『黒歴史ノート』 其の八
「よっ久しぶりだな、火燐・・・それと、『深闇』!?」
「凍夜兄ぃ・・・心配したんだから!」
「ん?、何の事だ?」
「直哉、香織、感動の再開は後だ。」
「助けてーーー」
話の間、香奈はビームを捌いていた。
直哉は、すぐさま香奈の援護に向かう。
盾を持っていない直哉だが、剣スキル『パリィ』で器用にビームを逸らす。
「えっと・・・『聖乙女』」
「メインのガードは任せる。」
「俺は、サポートしつつスキルによる打撃を加える。」
「・・・はいっ」
「あ、でも・・・『聖乙女』はやめてください・・・『香奈』でお願いします。」
「分かった、香奈。」
盾スキルで攻撃を捌く香奈、その隙間に大剣スキルを入れる直哉。
大剣スキルを入れることによって、『ガーディアンベータ』の攻撃間隔を広げ、
香奈のクールタイムも稼げる。
「ふむ、前衛二人がらぶっている様に見えるな。」
「むむむむ〜〜〜〜」
「お兄ちゃんっ!! デレデレしないで!!」
「してねーーよ!」
「ブラコンなのかな?」「ブラコンだな。」
其れは兎も角。
4人になり、連携もしっかりした事により、
徐々に・・・徐々に『ガーディアンベータ』を追い込んでいく。
「そろそろ、来るわね・・・」
HPが30%を切ると使う『全体攻撃』
実際に此処までは、削れるのである。
ただし、この攻撃に耐えれた事がない。
故に攻略が出来なかったのだ。
「『ガーディアンベータ』のHP・・・残り31%・・・」
「タイミングを合わせて、最強の攻撃を全員で叩き込み・・・一気に殲滅する!」
「火燐ッ」
「わかってる!!」
「「封印されし、二つの武器の真の姿を此処に!!」」
二つの武器・・・直哉の『覇皇龍斬剣”戒”』、香織の『華恋鳳凰”結”』
此の武器は二人のオリジナル・・・『黒歴史ノート』に書かれた二人専用の最強武器。
二つの武器は一度一つとなり、封印の解けた二つの武器を生み出す。
「『覇皇龍斬剣”皇”』ッ!!」
「『華恋鳳凰”結婚”』ッ!!」
即座に魔法の詠唱に入る、華音、香織。
直哉、香奈は防御に専念し、機会を窺う。
「ん、おっけ。」
「こちらもだ。」
「次のビームを逸らした後に叩き込むぞ!」
「香奈!」
「了解ですっ! 直哉さん。」
「『ハードシールド』!!」
香奈は攻撃に入りやすいように、前方を覆う『ゾーンシールド』ではなく、
効果範囲が狭く、視界の良い『ハードシールド』を選択する。
「香奈・・・凄い・・・」
効果範囲が『ポイントガード』より少し広いだけの『ハードシールド』で、
『ガーディアンベータ』の大型ビームを逸らす。
LV5から、盾を集中的に使っていた香奈のスキル熟練度は、最高レベルにまで上がっていたのである。
シャーーーーッ
・・・
・・・
「今です!!」
「おうッ!!」「おっけ!!」「うむ。」
「『チャージ』・・・『シールドソーサー』!!」
「・・・深き闇に飲まれるがいい・・・『エクリプス』」
「我が漆黒の一撃を受けよ!! 『オーバーエンド』!!」
「火燐ッ!!」
「とどめよ!! 全てを焼き尽くし・・・灰塵となれ!!『クリムゾン・ノヴァ』!!」
光の弧を描く『アイギス』、収束する深い闇、まるで『ビームソード』の様に巨大な剣撃、巻き起こる炎の渦。
それらは、相乗効果を生み、一つの光となって弾けた。
プシュウウウ・・・
がっくりと膝をつく『ガーディアンベータ』
「勝った・・・?」
しかし・・・
(システム再起動・・・)
(コード『サテライト』起動・・・)
「まだだ!!」
「何で!?」
「HP0になったハズよ!」
「『ガーディアンベータ』のスキルか・・・」
「おそらく、HPが0になっても、1%残して再起動するという事なのだろう。」
「何よそれ!?」
「私達の夢なのに、そんなの知らないわよ!?」
「大丈夫だ、火燐。」
「これが、ゲームであり・・・俺達の夢である以上、勝つ手段はある。」
(『サテライト』発射準備完了。)
(発射10秒前・・・)
「『ダークネスレーザー』」
キィィィィィン
(ハウリングシールド正常稼働・・・)
(発射7秒前・・・)
「バリア・・・」
「『グランドクロス』!!」
キィィィィィン
「物理攻撃も駄目か。」
「・・・『サテライト』・・・上から?」
「香織ちゃんっ私に浮遊魔法!」
「・・・私の下に入ってください!!」
(発射3秒前・・・)
「わ、分かったわ!」
「『レビテーション』!!」
香奈の体が、ふわりと3m程浮上した。
「上からの攻撃をスキルで防ぐつもりか!」
「もう・・・これしかありません。」
「あ、スカートの中が・・・」
「へ? 上見ちゃ・・・いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!」
べしっ
「お兄ちゃん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
(発射1秒前・・・)
(発射。)
そして、コロッセオ風なボスの間全体に、光の柱が降り注いだ。




