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6 怪しい人

 

「はぁー!なんだったんだ!?今日は!?」


「それはこっちのセリフや。君のせいやん」


 俺のせいだと!?

 と怒りたい気持ちもあった。

 が、まぁ、俺のせいだ。


 でも、なんかコイツに言われるのムカつく!


 ムカつく権利もなさそうではあるが……


「いやぁ……まぁ、それは……そうだな。すまん」


「謝るだけ偉いわ。根っこまで腐ってるわけちゃうんやね」


「まぁな」


 俺は意外といい奴だからな。

 自分で言うことではないけど。


 完全に狩りに失敗した俺たちは近くの草原で野草を採っていた。


 目的は今日のご飯の分と、商人に買ってもらうための薬草だ。

 今日のご飯は野草の茹でたやつになるだろう……

 はぁ……もっとちゃんとしたご飯が食べたい。


「それにしても俺たちって大丈夫なのかな?将来」


「逆に今まで考えてこなかったん?そのこと」


「考えてなかったわけではないけどさ。まぁ、それなりのお金も入ってはいるからさ」


 俺たちは大概二人で狩りを行っている。


 それのおかげでそれなりに儲かるのだ。

 でも、ダメなときは全然ダメで、酷いときなんかは一ヶ月間収入がなかったときもある。


 本当は貯金しておかないといけないんだろうけど、苦手で?てへ?


「能天気な人やね。僕はこういう風に生きるの嫌いやないからええけど、アシヤはんはどうするつもりなん?」


「うわぁ、現実の話はやめてくれーー……」


「なに?この一瞬で別の誰かと入れ替わったん?この話始めたの君やん」


 賢いこと言ってきてんじゃないって。


 はぁー。なんでこんなときに限って空は晴天なんだろ。


 まだアイペングに殴られた部分が微妙に痛いっていうのにさ。


「あの。そこの方々?よろしいですか?」


「へぇ?あ、なんでしょうか?」


「なにをなさっているのですか?そこで」


 草原で食べられる草とかを探している背後から話しかけられた。その見た目は俺と同じような重装備に覆われていてあんまりわからない。

 が、声の感じからすると女性っぽかったな。しかも、若目の女性。こんなところで一人でなにしてんだろ?大丈夫なのか……ってそれは心配ないかもな。


 ……気配を感じなかったってことは強敵だろう。

 声をかけられるまで気がつかなかった。


 まぁ、人間だから敵ではないけど、強い人っぽいな。


「野草を採ってたんですよ……あははは」


「……それなら、ここで交換してくれませんか?もちろん、報酬は弾みますよ?」


「なにが欲しいんやろ?言ってみてくれん?」


 これまで全く興味が無さそうだったのに報酬と聞いて飛び付いてきたベルギ。


 現金な奴。


「普通の薬草でいいんですけど?ありますかね?」


「そんなのいくらでもあるで?どれぐらい欲しいん?」


「もう、有れば有るだけください。いくら有っても足りないんで」


 薬草が欲しいって?

 なんで?


 たぶん強い人なんだし、自分で回復魔法くらい使えそうだしな。


 薬草って回復量が少ないから強くなればなるほど使わなくなるんだよ。まぁ、俺はまだたまに使うけど。


「ホントに薬草が欲しいんですか?どうして?」


「コイツの話は聞かんでええよ。で?相場の1.5倍くらいになるけどええかな?」


 なんでだよ!

 俺にも話させろや!


「構いませんよ。お金には困ってないので」


「ほなら、それでええね?」


「はい。ありがとうございます」


 無事に交渉が済んだ二人。


 悪徳商人のベルギは笑顔で売値の1.7倍くらいの値段で薬草を売っていた。


 相場ってそっちの相場?しかも相場よりもちょっとだけ高目に設定してるし。


「それじゃあ、おおきに。助かったわ」


「こっちの方こそ助かりました。お互い頑張りましょう」


「せやな。頑張ろうな?」


 客が居なくなると笑顔が“ニタニタ”笑顔に変わる。


 本当にコイツって性格が悪いなぁ。


 てか、結局はなんだったの?聞きたかったんだけど?


「気にならなかったの?普通に絶対あの人強い人じゃん?なんで薬草なんか必要にしてるのか気になるでしょ?」


「詮索したら逃げられるかもしれへんやろ?正規ルートで買えへんから僕らから買ってるかもしれんやん。そうだったら聞かない方がええよ。こっちの方が儲かるわ」


「まぁ、それはそうかもしれないけどさぁ。謎だなぁ……」


 こういう狩人同士の物のやりとりはまぁよくある話だ。


 だから、向こうが極悪人だったとしても俺たちになにかしらの責任がやってくることはない。

 そう考えるとベルギの言ってることは正しいのだ。


 まぁ、儲かったからいいか。

 狩りに失敗した分を帳消しにできるかもしれないな。


「まぁ、当然やけど交渉したのは僕やから君は普通の値段でええよね?お金」


「うぇ!?いやでも、俺が集めた薬草も渡してたじゃん!」


「だから、それの相場分を渡すってことやん。なんか変なこと言うてる?」


 変なことしか言ってないだろ!


 普通に店に販売するのの何倍かは儲かってるはずだろ!


 それなのに俺にちょっとしか渡さないっておかしいじゃん!


「わかったわかった。それなら、ちょっとだけ色つけたげるわ。それでええやろ?」


「ちょっと?でもなぁ……」


「なんでもかんでも仲介手数料っていうのはあるもんやん。それを考えれば半々ってわけにはいかんやろ?だからな――」


「もういいもういい!!どうせ口ではお前に勝てないんだからちょっと多めにしてくれたらそれでいいよ」


「おおきに」


 ほんっとうに口だけは達者な男。


 やっぱり裏切るな。


 なんだったらもうすでに裏切られてるわ、心が。





他にもたくさん同時連載してます!

もしよかったらみてみてね?

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