『自分攻略サイト』 其の三
「・・・はっ!!」
男・・・佐藤一郎は、ベットから飛び起きた。
「俺は、確か・・・ワゴン車に轢かれて・・・」
そう、死んだ筈である。
いや、死んで無いにしても、ただでは済まない。
あの子を見つけた俺は、道路に飛び出した。
そこに走ってきたワゴン車に轢かれたのである。
「夢・・・じゃない!!」
9月14日から21日までの記憶、そしてあの子の言葉・・・
「『霧島華音』・・・」
TVを付けてみる。
朝のニュースの時間だ。
「9月14日 日曜日、朝のニュースです。」
「連休2日目いかがお過ごしでしょうか?・・・・」
TVはまた、同じ事を言っている。
佐藤一郎は、WEBで自分の名前を検索する。
『佐藤一郎 攻略サイト』
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プロフィール・・・攻略チャート。
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「ループ1、14日・・・スクラッチを買う1万円あたる→バスでお年寄りに席を譲る・・・」
「・・・21日、18時45分、居眠り運転のトラックに撥ねられて死亡。」
「ループ2、・・・」
「・・・21日、18時45分、通り魔に刺されて死亡。」
「ループ3、・・・」
「・・・21日、クレーンの下敷きになる→小学生位の少女に話しかけられる→18時45分、クレーンの下敷きになったまま死亡。」
「ループ4、・・・」
「・・・21日、あの子を見つける→18時45分、ワゴン車に轢かれて死亡。」
「やはり時間は、18時45分か・・・」
俺は何故、同じ時を繰り返し、そして死ぬのか。
それをあの子は知っているのだろうか?
兎も角『霧島華音』だ。
俺は手早く身支度をし『ココロード』へと向う。
「ああ、それならば・・・・・を行った先だよ。」
「くれぐれも、華音様に粗相の無い様にな。」
どうやら『霧島華音』と言うのは、人名であり店名でもあるらしい。
それにしても、様とは?
などと疑問も尽きなかったが、考えている間にあっさりとたどり着いた。
『霧島華音』
と書かれた看板に
『不思議な事、何でも解決いたします。』
と書かれていたその場所は、スーパーマーケットの跡を改装した様だ。
入口のホールを抜け、奥にある事務所らしき所。
俺は扉をノックする。
コンコン・・・
「はーい」
若い女性の声がする。
がちゃりと、音がしドアノブが回る。
きぃぃぃぃぃぃぃ
っと少し軋む扉の奥には、大学生くらいの女性が立っていた。
「何か御用ですか?」
「すみません、『霧島華音』・・・様?でしょうか?」
「俺・・・いえ、私は、佐藤一郎と・・・」
先程、粗相の無い様にと言われた所為か、しどろもどろになってしまった。
「あ、すみません、私は華音様じゃないんですよ。」
「ノック2回だったので、私に用事かなーって思っちゃいました。」
ノック2回?何の事だろうと思った矢先、奥の机の影から声が聞こえた。
「お客の様だな。」
「花子。」
「はい、華音様」
「どうぞ、中にお入りください。」
俺は中に入り、薦められたソファーに座る。
奥の机を見ると、ちょこんと小さな女の子が椅子に座っていた。
・・・あの子だ。
あの子が、『霧島華音』だったのか。
「さて、むー佐藤一郎・・・だったか?」
「『霧島華音』に来た訳を聞こう。」
玄関先で、しどろもどろに言った名前をあの子・・・霧島華音は聞いていたようだ。
「貴女に、『霧島華音に来い』と言われました。」
霧島華音は、ふむ、と考える。
「私は、お前に会った事は無いと思うのだが?」
「ええ、この時点ではそうですね。」
「ですが、21日の夕方に、私は貴女にそう言われたんです。」
俺は、知らず知らずに敬語で話していた。
霧島華音の少女とは思えぬ雰囲気や、言動がそうさせるのだろうか?
「面白い事を言う、まるで未来から過去に戻った様だな。」
「・・・正に、その通りです。」
「俺は、今日・・・14日から、21日を繰り返しています。」
「決まって、21日の夕方・・・18時45分に何らかの形で死んで、14日の朝に目覚める。」
「そんな事を、4度繰り返しています。」
「それは、興味深くもあるな。」
「仮に、時間が戻って・・・過去に戻っているとしよう。」
「それを私や花子・・・他の人間も認識出来ていない・・・だろう。」
「お前だけが認識している。」
「それは、お前の死が起点となり起こる。」
「少し、時間の概念について話そう。」
時間というのは、物事の変化を認識する為の基礎的な概念である。
時間というのは、過去から、未来に向かって流れている。
現在というのは、一瞬で過去になる。
未来というものが向かって来ては、過去に消えてゆく。
それは、川の流れの様でもある。
上流から下流。
上から下。
時間というのは、常に未来に向かって流れているのである。
「えっと・・・さっぱり分かんないんですけど??」
女子大生くらいの女性・・・花子さんは、難しい顔をしている。
「簡単に言えば、時間は戻らない。」
「それらすべては、認識の違いだけで、一郎の未来という事だ。」
「私も良く分かりませんでしたが、21日の次の日が14日でも未来って事でしょうか?」
「哲学的にはな。」
「しかしお前は、過去において私と会っている。」
「それをその過去から見た未来・・・つまり、今現在において私は知らない。」
「此れが意味する所は・・・」
『お前は、時間の概念から外れている。』
「・・・という事になる。」
時間の概念から外れている?
どういう事なんだ??
「それは、どういった意味になるんでしょうか?」
霧島華音は、少し間をおいて話始めた。
「・・・率直に言おう。」
「お前は既に死んでいる。」




