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『高嶺の花』だってくだけたい。~憧れの的な幼馴染がボクっ娘なオタク気質なのを俺だけが知っている~  作者: 四乃森ゆいな
第3章 見学

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第23話 過去回想 その2

第三章です。

ここから、ヒロイン視点が続きます。

 ◆咲良 優花◆


 私――『咲良優花』は昔から、周りとは少し違う、いわゆる浮世離れした子だったと今ではそう思う。



 母親譲りの容姿を持ちつつ、幼馴染の頭の良さに負けないようにと努力を重ね、勉学に限らずスポーツや芸術、あらゆる方面を磨きあげていった。


 その努力の甲斐もあってか、私が通っている『月ノ宮学院中等部』では入学式の新入生代表挨拶に任命された他、壇上へと上がったことが起因してか、入学早々同学年に限らず、他学年の生徒からも注目の(まと)となっていたことは嫌でもわかる。


 つい半年前とは打って変わった環境。


 違った意味合いで注目を、他人からの視線を浴び続ける日々。


 自分から望んだ故の副産物とはいえど、ここまでになるとは完全な予想外。入学してすぐの頃は、毎日のように幼馴染――『水無月蒼真』の家へと通っていたと思う。


 勉強するためという表向きな理由とは裏腹な光景が広がっていたことは、言うまでもないけれど。


 ただ同時に、こうしてすぐに水無月君に甘えられることへの安心感も感じていたと思う。


 小学校へと上がる少し前、私はどうしても彼と同じ私立小学校へ通いたくて、彼には到底及ばない頭をフル回転させながら、慣れない漢字、見慣れない数字を一生懸命勉強した。


 結果として同じ学校には通えなかったが、今は違う。


 才色兼備の優等生として、これから少なくとも6年間、ずっと同じ学校に通えることへの安堵に、心が満たされていたのは確か。隣に立てることへの努力が実った。数々の努力の内、ようやく、私の……ボクの、



 ――努力(すべて)が実ったのだと。






 月ノ宮学院中等部へと入学してから数週間。


 入学式より続く熱は冷める気配を見せることなく、今日もたった今まで、多くの生徒たちの対応に追われていた。


 いつ頃終わるのかの検討も付かず、咄嗟に打ったメールで幼馴染には『今日のお昼は先に食べておいて』と伝えたが、お昼休みは気づけば既に折り返し地点。この時間にもなれば、さすがに食べ終わってしまっただろうなと思いつつ、人気が少ない廊下を突っきり、目的地を定めることなく、ただひたすらに歩を進めた。


「……あれ、図書館?」


 気がつけば、中等部の校舎からでは遠い図書館にまで歩いてきてしまっていたらしい。無意識故の行動で、いつの間にか外に出ていたことにも心中驚く。


 もう1人の〝咲良優花(わたし)〟の仕業(しわざ)かとも一瞬思ったが、彼女とは常に意識が互いにシンクロしている状態。どちらかが得た記憶、感情、意思等は全て共有されるために彼女のせいではないことは明白。

 否、どちらも私自身なのだから、彼女と二人称視点で〝咲良優花(わたし)〟を見るのは間違いだ。


「……無意識でこんなところまで歩いてきてたとは」


 自分の起こした行いに呆れつつ頬を()く。




 近頃、思うことがある。


 望んでいた平穏な学園生活が、今ここにあることは間違いない。


 ずっと、こうでありたいと願った青春模様を体感できているはずなのに……。


 どうしてだか物足りない。――心に小さな余白が生まれているように思えた。


 いつもなら隣にいるはずの幼馴染が居ないことだろうか。そんなの、小学校6年間の生活がまさにそうだっただろうに、なにを今更と首を横に振る。



(平穏。確かに私が望んだもの。私のために、彼が一緒にこの学校への入学を決めてくれたときはあんなにも嬉しかったはずなんだけど……)



 思い描いていた理想が『何かが足りない』と、そう訴えているような気分だった。


 そしてその正体の名前を、()()()の私は、ボクは……まだ知らない。


 隣の空席がようやく埋まったことへの安堵(あんど)、それ故に得た新たな感情の名前を。



「――あ、あの。図書館に、御用でしょうか……?」



「えっ?」



 ふと後ろを振り向けば、両手いっぱいに本を抱えた1人の女子生徒が困ったように私に声を掛けてきたようだった。


 図書館へと続く入口前で(たたず)んでしまっていたため、進行通路を塞いでしまったらしい。


「ご、ごめんなさい! 用も無いのに入口で止まってしまって……」


「い、いえ、大丈夫です……! こちらこそすみません、すぐにこれらの本を図書館に運ばないと、紙が日焼けしてしまう恐れがあったもので」


 彼女は自分より下の方へと視線を向ける。


 よく見れば彼女の足許(あしもと)には、段ボールに敷き詰められた本が山のように積み上がっていた。……もしかしなくとも、私がここに居たせいで入口前に積んでたのかな。本を大事にする気持ちは人一倍わかっているだけに、改めて申し訳なく思えてきてしまった。

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