『願いが叶う壺』 終 ~私のハジマリ~
後日。
私、桃井香奈は『霧島華音』を訪れた。
実質『無料』で『壺』を処分して貰ったのである、お礼に伺うのが筋。
手土産も持参した。
曰く、
「華音様は、『さのや』の今川焼が好き」
らしい。
ちなみに『さのや』とは、有名な今川焼のお店である。
『ココロード』の終点にある『観音様』の裏手に店があり、
餡子がたっぷりと入っているのがウリなのである。
「華音さん、先日はありがとうございました。」
「これ、好物だと聞きました。」
「おお、『さのや』じゃないか!」
「花子、お茶を頼む。」
早速に『さのや』を食べる華音。
喜んでもらえた良かった。
「こちらも商売でやっているんだ。気を使う事もない。」
「商売も何も・・・実質、無料でやって頂いたのに・・・」
「・・・そうでもない。」
指差す先・・・其処には・・・
古ぼけた、黄土色の『壺』に規則性のある『謎の紋様』。
たしか、割れたハズ・・・
値段・・・1000万円(税別)
「その『壺』は、まさか・・・」
「『願いが叶う壺』だ。」
「値段は1000万円に消費税。」
私は血の気が引くのが分かった。
もしかしたら、全ての元凶はこの『一見、小学生にしか見えない女の子』の仕業だったのかも知れない。
「華音さん・・・あなたは・・・」
その時、お茶を入れに行っていた花子が戻ってきた。
「華音様。」
「冗談が過ぎますよ。」
「・・・いっつ、かのんじょーく。」
何時もと変わらぬトーンで、華音は言った。
「へ?」
思わず、変な声が出てしまった。
「大丈夫、あれは抜け殻。」
「『此の手』の『壺』は、悪魔とか妖怪とかを封印するのに使える。」
「つまり商品にするので、代金は問題ないですよって事です。」
「・・・売れる気はしませんけどね。」
「それより、その後はどうだ?」
その後は・・・とはつまり、友達は出来たか?と言った事だろう。
「ええ、香織ちゃんに、知真ちゃん葉和ちゃんって双子の子に・・・」
「こんな事ならば、もっと早く話しかけていれば良かったです。」
「そうか、良かったな。」
「それとだな・・・たまに・・・たまにだぞ? 此処に遊びに来ても・・・」
「え?」
くすくす笑う花子
「私達も香奈さんの友達ですよ。って言いたいんですよね?」
「華音さまっ」
「な、花子、ち、違う、『さのや』持って来て欲しいだけで、その・・・」
つられて私も笑った。
照れた華音さんは、歳相応の女の子に見えた。