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王女ではなくなりますが ‥‥‥   作者: ゆきちゃん
第3章 あなたの命は必ず守る
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23 精霊との出会い

グネビアは精霊剣ロッテを目の前に置き、渡された紙に書いてあった呪文を読み上げた。


「天と地、鉄と黄金、炎と水の間で最も強い精霊よ、我は崇める。我の前に姿を見せよ。アクシオ。アパレシウム。」


 すると、精霊剣ロッテが輝き青色の気体の塊が中から出て来た。やがてそれは、小さな女の子のような姿になりグネビアの前に浮かんだ。


「私を呼んだ人間はあなたね。」


「そうです。私はとてもとても大切なものを取りに、永遠の荒れ地に行かなければなりません。だけど、そこには魔物がいます。精霊様、誠に申し訳ありませんが、私のしもべになっていただいて、身を守る剣技を使えるようにしていただきたいのですが。」


「いやよ。特別な人間でなければ、精霊をしもべにできないわ。」


「精霊様、お願いでございます!私は絶対に永遠の荒れ地に行き、機織り機を持ち帰らなければならないのです!」


 グネビアが必死な表情でそう言った瞬間、グネビアと精霊の目が合った。


 その時精霊が言った。

「あ、あなたは‥‥ 」


 ‥‥


 もう既に終わった未来、魔王ゲールが直々に率いた魔王軍の大軍をランスロは戦闘に立って撃退したが、グネビア王女の腕の中で息を引き取った。


 世界最強の騎士が使った宝剣プライスラスは宮殿の武器庫に保管され、施錠・封印されることとなった。グネビア王女には、宝剣プライラスがランスロの一部のような気がして、武器庫の中まで泣きながら保管庫についてきた。


 武器を管理する公爵が言った。


「王女様、我が息子をそんなに愛おしんでいただいて、心より感謝申し上げます。しかし、このような殺伐として所にいつまでもいらっしゃると、お気持ちもさらに乱れてお心を病んでしまいます。」


「ランスロが血まみれの手で多くの臣民を守るために振った剣です。私はそばを離れません。」


 そう言った王女は、宝剣プライラスに手を添えながら、いつまでもその場を離れようとしなかった。それを見て公爵が係官達に言った。


「しばらくの間、お一人にしてさしあげましょう。」


 それからグネビアは、宝剣プライラスのそばで何時間も泣き続けた。


 その姿を武器庫の中で見ていたものがいた。


 それは、武器庫に保管されていた精霊剣ロッテに宿る精霊だった。


「王女様、王女様、王女様‥‥ 」

 精霊はグネビアを何回も呼んだ。そして最後には、その呼びかけにグネビアが気がついた。


「私を呼ぶのは誰ですか。」


 か細い小さな声でグネビアはたずねた。

 

「この前に来てください。少し歩くだけでいから。」


 その声は、精霊剣ロッテの保管庫から聞こえてきた。グネビアは精霊剣の前に立った。


「王女様。どのような言葉を言っても、お慰めすることはできません。けれど、是非お伝えしたいことがあります。」


「はい。」


「宝剣プライラスの言葉を御伝言させていただきます。『世界最強の騎士にして高潔な心をもつ騎士ランスロと、最後まで一緒に戦わせていただいて非常に光栄です。』後、こうも言っています。『激烈な戦いの最中でも、騎士ランスロの心の中には常に王女様が居て、彼は支えられ彼の強さの源泉になっていらっしゃいました。』」


「ありがとうございます。ほんとうにうれしいわ。」

 王女にとって大変な喜びだったが、反面さらに大きな悲しみを感じさせた。グネビアの涙はまた大粒になった。それを見て精霊は言った。


「王女様の美しく青い瞳を涙でいっぱいにさせてしまったわ。今、忘却と眠りの魔法をおかけします。お忘れにはなれるのはほんの少しの時間だけですが、しばらく眠ることができます。」


 精霊剣ロッテが輝き、花々の良いにおいがグネビアを包んだ。グネビアはだんだん深い眠りに入っていった。


 ‥‥



 精霊が言った。


「グネビア王女様。」


 グネビアは驚いた。


「私は王女ではありませんが、なんでそのようことを言うのですか。」


「私と話した記憶をお忘れになっているのでね。今、少しだけ忘却の魔法を解いて想い出していただきます。」


 そう言うと、精霊がぐるりとグネビアの回りを一周した。


 グネビアが言った。


「想い出しました。あの時、武器庫で話しかけていただいた精霊様ですね。」


「精霊様と呼ばなくてもいいです。『ロッテ』と呼んでください。剣の名前といっしょですけど。」


「ではロッテ、事情を話したいのだけど、この修練場に居る方には聞かれたくないのですが。」


「あ、あそこに騎士ランスロが控えている。グネビア王女様、時間が元に戻っているのですか。今からは心と心で直接会話できるようにしますから、私に事情を教えていただけますか。」


 それから、グネビアは心の中で精霊に、全ての事情を説明した。


「グネビア王女様、10年間戻る大変な道を選ばれたのですね。今から永遠の荒れ地に行き機織り機を取ってきて、アラクネの糸で騎士ランスロの命を守るローブを早く織り上げなければならないのですね。」

「ロッテ、お願いだから王女様をつけないで。」


「騎士ランスロに知られたくないのですね。それでは気をつけて、今から声に出して話をしましょう。」


 精霊は声に出した。


「しょうがない。人間よ、しぶしぶながらおまえのしもべになってやるとしよう。」


「精霊様、ありがとうございます。」


「人間よ、名前はなんという。」


「グネビアと申します。」


「私はもうしもべです。これからはグネビア様とお呼びます。私のことはロッテでいいです。剣の名前と同じです。」


「わかりました。ありがとうございます。」


 グネビアは修練場の隅に控えていたランスロを呼んだ。


「ランスロ様。精霊様が私のしもべになっていただけるそうです。」


「レディ、すごいですね。正直申し上げて、精霊をしもべにできない場合のことも考えて大変心配してました。」


 精霊が言った。ランスロには聞こえなかったが。


「騎士ランスロよ。木剣でグネビア様と立ち会ってみるがいい。そして、ほんとうに私がしもべになったことを確認するのだ。」


 ランスロが言った。


「レディ。どうでしょうか。」


 グネビアが応えた。 


「あまり自身ありませんが、私も精霊の力を確認したいです。」


「それでは、木剣を持ってきます。」


 グネビアは精霊に言った。


「ロッテ、精霊剣ではないけど、大丈夫。」


「大丈夫、既にグネビア様は神わざに等しい剣技を使うことができます。」


 ランスロは木剣を持ってきて、グネビアに渡した。


 修練場で2人は向かい合った。ランスロが言った。


「レディ、いつでもいいです。打ち込んでください。」


「ランスロ様。それでは打ち込みます。」


 木剣などほとんど振ったことのないグネビアだったが、一瞬、ランスロの左半身に隙があることを感じた。そして、直線的に人間わざとは思えないような光速の早さで木剣を振った。


 それはランスロの左脇腹に見事に当った。


「えっ、えっ 」


 世界最強の騎士があっけにとられていた。





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