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王女ではなくなりますが ‥‥‥   作者: ゆきちゃん
第3章 あなたの命は必ず守る
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9 愛する人の命を守るために

御前試合の決勝が終わった後、王は満場の観衆の前でランスロに月桂樹の冠を与えて彼を讃えた。


「国王といえども誤ることは多い、ランスロはあえて、剣の代わりに杖で戦うハンデを申し出て、私が決めてしまった優勝者の家から税を減らす褒美を止めるようにし、多くの臣民からの年貢が増やされることを防いだ。栄光を受けるにふさわしい、真の騎士である。」


観衆から割れんばかりの拍手と歓声が上がった。




そのような中で、国王は小さな声でランスロに聞いた。


「会場の中で勇気をもって一人だけ手をあげて、あの不思議な杖をランスロに渡した少女は公爵家の領民だそうだな。魔法使いなのか。」


 ランスロは答えた。


「とても親しくしていただいてる普通のレディです。大切な方ですが、魔法使いではありません。」


「ランスロは領民の少女と親しくしているのか。魔法使いではないかもしれないが、あの少女はランスロのために杖に魔法をかけたと思うぞ。」




 決勝戦を見た多くの人々の心に焼き付き、伝説になったことがあった。それは決勝戦で、杖が一瞬、宝剣プライラスになってランスロを救ったことだった。


「俺たちはみんな幻覚を見たのだろうか。」


「あの試合の後、国の役人が宝物庫を検査したら、何重にもかけられた鍵や封印には異常がなかったそうだ。」


 それから後日、暗黒騎士としてランスロと戦ったアルトリウスの名誉が回復されることが、国王から宣言された。調査の結果、反逆を画策していたのは主人だった貴族であり、アルトリウスに罪を被せたことが明白になり、その貴族は領地を没収され平民の身分に落とされた。




 家でお茶を飲んでいる時に、母親のエリザベスがグネビアに聞いた。


「グネビア、御前試合の時、剣の代わりに使うためにあなたがランスロ様に渡した杖は、あの時どうして持っていたの。」


「御前試合の日の朝、森の中でランスロのために祈っていたの。すると、背が高い、たいそう高齢な御老人が目の前に現われて、愛する人を必ず救うから会場に持って行くようにと言われたわ。」


「そう、ほんとうに不思議な話ね。その御老人はあなたの祈りを感じることができ、未来を予言することもできるのね。………あっ、グネビア、少し待っていてね。」


 母親はそう言うと本箱の所に行き、1冊の本を持ってきた。その本の題名には「大魔法使い」と書かれていた。母親は表紙をめくり、最初に描かれていた肖像画をグネビアに見せた。それを見てグネビアは驚いた。


「あっ、そう、この絵の人にほんとうにそっくりだったわ。」


 母親が言った。


「この人は、大魔法使いクレスト様よ。、その呪文で500年もの間、暗黒空間にある魔王ゲールの城を封印しつづけ、人間界に平和をもたらした方よ。」


「その方は、今どこにいらっしゃるの。」


「残念ながら、あなたが生まれる少し前に老衰で亡くなり、封印は解かれてしまいました。その後、魔王ゲールは少しずつ人間界に魔物を解き放ち、やがて本格的な侵攻を開始しようとしているわ。」


 グネビアが終わった未来で、王女だった時には知らなかったことだった。




 次の日、グネビアは森の中のお気に入りの場所に座り考えていた。


(御前試合の朝、ここで出会った御老人は、ほんとうに大魔法使いクレスト様だったのかしら。いただいた杖がランスロを救ったことにお礼をいわなければ。そして、お聞きしたいことが………。)


 そう心の中で思っていると突風が吹いた。少し驚いてグネビアが目を閉じて再び開けると、目の前にその老人が立っていた。


「最強の魔法使いのグネビア様、再び参上しました。」


 グネビアはお礼をした。


「この間、不思議な杖をいただき、予言どおりランスロを助け、危ないところを救っていただきました。心の底から感謝いたします。」


 老人が言った。


「いやいや、私がお渡ししたのは固い木で作った、ただの杖ですよ。ただし、あなたの愛の力に従い、愛する人を守る魔法をかけました。一瞬とはいえ、ただの杖が宝剣プライラスに変わるほど、グネビア様の愛は強いのですね。」


「あなたは、大魔法使いクレスト様ですか。」


 老人は愉快そうに笑った。


「自分が死んだ後も、そのように最高の呼び名を言っていただくとは、これ以上の喜びはありません。」


「亡くなっていなかったのですか。」


「いやいや、今グネビア様の目の前に参上しましたのは、私が大きな悔いを残してこの世を去る代わりに、この世に残した残留思念です。」




 この後に続くべき説明はなかった。


(私の大きな悔いは、王女グネビア様と騎士ランスロにとって、悲しくて辛い別れを強いる未来を残したことなのです。)




「残留思念とはいえ、私は大魔法使いと呼ばれた人間ですから、生きていた時と同じ知恵があり、力を使うことができます。」


 グネビアが聞いた。


「クレスト様、教えてください。ランスロのために祈ること以外に私ができることはあるでしょうか。これから未来に魔王軍の侵攻があり、ランスロは自分以外の全ての人々の命を救うために、自分の命を亡くしてしまうことを私は知っています。」


 大魔法使いクレストの残留思念は答えた。


「訪れる未来で、あなたの愛する人の命を守ることができる物を私は知っています。ただし、その物を手に入れるために、あなたにはとても辛い試練が与えられますが。」


「ランスロの命を守ることができる物があるのですか、なんてうれしい!!!。その物を手に入れるためならば、私はどんな試練にも超えてみせます。」

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