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第二章 キャプテン・ヘルドッグ

「おい大丈夫なのか?」

「えっ何が?」

エレイドの問いに、フラムはきょとんする。

「確かお前カイルさんに止められていなかったか?依頼受けるの」

「大丈夫。『その』室長のじかじかの許可だから~」

フラムは満面の笑みで答えた。この笑顔に『何度』騙された事か・・・・。

「あの~あたしもここにいる事、忘れないでもらえると助かるのだけど…」

さっきから会話から締め出されがちなダンが苦笑いをする。

「あら、ごめんなさい。でも私たちが引き受ける。それだけで十分じゃない?」

「事情を説明・・・」

ダンが言いかけると、すぐさまフラムがさえぎる。

「事情なら知っているわ。元凶も予想がついているし」

「『俺』はまだ知らない」

その返事にフラムは大げさに驚く。

「え~?!エレイドあんた、何も知らないでここに来たの~?」

俺は思わず頭を抱えたくなった。

「その事情をさっき聞こうとしていたところだ」

「え~。面倒くさい~」

エレイドの言葉にフラムはあからさまに嫌な顔をする。

「お前なぁ・・・」


「お前達、少し黙れ」

思いもよらず、その場を治めたのは四つ目の声だった。椅子の上に寝ていたダットが立ち上がり、毛を逆立てる。

「す、すまない」

「ご、ごめんなさい」

あまりの気迫に、フラムもエレイドも条件反射的に謝った。その返事にダットは満足したのか、椅子の上で再び丸くなる。その様子を開いた口でポカンと見守っていたのがダンだった。ハッと我に返り、そして同時に、自分の店で起こっている出来事を理解するのを諦めたのか、静かに首をふる。

「そ、そろそろ、良いかしら?」

躊躇いがちに聞いてくる。

「どうぞ」

「すまない、続けてくれ」


ようやく会話の主導権を握ることが出来たダンは、小さく咳払いをすると、話を始めた。

「えっと、あなたは大体の事はもう知っているみたいだけど・・・・」

そう言って彼の視線は火の魔術師へと向く。

「キャプテン・ヘルドッグって知っているかしら?」

「それってあれだろ?『いい子にしていないと、キャプテン・ヘルドッグが来て連れて行ったようぞ~』のあれだろ?」

そうエレイドが訊くと、ダンはこくりと頷いた。『キャプテン・ヘルドッグ』とは聞き分けのない子供をしつける際の代名詞のようなものだった。

「どうして、そんなおとぎ話がいきなり出てくるんだ?」

「もし、おとぎ話じゃなかったらどうする?」

フラムが面白がるように表情で聞いてくる。

「恐ろしく、残酷な『キャプテン・ヘルドッグ』か。まあ、実在の人物がいたとしても不思議ではないな」

「そういうわけなの」

エレイドの言葉にダンが頷く。

「本当の名はキャプテン・バーナード。おとぎ話には尾ひれがつきものだけど、意外とそうでもなかったみたいなの」

「どういうことだ?」

「実際、有能な魔術師だったらしいし、彼がやらかした事で、いろいろと目も当てられない自体を何度も引き起こした、って言われているわ」

「なるほど」

相槌を打ちながらダットの方を見ると、彼は合いも変わらず丸くなっている。

「まっ、そんな彼も結局はつかまり、処刑されてしまったけどね。それが大体今から200年ぐらい前の話」

ダンはふと立ち上がると、バーから水を持ってきた。

「そのあたりから私が話すわ」

フラムは一口水を飲むと、そう言った。

「処刑はされた。そこまでは良かったわ。けれど問題は彼が処刑の日、こう言ったこと。『俺は戻ってくる!銀月が輝く夜に、俺は戻ってくるぞ』と」

「なるほど、それがキャプテン・ヘルドッグの話になったわけか」

キャプテン・ヘルドッグとは、幽霊船の船長の話。銀月の夜、その幽霊船は海に現れ、あたりの船を襲っていた。数々の戦士達がヘルドッグを倒そうと挑んだが、返り討ちにされてしまった。そんな時現れた、一人の若い魔術師。彼がヘルドッグを封印し、めでたしめでたし、というのが主なあらすじだ。

「そういうこと。まっおとぎ話よりかなり酷い状況だったらしいけどね。そして『キャプテン・ヘルドッグ』を封印した魔術師っていうのが、私の5代?6代ぐらい前の火の魔術師ってわけよ」

「あら、そうなの?それは知らなかったわ~」

ダンが驚いたように声をあげる。

「って何か?まさかとは思うが、今回の件もその『キャプテン・ヘルドッグ』の所為なんて言わないよな・・・・?」

恐る恐る聞いてくるエレイドの様子に、フラムはクスっと笑うと、掲示板へと向かう。一枚一枚依頼書に目を通しながら、より分けていく。

「えっと、『怪物』はそうね。こっちは『紛失』?これは違うね。あっ、でもこっちは・・・・そうね」

最終的に掲示板に残ったのは依頼書は三枚だけだった。フラムは約20枚ほどの依頼書の束を抱え、戻ってくる。

「彼の封印が解けちゃっているわね。こっちの依頼は十中八九、その所為。加えていえば、明日は銀月の夜。喜びなさい、エレイド。『キャプテン・ヘルドッグ』に会えるわよ?」

涼しげな顔でフラムはニッコリと笑う。

「うそだろ・・・・」

そしてエレイドは大きくため息をついた。

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