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『霧島華音』 ~『不思議』の『何でも屋』~  作者: hermina
第1章 『願いが叶う壺』
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『願いが叶う壺』

ドドドーン


バスケットボール程の大きさの火球が炸裂し、轟音が鳴り響く。


「ちょちょちょ、華音様〜何とかして下さいよぉ〜」


「・・・情けない声を出すな、花子。」

「暫く時間を稼げと言っただろう?」


「も〜無理っ絶対無理ですぅぅぅうぅ〜」


此処は『霧島華音』の店内。

一見、『小学生くらいのゴスロリ風な女の子』と、その女の子に顎で使われる『大学生くらいと思われる女性』が、何かと戦っている。

敵の容姿は・・・例えるならば・・・


某有名ダンジョンRPGに出てくる『グレーターデーモン』


である。


「あれ、絶対グレーターデーモンですって!!」


「良かったじゃないか、仲間を呼ばせれば、いい経験値稼ぎになる。」


「むちゃくちゃ言わないでくださ・・・」


ドーン

またも火球が炸裂。


「あぶなーーー」

「って言うか、結界狭すぎじゃありません?」


「・・・エコロジー」


「この際、エコは気にしないでください!!」


この『霧島華音』は、廃業したスーパーマーケットの建物の一部を改築したので、中は割りと広い。

現在戦っている場所は、元のフロアにあたる場所である。


「あーもう無理〜」

「無理ですぅぅうぅぅ〜〜」


無理無理と言う割には、花子と呼ばれた女性に、火球はかすりもしない。


「そもそも私、攻撃系持ってないんですからぁぁぁぁぁ」


ドドドーン


さて、どうしてこうなった。

それを紐解くには、1時間程時間を遡る事となる。


『ココロード』

この閑静な商店街にある『霧島華音きりしまかのん

『不思議』を扱う『何でも屋』である。

元々スーパーマーケットだった所を一部改築し使っているので、

中は広いが使っているのは、事務所があった部分だけである。

勿論、『霧島華音』も商店街と同様に閑古鳥が鳴いている。


きぃぃぃぃぃ


少し軋む扉を開け、ひとりの少女が入ってきた。

実に、一週間ぶりの来客である。


「・・・店主の霧島華音さんでしょうか?」


入ってきた少女は、机の脇に立っていた花子に話しかける。


「い、いえー、華音様はこの方です・・・」


花子が示す方には・・・大きな机から、顔だけがちょこんと出した女の子。


「へ?」


驚くのも無理は無い。

店主の華音は、見た目小学生くらいなのである。


「はぁ・・・もう、そういうリアクションは見飽きている。」

「で、ご用件は?」


「すみません・・・この『壺』を『処分』してください。」


少女・・・客の名は、『桃井香奈ももいかな』、女子高校生で17歳。


「あ、それでしたら、ゴミの処分場に行かれた方が・・・」


「馬鹿かお前は・・・」

「”『処分』しようとしたが、出来なかった”から此処に来た。」


「はい・・・捨てても何時の間にか部屋にあるんです・・・」


「詳しく話を聞こう。」


言うと、華音は席を薦める。

香奈は、薦められたソファーに座ると、ぽつり・・・ぽつりと話し始めた。


「はい、実はこの『壺』は『願いを叶える壺』なんです。」


「願いを叶える!?」

「って、なんでそんなものを捨てるんです??」


「黙れ馬鹿。」

「続きを頼む。」


「実はこの『壺』の持ち主は叔父なんです。」

「叔父はこの『壺』を手に入れて以来、幸運に恵まれたらしいです。」

「宝くじが当たったり、仕事も大成功したそうです。」

「しかし、先週亡くなりました。」

「事故・・・だったそうですが、葬儀の後『遺言』らしきものを見つけたんです。」

「内容はこうです。」


私はもうすぐ死ぬかもしれない。

私が死んだ後、『壺』を『処分』して欲しい。

あれは、『願いを叶える壺』なんかじゃない。

最初は幸運に恵まれるかもしれない。

しかしそれは『罠』だ。

その後、どんな恐ろしいことが起こるかわからない。

どうか『壺』を『処分』して欲しい。

決して、『壺』に願いを言わないように・・・


「その『遺言』を知っているものは?」


「・・・私だけです。」

「『壺』は絵画のモデルにすると言って、私が貰いました。」

「その後、『処分』しようとすると、戻ってきてしまうんです。」


「『壺』の『契約者』が君に移ったようだな。」

「願いは?」


「それが・・・」

「勝手に・・・勝手に願いを叶えるんです!!」

「ちょっと、いいなぁとか口に出しちゃった事とか全部です!」


「・・・ふむ、分かった。」

「失礼、少々『壺』を見せてもらおう。」


古ぼけた、黄土色の『壺』

多少のひびはあるが、しっかりしている。

そして・・・規則性のある『謎の紋様』


「結論を言おう。」

「その『壺』は『悪魔』だ。」


「願いが叶った分の魂が奪われる。」

「願いが大きい程、奪われる魂も多い。」

「つまり・・・最悪は死ぬと言う事だ。」


「わ、私・・・死ぬんですか?」


そう言うと、香奈は真っ青になって震えている。


「大丈夫、方法はある。」

「その『壺』を誰かにあげる事だ。」

「そうすれば、叶った願いの分だけしか魂は奪われない。」

「ささいな願いであれば、問題は無いだろう。」


「で、でも、その『壺』を貰った人は・・・?」


「『壺』の秘密を知らなければ死ぬ。」

「しかし、教えたならば貰ってはくれないだろう。」


「そ、そんな・・・」

「だったら、私はどうしたら・・・」


店内が静まりかえる


「か、華音様・・助けてあげましょうよ?」


「香奈・・・だったな。」

「『遺言』の事を他の親族に内緒にし、理由をつけて『壺』を持ち帰った。」

「それは、願いがあったからだ。」

「少しくらいなら・・・と思い、願いを言った。」

「だが、危機感を感じ『処分』しようとした・・・違うか?」


「・・・はい、その通りです。」

「私には悩みがありました。」

「・・・友達が居なかったんです。」

「それで、『壺』にお願いをして・・・」


「それは、本当の友達じゃないと思います。」


「その通りだ。」

「香奈自身も、それは分かっただろう。」


「はい・・・」


「ふむ。」


華音は、ぽんと手を叩き・・・


「『霧島華音うち』で買い取ろう。」

「そうだな、お代はこの『壺』の鑑定料と同額いただこう。」


「鑑定額と買い取り額が一緒ってどこのボッタクル商店ですか!!」


「それでは、華音さんが・・・」


「『壺』の『処分』の方法は心得ている。」

「だが、買い取ると君の魂を奪いに来るだろう。」


香奈は少し考えて・・・


「・・・わかりました。」

「よろしくお願いします。」


と答えた。


「って、私のツッコミはスルーですか!!」


「花子。」


「は、はいっ華音様!」


「お茶入れてきて。」


全く話に入れない花子だった。


・・・

・・・

・・・


「これで、この『壺』の所有権は移った。」


「では、香奈さんが・・・」


「まだ大丈夫。」

「『霧島華音ここ』にいる限りは。」


「花子」

「結界を張る、フロアに出ろ。」


「はいっ華音様」


「香奈は、結界の外で待て」


「はい?」


キョトンとする香奈を後目に華音達はフロア・・・

・・・元スーパーマーケットの売り場だった部屋に向う。


「結界」


それは『魔術』・・・と呼ばれるモノ

皆、多かれ少なかれ持つ『魔力』と言うモノを媒体にを起こす『不思議』なチカラ。


「では、願いを叶えて貰う。」


「へ?華音様??何を言って・・・」


「『壺』よ」

「この世から不幸を無くせ。」


ぴき・・ぴきぴきぴき・・・


「この手のモノは、願いが叶えられないと、本性を現す。」


『壺の悪魔』

願いを叶える替わりに、契約した者の魂を奪う『悪魔』。


「『此の手』の『壺』は良くある。」


曰く、


3つの願いを叶える『壺』。

願いを叶えた後、買った値段より安い値段で売らないといけない『壺』。

等々・・・

共通するのは、『最終的に命を奪われる。』のである。


「本性を現し、具現化した所を『処分』する。」


「それってつまり・・・」

「バトルって事ですかぁぁぁぁぁぁぁ〜〜」


ぴきぴきぴきぴき・・・ぱりん。


壺が割れて、中から『悪魔』が現れる。


「話が違いますよぉぉぉおぉ」


・・・

・・・

・・・


そして、現在に至る。


「華音様ぁ〜まだですかぁ〜」


ちなみに、バトルが始まってまだ2分と経っていない。

とはいえ、2分もの詠唱(途中で会話がなければ早かったかもしれない)

を用いる『魔術』はそうは無い。


「花子」


「はいっ華音様っ」


花子は『壺の悪魔』から距離をとる。


熱閃爆炎メガブレイズ


華音より放たれたのは、数ミリの熱線。

それが『壺の悪魔』に触れると、轟炎になる。

全てを焼き尽くすかの炎が、結界内に巻き起こる。


「え・・華音さん! 大丈夫ですか!!」


香奈は驚き身を乗り出す。


「あ〜大丈夫ですよぉ」

「結界がありますから〜」


いつの間にか、香奈のそばに花子がいた。


「え? 花子・・・さん?」

「いったい何処から・・・」


「何処って、そこのトイレから出てきたんですけど?」

「まあ、これで解決ですねぇ〜華音様〜」


「うむ。」


「え、えええ?」


炎が収まると、其処に『壺の悪魔』の姿はなかった。

そして、割れた『壺』がひとつ・・・

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