第5話 波乱の任命式
日記を手にしてから1年という月が過ぎようとしていた。
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俺も16歳になり、姉さんが成人の儀を迎える準備を始めていた。
この頃、母さんが次期鬼頭家当主を任命しようとしているのだ。
母さんは、まだいまだに健在で衰えなどまったく見せないが万が一のためらしい……。
どうせ、俺は母さんからは実力は見せていないから聡明な母さんのことだ、明確に姉さんだろう。
と思いそんなことに全然関心がなかった。
♢ ♢ ♢ ♢
―――――次期鬼頭家当主任命式の日
俺ら、鬼頭家一族全員が屋敷の大広間に集められた。
母さんは、事前に俺たちに何も言わなかったから俺もまだ、だらが当主になるのかわからない。
まあ、姉さんだとは思うが……。
弟も最近は体がしっかりしてきており徐々に力を付けてきているのでわからない。
分家精鋭3人衆モダ………。まあ、権力に溺れそうな気がしないでもないが、
母さんがいれば大丈夫であろう。
そう、楽観視して行く末をぼーっと眺めていると周りの会話がなくなりいよいよ始められるようだ。
空気が重くぴりぴりしているなか
「今から、次期鬼頭家当主任命をしたいと思います」
と母さんが切り出した。
ごくり………だれかが息をのんでるのがわかる。
俺は、それを冷静に観察する。あ、だれか屁をやりやがったな……臭うぞ。
と眉をひそめていたら、
「次期鬼頭家当主は、鬼頭一花に命じます」
「以後、これからも当主としての勉強をし、精進しなさい」
姉さんも臭うのか……俺の方を向いているのだがと頭から聞きたくないワードが入ってきて認識するのを拒否しようとしている。
「兄さん、兄さん、呼ばれてますよ」
弟がそういって小突かれ、ようやく我に返った俺……。
「いやいやいやいや、母さん。何いってるんですかあなたは………。」
「ここでは、当主」と呼びなさい。と律儀に返される……。いや、そうじゃなくて
「それじゃあ、当主様、どうして俺なんです?」
「そうですぜ、桜様ならわかりますが。なぜ、その弟なんです?こいつは、俺らよりも弱いんですぜ。
鬼頭家は、実力主義でありやすのに……」
となぜか分家たちも乗っかってきた。いやー、ありがたいんだけどちょっと複雑な気分になりつつも
今はそれよりも理由が気になり、母の方をみると
「では、勝負をしましょうか?」
と母がニコリとみんなに笑いかけた。
なぜか、俺はそれにブルッと寒気がしてしまったが……。
ちなみに、桜と達也は異論がないらしい。どうやら当主は、俺がいいようだ……俺は桜がいいのに……ぐすり。
「分家のみなさんに不満があるようなので、一花が分家のみなさんに負ければあなたたちに、お譲りします」
と母さんがとんでもないことをいいだした。
「おい、母さん俺は一言も―――」
「ほんとですね?当主様?」
と分家たちに言葉を遮られた。
俺の意思は無視かよ……。
「ええ。その代り負ければ認めていただけますね?」
「わかりやした。その代わり勝ったら桜様を嫁に頂きとうございます」
ともう、勝ったことを想像したのかにやにやしてる。
「……いいでしょう。試合は、明後日に行います。それまでに英気を養うように。それでは、これで解散します」
「母さん!」
終わったあと、さっそく母さんのところにやってきた。
「母さん、どうして俺なんですか?俺は、この一族の中で実力は後ろからの方が早いはずですよ……」
と問い詰めてみると
「嘘ですね……。私には、わかるんですよ一花。それに、あなたがいつも私に見えないところで特訓しているのは知っているんですから」
「うぐ……。知っていたんですか……。でも、俺は、ここを継ぐ気はありません。わざと、負けるかもしれませんよ?」
「だからです。あなたが、辞退しないために桜を許可したんですから……負けたら許しませんよ?」
はあぁー。と思い息を吐いた後
「頑張らせてイタダキマス」と仕方なく了承するのであった。