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高嶺の花な幼馴染が、俺の前だけボクっ娘でいる件  作者: 四乃森ゆいな
第1章 4月20日

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第2話 昼休みの屋上で

  ◇


「どうですかお嬢様、お加減の方は」


「うん、さいこ~」


 時刻はあっという間に過ぎ現在昼休み。

 俺は優花と途中で屋上で落ち合いながら、各々好きな時間を過ごして……いたわけもなく、休み時間中のやり取り通り、何故か俺が優花を甘やかしていた。


 屋上の扉を誰かが開けて入って来てもいいように、俺達は死角になる裏側へと回っている。

 そこで俺は彼女に膝を差し出し、優花はその上にサラサラな茶髪が目立つ頭を預けていた。


(うーん、確かに構ってやるとは言ったがまさかこうなるとは……。学校でこんなオフモードになるのも珍しいし、相当ストレス溜まってんのかもな)


 クラスメイトとの対話中もそうだったが、授業中でもどこか疲れたような表情を浮かべていた。いつもであれば1日もつはずだが、今日に限ってはそうでもないらしい。


「というかお前、こんなところで素出していいのかよ」


「だ~いじょうぶぃ! 今はちょっとリラ~ックスしてるだけ、もう少し癒してくれたら戻るよ」


「それはそれでなんか変な感じするな」


「えぇ、なんでよ」


 優花はクスッと笑みを浮かべる。

 素でいてくれることが勿論1番嬉しいことではあるが、それでも、学校という空間で暮らす〝彼女〟のことも気に入っている。



 幼馴染である彼女を〝咲良優花〟でいさせてくれる〝彼女〟にも感謝はしているが、作り上げてきた偽物だって〝咲良優花〟であることに違いはない。本人がどれだけ()()()()と並べ立てようと。



 過去の彼女が今、こうして普通の生活を送っているのはなにより嬉しいんだ。


 きっとこの感情は、俺が彼女の幼馴染だからってだけじゃないと思う。


「んん~? その顔は、なにか考え事でもしてるな~? いけないねぇ。カノジョを甘やかしてる最中だっていうのに他のことを考えてるなんて。はっ! さては浮気か!」


「全然ちげぇよ、被害妄想すんな」


「冗談! ……蒼真がそんなことするわけないもんね」


「……っ、い、いいだろ別に。ってかほら! もう終わり、昼飯食べさせろ!」


 ぽっと、頬に熱が集約したのを感じた。


 突然出る素の言葉だけは、どうしても慣れる自信がない。それ以前に、彼女自身の本音であるが故に余計タチが悪い。無自覚故の素が本当に可愛いが、同時に心臓に悪いのだ。


「んで? 結局のところ、ボクの存在を無視して誰のことを思い(ふけ)ってたのかな~?」


「……わかった、実は根に持つタイプだろお前」


 俺の頬を指でつつきながら、優花は身体ごと体勢を変える。


「んにゃ~終わっても良かったかなぁとは思うんだけど、兄者の考える想い人の正体を探るのも面白いかなぁと思い至ったわけですわ」


「思い至るな。今すぐリターンさせろ」


「はっ! そんな言い逃れをしたって無駄なのだよワトソン君。人の心を正確に読み取るほどの観察眼を持ってこそ立派な探偵としての第一歩。そのためにも――ボクと少しの間楽しもうではないか!」


「――要するに『最近探偵もののアニメにはまってるから自分も名探偵みたいに推理をしてみたいけどそんな難事件を抱えてる人が身近にそう容易くいないだろうなぁというところに物思いに耽る俺がいたから協力してくれたまえ』ってことでいいのか?」


「むぅ、つまらん! 寸分違わず当ててくるんじゃないよ! 普通そういうのは、少し外れた推理を見せることで『残念だがその推理には間違いがあるぞ』的な、犯人からの指摘が加わるもんなんじゃないの!?」


「毎回毎回犯人に推理の穴を見つけられるのって、最早名探偵じゃなくね」


 俺からの指摘に「それもそうか」と呟く優花を、俺は心の中で変な奴と苦笑する。


 成績優秀、スポーツ万能な『高嶺の花』は、漫画やアニメは勿論、俺が普段から読み漁っているラノベや一般小説にまで手を伸ばすほどのオタクだ。


 俺としては同じ趣味を持った良き話し相手という印象しか受けないが、実際に学校連中がこんな姿の彼女を目の当たりにしたらどうなるんだろうか。そんなことを考えなかったことはない。


「……なぁ、優花」


「……どうしたの? 今度はさっきまでと違って〝誰かを心配してる〟って顔してるぞ」


「なに、お前ってエスパーかなんかか……?」


 俺のその発言のどこが彼女のツボを刺激したのか、優花は腹を抱えて大声で笑い始めた。


「な、なにがそんな面白いわけ……」


「いやいやいや! 面白いっしょ!! 真面目バカがここまで真面目になると一周回って面白いんだなぁって気づかされた気分だわ!」


 誰が真面目バカだこの野郎。


 目元からこぼれる笑い過ぎによる涙を拭いつつ、優花は息を整え始める。


「はは、あぁ~~笑った笑った。生きてきた中で上位に食い込むほど笑った気がするわぁ!」


「ほぉー。ちなみに、第1位は?」


「小さい頃蒼真がアイスを道端に忘れてきた事件!」


「よっし、今すぐ脳みその改造手術してやるからそこから起き上がるんじゃねぇ」


 なんであんな小さい頃の話まで覚えてやがるんだこの幼馴染は!


「あっはは! 半分冗談だってば! まぁ、1番面白かったのはそのときのことだけど」


「おい」


「まぁ話を戻せば……どうしてボクが蒼真の考えを読んだのかーってことでしょ? まぁ、ボクの観察眼をエスパーと解釈してくれるその発想力は堪らなく好きなんだけどねぇ。もぉ~少し適当な言葉があったんじゃないか。そう思わないかね、ワトソン君!」


 まだそのノリ続いてんのか。本当にハマってる作品ほど何度も見返す癖があるのがオタクの性なのはわかるんだが、優花がここまで浸水してるのを見ると余程面白いんだろうな。

屋上は青春のあこがれでした。

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