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王女ではなくなりますが ‥‥‥   作者: ゆきちゃん
第3章 あなたの命は必ず守る
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21 永遠の荒れ地

 グネビアは16歳になった。これまで集めたアラクネの糸は相当の量になって、ベッドの下には入りきれなくなっていたので屋根裏に運んだ。


 ローブを編めるかどうか、母親のエリザベスに相談した。


「母様、アラクネの糸がたくさんの量になったわ。もう、ローブを編めるのかしら。」


 母親が答えた。


「蜘蛛の糸とは思えないほど、銀色できれいな糸ね、丈夫でとても強そうだわ。だけど、かなり細い糸だからまだまだ量が必要ね。」




 その夜も、グネビアは森のお気に入りの場所で月の光を鏡で反射させ、多くのアラクネを呼びよせていた。不安が独り言になった。


「魔女様に代償としてランスロとの間の運命の糸をとられ、いろいろなことが起きたけれど2人は引き裂かれず、糸が無限に巻かれていることがわかったわ。だけどほんとうに心配なのは、運命の時までもう2年しかないのに、ほんとうにローブを編み上げることができるのかしら。」


 その時、突然声がした。


「娘よ。ここまで来たんだ。がんばるんだよ。」


 グネビアの前に、地の果ての崖にある小屋で会った魔女が、空中に浮いて現われた。グネビアは挨拶をした。


「魔女様、お久しぶりです。」


「これまでおまえさんと愛する人との間に起こったことを、水晶で逐一見ていたよ。もうわかったよ、おまえさん達2人の間の運命の糸はとりきれるものではないよ。少しとると反発して何倍何重にも巻かれるんだ。最強の絆だね!」


「そうですか!」


 グネビアは魔女のその言葉を聞いて、とてもうれしかった。


「だから、もうやめた。運命の糸はいらないよ。その代わり代償として働いてもらうよ。」


「どんなことですか。」


「私とおまえさんの両方にとっていいことさ。私にとって大切な機織り機が、ある場所に置いたままになっている。それを取ってきてほしいんだよ。その機織り機はアラクネの糸を、きれいに早く織り込むことができるものさ。おまえさんに貸すよ。」


「そんなに早く織れるのですか。」


「そう、あっという間さ。おまえさんは愛する人のために、できるだけ早くローブを編み上げたいんだろ。」


「そうです。必要なだけアラクネの糸が集まったらすぐに。」


「それとおまけも付けるよ。もし、おまえさんが私の機織り機を取ってきてくれたら、アラクネを集める鏡をもう一つ貸すよ。今までの2倍の早さで糸を集めることができるよ。」


「わかりました。それで、機織り機がある場所はどこですか。」


「永遠の荒れ地にある私の昔の家さ。ほんとうは自分で取りにいきたいんだけれど、意地の悪いやつに『そこには永久にたどり着けない』呪いをかけられてしまったんだよ。」


「永遠の荒れ地のことは、私も良く知ってします。この世界を潤す光、水、緑、全てから見捨てられて、どんな生き物も生きていくことができない不毛の地ですね。だけど、どうやってそこに行けばいいのですか。」


「この服を着れば行けるよ。私がかって、意地の悪いやつと戦った時に着ていたものだがね。おまえさんと私は、背格好が似ているからぴったりだと思うよ。」


 魔女は黒い地味な服をグネビアに渡した。


「後一つ忠告するよ。永遠の荒れ地ではどんな生き物も生きていくことができないけれど、魔物は別だよ。魔物は生き物ではないからね、あいつらには丁度住み心地がいい場所さ。暗黒空間から集まってきているかもしれないよ。」


「魔物が集まっているかもしれないのですか。」


「恐いかもしれないけれど、自分一人で行くんだよ。おまえさんの愛する人、あの強い騎士と2人で行くのは禁止だよ。」


 魔女の言葉を聞いて、グネビアが抗議しようとした時には、魔女はそこの空間から消えていた。


 自分が永遠の荒れ地に行かなければローブを織り上げることはできないのか、グネビアは毎日悩んだ。悩みすぎて夜眠れなくなった。昼間になって睡眠不足のまま、市場に買い物に行こうとフラフラと町の中を歩いていた。


 自分では全く気がつかなかったが、荷馬車の通り道に入り込んでしまい、引かれそうになった瞬間のことだった。


「レディ、あぶない。」


 知らないうちにランスロがグネビアを抱きかかえて、荷馬車の通り道から外に出た。


「あ、ランスロ様。ありがとうございました。」


「どうしたのですか、どこかお体でも悪いのですか。レディがフラフラしているのを遠くから見つけて、急いでここに来ました。ほんとうにあぶないところでした。よかったです。」


 ランスロの顔を見て、安心したグネビアはできるだけ、打ち明けようと決心した。


「ランスロ様。ご相談したいことがあります。」


「わかりました。あそこに座り心地のよさそうな樽が2つあります。あそこに腰掛けませんか。」


 ランスロはグネビアを気遣った。そして、樽を置いていた店の主人に了解を得て、そこに2人で並んで腰掛けた。


 グネビアが話し始めた。


「事情があって全部お話しすることはできませんが、私は、とてもとても大切なものを、ある場所に取りに行かなければなりません。」


「どこですか。」


「全てから見捨てられた永遠の荒れ地です。そこで生き物は生きることはできませんが、魔物がいるかもしれません。でも、できるだけ早く行かなければならないのです。」


 それを聞いてランスロはとても驚いたが、すぐに真剣な顔で話し始めた。


「レディがそう言われるからには、ほんとうに大切なものなんですね。ただし、私も聞いたことがありますが、永遠の荒れ地にはほんとうに魔物がいるかもしれません。私があなたを守るためお供します。」


「ごめんなさい。詳しくは言えないのですが、ある人との約束があり一人で行かなければならないのです。」


「‥‥ 」

 ランスロは厳しい顔をしてしばらく黙り込んだ。そして苦しそうに言った。


「それでは、私がレディに剣技をお教えしましょう。剣技を身につけられてから、永遠の荒れ地に行ってください。」


 グネビアが、無理矢理笑顔を作って言った。

「わかりました。世界最強の騎士様に教えていただければ、大丈夫ですね♡♡ 」


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