第3話 森で…
1時間後――――
準備を終えた俺たちは森に出かけた。
「姉さん、あのー近いのですが……」
おそるおそる言ってみた。
いきなり、姉さんが俺の腕を組んできたのだ。やたら、やわらかいものが当たって姉さんの方に顔が向けられない。
「何言ってるの一花。これは、普通よ、ふ・つ・う!」
それ以上突き詰めると、機嫌を損ねそうなので何でもないように振る舞った。
意外と流されやすいのである。得した感じだし。
それとは別に後ろでは、分家たちが俺を見下したように見ているがさすがに声には出さなかった。
おそらく、姉がいるからであろう。自分らより上の者には従順なやつらなのだ。
そう、ぼうっと考えて歩いていたらいつの間にか森についていた。
♢ ♢ ♢ ♢
あたりは、鬱蒼としていて妖気が肌に粘つくような感覚を覚える。
ここは、かなり濃い妖気がまとっているようだ。おそらく常人なら倒れていただろう。
幸い、母さんの言っていたブチウルフは入口近辺にいるはずだからその辺を探す。
―――――――
………まず、3匹発見した。そしたら、分家が俺を押しのけて
「ここは、俺ら3人が片を付ける。」
といいながら武器を取り出した。それぞれ、剣、槍、弓とばらばらで連携には悪くない組み合わせである。
「ウオォォォォォォン」
オオカミの一匹が襲い掛かってきた。
「セイッ――」
後ろに行かないように牽制する。
「くらえー」
ブチウルフが後ろに引いた瞬間すかさず攻勢に出る、剣の分家
「グガアァァァァ」
「よし、まず1匹」
「よ~し、こいオオカミども!!」
と槍で挑発する槍分家……名前は忘れてしまった。
2匹を引き連れている間、弓の分家が1匹に的を絞る。
―――――――ピュン
刹那今いたところにいた片割れのブチウルフは眉間に矢が生え倒れ落ちた。
それで、動揺している最後の1匹に槍分家が切り伏せて倒した。
「ふぅ。よし、終了だ。後は、本家様の力の見せ所ですね~」
といって、みんなが俺をみてにやにや笑ってくる。
「仕方ない。片づけてやるさ」
「ほぉ~、本家のお坊ちゃんがそこまで申すからには期待しますぜ~」
「まっピンチの時には俺らが助けてやるよ」
「当主様にも言われてるしな!」
そうこうしている間、気づいたら姉さんがいないことに気が付いた。
あわてて周りを見回すとずるずる何か大きいものを引っ張ってくる姉さんを発見した。
近くで見たらやっぱりブチウルフだった。どうやら、あの3人が戦っている中一人で探して討伐してきたらしい。
なんというか実に姉さんらしかった。それ以外にどう表現すればいいやら……
そうちょっと呆れていると
「一花、まだ倒してなかったの?」
「ああ」
「じゃあ、私が付いててあげるね」
「ありがとう、姉さん」
そう、礼をいって引き続き探索する。
すると、運よく2匹を発見。
「私が1匹を牽制しておくわ、好きに倒しなさい」
うえぇ。面倒……姉さんに全部任せようと思ってたのに……。
しぶしぶ、もう1匹の方に体を向ける。
俺の得物は今のところない。俺が妖気を流し込むとすぐに壊れてしまうからだ。
したがって、現在俺は徒手空拳……。正直魔物相手だと怖いが、手柄もなく家に帰る方がもっと怖いのであきらめた。
「はぁっ」
一瞬で、妖気を練ることに集中する。その間、見ていた分家たちがいささか驚いていた気がしたが気にしない。
ブチウルフがその妖気に反応したのか襲い掛かってきた。
爪で顔を裂こうとしてきたのをしゃがんで躱し、すぐに、下からアッパー気味にパンチ。
後ろに下がって体勢を取ろうとしてきたので、隙を取らせずそのまま接近。
左足を重心に置き、右足をばねのようにしならせて頭に重い1撃を与えた。
バキッと骨が折れるような嫌な音が聞こえたからおそらく衝撃で首の骨が折れたのであろう。
ブチウルフは、起きてこなかった。
その後、もう1匹にも同じように戦いなんとか1人で勝つことができた。
姉さんは、勝って当たり前という顔をしていたが、分家の方は俺の実力に驚いたらしく目を見開いていた。
いつもだったら、弱い俺が急に強くなっていることに驚いているらしい。
「……はっ、まぐれだ、まぐれ。たまたまあのブチウルフが弱すぎたんだろう」
「……だろうな、じゃなきゃ俺らよりも格下のあいつが勝てるわけない」
そうこうしているうちに日もだいぶ傾いてきたので家に帰った。
勝手に言わせておけばいい、どうせ俺は旅にでるんだから。そう心中で思っていた。
風邪ひいてしまったのでちょっと投稿が遅れてしまいます。すみません。