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毒を吐いていきましょうか。わたしの過去は毒だらけで振り返る度に状態異常が起こるのですよ、と言ったらRPGらしくありませんかね。わたしにはもう冒険もくそもないんですけれども……それは過去にだって同じことでした。
制限、というものに覚えはありますか。それは教室です。ああ、寒気がしてまいりました。身に覚えが、毒が、ありすぎませんか。しんとしない教室。給食の配膳。体育館の床。……もうよくわかりましたよね。学生時代に良い思い出がないのです。総てが制限されているようで。
わたしは目立たなく、陰の存在でありました。もう二度と戻りたくありません。よくフィクションでは学生時代に戻ってやり直したいという意見がありますが、わたしは絶対にお断りです。もう一度戻ったら今度は良い方向にやり直せるわけがないじゃないですか。わたしは悲観的な人間です。もしも、また同じ失敗を繰り返したら? もしも、また何もなせずにいた自分を再認識してしまう出来事が起きたら? わたしはそれが、あまりにも、あまりにも怖いのです。だから絶対に嫌なのです。
制限の話に戻りますが、わたしは制限された人生を送っていましたがそれを隠れて破るような人生でした。バレるようなヘマもしないように、ほんの少しだけスリルを味わっていたのです。
例えば、小指の爪にだけ透明のマニキュアを塗ってみるとか。昼休みに誰もいない教室で持ち込んだ漫画を読んでみたりするとか。一粒だけラムネを持ち込んで食べてみるとか、その程度です。愚かでしょう。
その程度で、自分は他の人間より上手くいってるって思い込んでいたんですよ。なにも果たしていないのに。ただ、それだけのちっぽけな違反ですがわたしが学生時代に思い出すのはその小さなスリルたちです。だからきっとこれらは無意味ではなく……何も無かったわけではないことの証明にすらなっているとわたしは信じています。
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そして、制限を破ることはわたしを作り上げていく上で重要なピースと、なってしまったのでした。ヒトを殺した、というのは。いけないことでしょう。それは罪であり、ヒトの制限を歪めた行為であると……分かっていながら、殺さざるを得なかった。わたしだから。制限を最後に破るのはわたしだったから。ちっぽけな制限だったはずなのに、わたしは制限を破ることに慣れきっていたから。ほんの少しの気持ちの傾きで大きな破壊が出来てしまうのでした。
横断歩道の信号が赤であっても車も誰もいなかったら渡るでしょうか。これにはいと答える人はもしかしたら危ないかもしれません。かも、ですけれど。わたしは、これにはいと答えてしまいます。だからヒトを殺しました。そうじゃない方の気持ちは残念ながら分かりません。ああいや、意図的に普段から制限した暮らしの中のスリルという話をしていた訳ですから、むしろ分かりきっているのかも知れません。……これでほんの少し、わたしのことを理解していただけましたか。
――ピコン
なんの音でしょうか。いかにも、ドット絵らしいと言いますか……いえ違いますね。こういうのは、ドットではなくビットというんですよね。こういうピコピコしたゲーム音のことって。
まあ、気にしないで次に進みましょう。先ほどは制限から湧き出るスリルの話をしましたから……あなたに語りたいことはなにかあるかしら。……いちばん大事なことをまだ話していない?それもそうですね。なぜこうなったかを完全には話せておりませんでした。なぜ殺したか、なぜ自害をしたのか。それについて話せてはいませんでしたね……




