第5話⇔気付いた気持ち。
『終わったぁ〜??』
『う〜ん。後は来週に回すよ!』
私は書類をファイルに入れ、パソコンの電源を落とした。
コンパの日が今日。さっきから砂耶が私を急かしてた。
『それで?今日のコンパの相手はどんな人達なの?』
行く手前気になるし…。
『あぁ!うちの姉貴の知り合いらしくて、外資系の商社マンらしいよ!!』
砂耶は化粧直しを念入りに始めた。
商社マンかぁ…。かっこよさ気な雰囲気だよ!
でも…。
凌も負けて無い!!カッコいいし、精神面は大人だし!!!
何で???
私…凌の事をこんなに考えてるんだろ??…
ううん…凌の事は考え無いようにしなきゃ!!
この歳になっても。凌から独り立ちをして無いなんて…。
でも…良い機会!!!いい加減、離れる準備しなきゃ。うんうん…
『亜美?首振ってどうしたの??』
無意識に振ってた?私…
『いや!何も…』
とだけ言い私も化粧直しを始めた。
『今日は本当に可愛い子ばっかで嬉しいよ!!』
メンバーは3対3。人数的には少ないかな。砂耶と私と同じ会社の受付の安藤さん。私以外はみんな美人…。
相手の人達も《大人の男性》って感じ!!みんな優しそうだし…。
でも…大人過ぎて気後れしちゃう。
『亜美ちゃんどうしたの??』
ん…??私ボーッとしてた?
隣に座ってる男の人が心配してくれる。彼は佐藤秀樹さん。カッコいいと言うより雰囲気が大人な感じで優しい人!さっきも酔っ払った友人を介抱してた。
『ちょっと酔っ払ったみたいです。でも!大丈夫ですよ!!』
最近は男の人が凌しか近くに居なかったから、他の男性って緊張する。
『大丈夫なら良いけど…』
『気分悪かったら言ってね?!』まで付け加えてくれるなんて…優しい!!
(ブルルル…)
ん??携帯??
パカッ。(着信…凌ちゃん)
プツッ!切っちゃった。
今は出れないし…
(ブルルル…)
また??
もう!!
『もしもし…』
とうとう片耳を押さえて出る。
『亜美??』
一日ぶりの凌の声。
『今日は無事に行けたか??』
心配しすぎ…
『うん!行けたわよ。』
『あれ?周り騒がしく無いか…』
やっぱり気付いた?
『あぁ!!飲み会だよ。』
『へぇ〜。亜美が飲み会に出るって珍しいな!砂耶さんと一緒?』
ハハハッ…。コンパです!
なんて…なんとなく言えない。
『一緒よ…。あれ?凌も外なの?』
何か…クラシックが流れてるけど?
『俺は…智と食事中!』
ふ〜ん。
『きゃあ!!』
『亜美ちゃ〜ん!何処に電話してんのぉ〜??』
うわ!酔っ払い!!!しかも抱き着いてくるし!!!!
『亜美?どうした!!!』
『な・何でも無い!!!凌、切るね!じゃあ』
プツッ…
んも…何なの!!この酔っ払い!!!
『やめて下さい!!!』
ヤダヤダヤダ!!!胸元に手が…!…
『いい加減にしなよ!!』
砂耶が乱入!!
『お前やめろ!!』
佐藤さん乱入!!
それでも酔っ払いはエスカレートしてキスしようとしてくる。
『亜美!もう!!こいつ危ないから店を出な!!』
砂耶の一言にバッグを掴んで、砂耶に合図して店を出た。
気持ち悪い。胸を触られた感触残ってるし…最悪
うっ!!!涙が…。
凌に、で…電話しよう。指が震えてうまく押せないよ…。
(プルルル…)
(プルルル…)
凌、出て…
(プルルル…)
『もしもし!!亜美?何かあったのか?!』
『うっ…』
凌の声聞いたら安心して涙が止まらない…
『亜美?落ち着いて!!』
『今どこだ?!!!』
今…?えっと…
『〇〇街の…〇〇こっ…公園のベンチ。』
『すぐ行くから!!そこから動くな!!!分かった?』
うっ…。
頷くしか出来ないよ!!!
『亜美!大丈夫だから…』
不思議…凌の《大丈夫!》は本当に安心する。
電話は切れてるけど…
携帯を握りしめた。
やっぱり…私、凌に頼ってしまうんだよね。
『亜美!!』
凌の声だ…
街灯の横を走ってくる影。影がドンドン近くなる。
『りょう〜!!!』
凌の胸に飛び込んだ。凌の心臓がすごいスピードで音をたててる。
きっと…私の為に急いでくれたんだ。
そう考えると、安心して一気に涙が込み上げる。
『あぁ―――ん。』
頭を撫でる凌の手には優しさが滲み出てて、守られてるのがよく分かった。
暖かい…
すごく落ち着く…
『凌の胸ってこんなに暖かかったんだぁ…。』
背の高い凌を見上げ呟く。
本当に安心出来るから…
『ハハハッ…今頃、気付いた?』
泣き止んだ私を見つめ笑う。
今、すごく痛感した。
私には凌が1番なのかも。この笑顔を独り占めしたい…。
実は…心の中では昔から、そう思い、願ってたのかもしれない。