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王女ではなくなりますが ‥‥‥   作者: ゆきちゃん
第3章 あなたの命は必ず守る
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25 機織り機

 機織り機が置いてるという家に着き、ゴブリンの長老が言った。


「あそこの窓から機織り機が見えます。アラクネ様がいつも織物を織っていらっしゃいました。」


 グネビアが聞いた。


「アラクネ様のことを知っているのですか。」


 長老が答えた。


「もう百年以上前のことです。私達ゴブリンは最初、暗黒空間の中に住んでいましたが、魔物の中で最弱の私達はひどく迫害され、ちょうど永遠の荒れ地と暗黒空間の一部が重なる時、ここに移り住みました。その時には、もうこの家があり、アラクネ様がいらっしゃいました。そう、王女様と同じくらい若く美しい方でした。」


「そんなに昔のことですか。」


「私達ゴブリンの事情を知って、アラクネ様からは、いろいろなことを教えていただきました。人間がこの永遠の荒れ地に住み着かないように、侵入者がいたら幻獣をけしかけることを教えていただきました。それと、霧の色を人間にとって不気味な色にしていることもそうです。」


「この家は無人のようですが、アラクネ様は今どこに行かれたのですか。」


「ある悲しい事件が起きました。もしかしたら、あなたたち人間の間では伝説になっているかもしれません。」


 それから長老が話し始めた。その内容は、前に母親のエリザベスから聞いた伝説だった。


「アラクネ様は不利な戦いに望む恋人の命を守るために、神と織物の技を競いました。勝った場合の条件は、神しか使ってはいけない、月の光が溶けた銀の糸でローブを織ることとされました。」


「前に母親から、その後のことを聞いたことがあるのだけど、アラクネ様は勝ち、そして恋人はそのローブを着て不利な戦いに望み、命は救われた。けれど、神は負けたことを大変悔しがり、アラクネ様に蜘蛛になる恐ろしい呪いをかけたということだったわ。」


「はい、そのとおりですけど、その後の話があります。」


「どういう話ですか。」


「悔し紛れにアラクネ様を蜘蛛にしてしまった神に対して怒り、アラクネ様のことを哀れだと深く同情して、神の呪いを解こうとした方がいらっしゃいます。」


「それは誰ですか。」


「大魔法使いクレスト様です。そして、大魔法を使ったクレスト様の試みはほとんど成功しました。」


「大魔法使いクレスト様のことは私もよく知っています。だけど、『ほとんど』とはどういうことですか。」


「人間であるアラクネ様から、蜘蛛の要素を引き離すことはできました。ただ、人間であるアラクネ様は、体に少し残った神の呪いの影響で、永遠に100歳の老婆の姿のまま生き続けなければならなくなってしまいました。」


「それからどうなされたのですか。」


「しばらくの間この家で、100歳の老婆の姿では恋人に会えないと、毎日嘆かれていました。そしてある時、機織り機をとりに再びこの家に帰ると私達ゴブリンに言い残し、どこかに行ってしまわれました。」


 そのことを聞いた時、グネビアの心の中には地の果ての崖に住む魔女の顔が浮かんできていた。


 グネビアが言った。

「この家には結界が張られているそうだけど、私が入ることができるのかしら。ロッテ、どう思う。」


 精霊が答えた。


「確かにこの家には結界が張られているようです。しかし、不思議なことがあります。」


「不思議なことって、何。」


「グネビア様が着ている黒い服とこの家とが引かれ合っています。」



 それを聞いてゴブリンの長老が言った。


「さきほどから気になっていたのですが、王女様が着ていらっしゃる黒い服は、アラクネ様がこの家にいらっしゃった時着ていた服にそっくりです。もしかしたら、そのものかもしれません。」


 精霊が言った。


「グネビア様、入れるかどうか試してみましょう。」


「わかったわ、ロッテ。」


 それからグネビアは家の入口の扉の前に立ち、ドアノブに手をかけて引いた。扉は開いた。


「開いたわ。」


 グネビアはそう言って家の中に入った。機織り機の所まで行ったが、少し困ったことがあった。


「ロッテ。この機織り機は少し大きくて、私が持って帰ることができるのかしら。」


 精霊が答えた。


「グネビア様、持ってみてください。剣の達人のあなたの腕の力は強くなっていますから。」


 それを聞いてグネビアが両腕で機織り機を持とうしたら、軽々と抱えることができた。そのままグネビアは家の外に出た。いつの間にか長老以外の群れの全員が集まっていた。家の前にひざまづいていた。


 グネビアはゴブリン達に告げた。


「このように機織り機を取ってくることができました。あなたたちがここに暮らす事情も知りました。あななたちの罪は許します。ここで、幸せな毎日を暮らしてください。」


 そう言うと、グネビアは黒い地味な服を脱いだ。来た時と同じように一瞬意識が飛んだ後、気がつくと目の間に母親のエリザベスがいた。


 驚いた母親が言った。


「グネビア。消えたと思ったら、すぐに帰ってきたのね。しっかり機織り機を持っている。よかったわ、うまくいったのね。」


 グネビアが言った。


「母様、少し恐いこともあったけれど、機織り機を持ち帰ることができました。ロッテが私を助けてくれました。」


 母親が言った。


「精霊様、ほんとうにありがとうございました。」


 精霊が言った。


「グネビア様と冒険することができて、ほんとうに楽しかったです。」




 次の夜、森のお気に入りの場所で、ロッテは地の果ての崖に住む魔女を待った。魔女に報告した。

「魔女様。このように機織り機を持って参りました。」


 すぐに声がして魔女が現われた。


「娘。よくがんばったね。その機織り機はおまえさんに貸すよ。さらに、アラクネを集める鏡をもう一つ貸すよ。」


 魔女は鏡を渡した。グネビアは黒い服を魔女に返した。


「この黒い服をお返しします。‥‥アラクネ様。」


 それを聞いて魔女は一瞬驚いて困ったような顔になったが、すぐに笑い顔になった。


「ゴブリン達に会ったね。ということは、全部知ったんだね。」


 グネビアがとても真剣な顔をして魔女に言った。


「アラクネ様。恋人のため、すべてを捧げてがんばったあなたのことを心の底から尊敬します。私もこれから、アラクネ様のように一生懸命がんばります。」


 魔女は言った。


「ほんとうにいい娘だね。がんばりなよ。」

 

 


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