていない。

トイレの花子さんが出るというトイレは、旧校舎1階の端にあった。


「花子さんを呼び出すには、やり方があるんだよ。」

「まずは・・・」


トイレの扉をノックして、「花子さんいますか?」と尋ねる行為を入口の個室から、奥の個室までやる。

というものらしい。


「じゃあ、早速・・・もっかな〜お願いっ!」


「へ?私!?」


双子の赤い方の無茶ぶりである。

・・・まあ、別にいいけどさ。

私は早速、手前の扉からノックをする。


コンコン


「花子さんいますか?」


コンコン


「花子さんいますか?」


そして、最後の扉である。


コンコン


「花子さんいますか?」


『七不思議』の通りならば、ここで花子さんからの返事がある筈だ。

しかし、辺りを包むのは静寂。

シーンと静まり返った旧校舎のトイレ。


「な、なーんだ、何も起こらないみたいだね〜」


と、双子の赤い方が言った直後・・・


「・・・はーい」


か細い声が、トイレの奥から聞こえてきた。


「ひょわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」「き、きやぁぁぁぁぁぁぁぁ」「・・・」「あ、わわわ・・・」


私達は思わず悲鳴を上げる。

そして、トイレの扉がゆっくりと開いた。


キィィィィ・・・


まるで木造校舎の・・・木の扉の様な音をたて開いた扉。

中から・・・・


「呼びましたか?香奈ちゃん。」


出てきたのは、花子さんだった。


「え?花子さん??」


「も、もう〜花子さんたら、後で合流するとか言ってこんな所で待ってるなんて〜」


「そうです、心臓が止まるかと思いました。」


「ほんと、トイレの花子さんが出たと思ったら花子さんが出るなんて・・・あれ?」


「そうそう、花子さんじゃなくて花子さんが・・・ほぇ?」


「ほんと、花子さんじゃなくて・・・んん??」


「・・・」


あれ?合ってる??

花子さんを呼んだら、花子さんが来たって合ってる??


「さて、花子とも話したんだが、やはり言っておこうという事になってな。」

「花子。」


「はい、華音様」

「えっと、トイレの花子さんって私の事なんですよ。」


「え?だって、トイレの花子さんっておかっぱの赤い服着た女の子じゃ??」


私もそういう風に記憶している。

花子さんは、ちょっとオシャレな服を着た大学生風なんですけど・・・


「ちょっと、昔話をしますね。」

「あれは・・・」



あれはまだ、この学校の校舎が木造だった頃の話です。

小学生だった私は、いじめられっ子でした。

その日も、いじめっ子にいじめられて、トイレに閉じ込められてしまいました。

わんわん泣いていた私ですが、やがて泣き疲れて眠ってしまいました。

しかし私は、大量の煙で目を覚ましました。

直ぐに火事なのだと分かりました。


どんどんどんっ


助けて・・・

ここから出して・・・


私は扉を叩きました。

如何にかして扉を開けようとしても、ビクともしませんでした。

叩いても叩いても助けは来ない。

その内に、息も出来なくなり・・

私は多分、そのまま死んでしまったのだと思います。

多分・・・と言ったのは、私自体は存在していたからです。

ただ・・・トイレの中から出られず、扉を叩いても助けは来ない。

それを繰り返すだけの存在として・・・

その内に、ノックする音と、声が聞こえてくるようになりました。


コンコン


「花子さん、いますか?」


って

私は漸く助けが来たんだって喜び返事をしようと思いました。

だけど、声は出なくて・・・やっと出たと思った声も


「・・・はーい」


としわくちゃな・・・擦れた声でした。


「ほら、誰も居ないじゃない。」


しかし、その声は届くことはなかったんです。

そして・・・其れから、どのくらいの時間たったのだろう?

もう時間の感覚も・・・体の感覚も・・・自分自身さえも・・・

・・・もう、どうなったか分からない。

そんな時でした。


「・・・見つけた。」

「もう大丈夫だ。」

「さあ、私の手を掴むんだ。」


差し出された白い手。

幼い少女の顔・・・

・・・その少女が、華音様です。


華音様は、この閉鎖されたトイレの中から、私を救い出してくれたんです。

私は、何時までも忘れません。

差し出された白い手、華音様の顔、そして・・・この気持ち。



花子さんの話は、悲しくて・・・悲しくて・・・

でも、華音さんの温かい気持ちもあって・・・


「あ、って事は、花子さんは幽霊・・・なの?」


空気を読まずにぶち壊すのが双子の赤い方。


「んーみたいなものですけど、正確にはちょっと違うみたいなんですよ〜」


と、花子さんも何時もの調子に戻っている。


「花子はどちらかというと、神様になるな。」


え?

神様って・・・


厠神かわやがみというトイレの神様・・・みたいなものだな。」


「そうなんですよ。ほら歌にあるじゃないですか〜」

「トイレには女神がいるんだよん〜みたいなの」

「あれ・・・私です♪」


どやぁぁぁぁぁ〜〜

そしてこのドヤ顔である。


びしっ


「調子に乗るな!」


「あうっ」


華音さんのツッコミが綺麗に決まった。


「はぁ〜話が突拍子もなくて、良く分かんないわ。」

「まあ、華音さんのお蔭で、『不思議』には耐性が付いたけどね。」


「えっと・・・その・・・」


何か言い淀む花子さん。


「・・・こんな、私ですけど、友達で・・・いてくれますか?」


「うんっ」「はい。」「ええ。」


私は力強く・・・


「勿論ですっ」


と答えた。


「さて、他・・・どうしようか?」


「なんかもう、そんな感じじゃなくなっちゃったね。」


確かに、そんな雰囲気でも無くなったし、結構時間も遅くなってしまった。


「よし、じゃあ〜お開き〜〜〜」

「残った3つが本当だったって事にしよう!」


「え?トイレの花子さんは、本当ですよ??」

「・・・私だし」


「花子さん。」

「『七不思議』の花子さんはこわ〜〜い存在だけど、私達の友達の花子さんはそんな事は無いからね。」


「香奈ちゃん・・・」


こうして私達の肝試し大会は終わりを告げる。

結局、全部を見て回ったわけではないけれど、何か・・・友情が深まった?気はする。

花子さんは、人じゃなくて神様だったんだけど、そんな事はあんまり関係が無い。

私達はそれぞれの帰路へとついた。


・・・あれ?

花子さんを助けた??

華音さんは一体・・・何者なんだろう??

・・・

・・・でも、華音さんが何者でも、やっぱり関係ないと思う。

うん、そうだね。

そう思う。

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