episode0 プロローグ
読んでいただきありがとうございます
新作です、
完走まで頑張る所存でございます。
空は重そうな灰色の雲に覆われて今にも降り出しそうな昼下がり。
カンカン照りの炎天下にうんざりさせられた日々から解放してやらんとばかりに太陽を遮断するような厚い雲に今日は感謝せねば。
そう思いながら高見沢治伸は、屋上のフェンスに持たれ、咥えた煙草に火をつけた。
屋上といっても、ここN県警東署から見降ろせる景色は、泥と湿気で苔むした隣のビルの背中と薄汚れた室外機が無機質に並び、夜にならないと灯らないネオン街は人通りも少なく、昼間だとまるで薄気味悪い廃墟のようだ。
「高校生には止めろって厳しく言うのに、自分は吸ってるんスね」
横にいる倉田がからかうように言った。
さっき、巡回中に喫煙をしている高校生たちを見かけ、厳重注意と没収してきたところだったから余計に嫌味っぽく聞こえる。
「俺はいいんだよ大人だから」
空に向かって吐き出した煙が天に昇る龍のようにも見えたが、すぐに力尽き断末魔の叫びをとどろかせて曇天の空に吸い込まれてゆく。
「煙草の何がいいんすか、俺も吸ってみようと思ったんスけどね、むせて吐き出して死ぬかと思ったっス」
龍の消える様子を目で追っていた倉田がポツリ言う。
「バカか」
倉田は高見沢よりも三歳年下の新人刑事だ、まだまだ幼さも残り、陽気な性格と甘いマスクで署の女子からも絶大な人気がある。
とかくこの仕事は経験がものを言うと言っても過言ではないが、この倉田は顔はいいが少々お調子者な性格だから心配だ、だが持ち前の性格の良さがさいわいして気遣いもそれなりに出来るし、憎めない奴ではある。
「みんながみんなむせて死にそうになれば、煙草なんてすぐになくなると思うんですが、それでもなくならないのは、高見沢さんみたいな大人がかっこよく吸うからじゃないんですか?」
警察官だって人の子だ、仕事がひと段落すればタバコの一本でも吸って一息入れたい。カッコよく見せるためではない
「最近、羽澄部長の様子がおかしいんですよ」
倉田はそう言って、煙草の代わりに持ってきた缶コーヒーのプルトップをプシュリと音を立てて開ける。
「ん?」
「時折ぼんやりと考え事してるというか、何か思い詰めてる様なんです、今日なんて目の下に大きな隈まで作っちゃって」
それは高見沢自身も感付いていたことだった、本人は何事も無いように振舞っているつもりなのだろうが、倉田にだって気付かれているということだ。
「一人でやばい事件でも抱えているんじゃないでしょうね」
しかしあからさまに事情を問いただしたところで話してくれそうな性格でもないことは知っている、特に捜査に関係ない個人的な悩みとかはともかく部下にも言えないような内密な案件だったら猶更言わない。
普段から温厚でやさしく部下たちから慕われている羽澄巡査部長、もちろん倉田や高見沢にとっても信頼できる上司だけに心配ではある。
「ま、そのうち何か話してくれるだろう」
「話してくれるといいですね」
しかしそんな日が来ることはなく、羽澄巡査部長は殉職し倉田は辞表とともに姿を消した。
まずはプロローグを。
でも決して警察の話ではありません、期待した人ごめんなさい、
次回から登場するのは、おバカな主人公しかいません。




