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16px:USA  作者: 和風つな
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 わたしは、フィッシング詐欺にあってしまったのですよ。見事に釣られてしまいました。わたしのモットーはあまり人に迷惑をかけるスリルはしないことでありましたから……わたし本人に試練を作り上げ犯してくる存在というのは、異形という他ありませんでした。被害額は8万円ほどで1円たりとも補償はされませんでした。わたしは、まさか8万円で人を殺すような人間だとは自分を信じたくありませんでしたが、どうやら今までの制限の積み重ねはそうであった未来を確定させていたようなのです。


 8万円というのは、大きな金額ではありませんか。もし身近なところから借りるなんて言ったら数少ない友達を失いかねない金額です。すぐにポンと稼げるものではありませんし、わたしは当時厄介なことに右足を骨折しておりました。日雇いの肉体系のバイトも難しい状況でした。そしてわたしは妙に潔癖なきらいがあったため、身体を売るくらいなら死んだ方がマシとも思っていたのです。この妙な潔癖の中には、借金をわずかでも作るくらいなら死ぬという強迫観念も含まれておりました。家族との関係は悪い方でありましたので押し付けて死ぬことには特に何も思いませんでした。わたしはあくまでわたしの肉体と精神に、汚点を許したくなかった……まさかこのようなピクセル体となって恥を晒しつづけるようになるのであれば、素直に一人で死んでいたかもしれません!……そう思うと、たった8万円に思えてくるのですから不思議です。たった8万円。そう思えたらいいですね。バチが当たったんでしょうか。犯人を特定してわたしは無理やり殺しに行ったのですから。


 わたしは当時、生きる気力がありませんでした。本気で三年以内には死のうと思っていました。その時にたまたまスマホでクレジットカード認証する機会があって、なんの疑いもなく入力してしまい、決済の認証コードまで巧妙な文に騙されて送ってしまいました。その後すぐに気づいてカード会社に相談しカードを止めてもらって決済の取り消しを相談しましたが、認証コードを渡したのならわたしが入力したことになると言われて補償がされず、泣き寝入りとなりました。生きる気力も余裕もないのに、本当に生きるためのお金がなくなることが確定したあとの私は、絶望を絵に描いたような顔をしていたでしょう。


 なんとしてでも、殺してやる。よりによってわたしを、もはや無敵な存在であるわたしを、騙したんだ。だから、殺すんだ。


 まずわたしは善良な市民として警察に相談しました。これ以上の被害を食い止めるために、犯人を罰したいです。その言葉自体には、嘘はありませんでした。それで住所までは教えて頂けませんでしたが、氏名と年齢はわかりました。それからネットの海から犯人はいとも容易く特定出来てしまったので、わたしはすぐに殺しに行ってしまいました。フィッシング詐欺をするくらいネットに詳しいはずなのに、特定が容易な犯人というのは笑ってしまいますね。インスタで偽垢がすぐフォロリクを通ってしまいましたよ。


 とにかく、わたしは復讐を果たしました。その後、持っていた別の包丁ですぐに自害しました。わたしの人生の話はそれで終わりです。平凡に学生をして、嫌な詐欺にあって、ヒトを殺して自害した。それで終わりです。


……終われば、よかったのですけれどもね。ああそうだ。遺書のようなものを最期に思いついて死体の横で書いたのでした。何となく覚えているので暗唱しましょう。当時書いたものとまた違っているかもしれませんが、それもそれで一興というわけで。

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