5 タンクとしての役割!
寒々すぎる氷のステージに居た俺たち。
今回は暑さ対策じゃなくて寒さ対策をしてきたぞ!
出発の直前までアツアツのおでんとグラタンを食べていたんだ。
だからもう口の中が火傷しちゃってしちゃって……
って、そんなことはどうでもいいか。
「“ひそひそ”氷のステージは隠れるところがあんまりないから大変だな」
「“ひそひそ”せやろ?だから言うたやん。氷は半透明やから壁透けてまうで?って」
「“ひそひそ”なんかもっと分厚いイメージだったんだけどな。めちゃくちゃバレそうだな」
「“ひそひそ”影が動いてるのバレバレですわ。ホンマに聞く耳を持たない人」
そうだ。
俺たちは今、氷の壁の裏でモンスターたちの戦闘を見守っている。
しかしながら、めちゃくちゃ影は透けているのだ。俺たちからも向こうがぼんやりと動いているのが見える。まぁ、でも、アッチは戦闘中だし、大丈夫だろ!!
「“ひそひそ”それで?アイペングとミノミノルスどっちが勝つと思う?」
「“ひそひそ”アンタホントにそれ好きやねぇ。そんなん予想してどないすんの?」
「“ひそひそ”バフデバフもあるじゃん?全くもって無駄なわけではないよ?」
この氷のステージにいるのは氷を全身にまとった巨大ペンギンのアイペング。
そして、人間の下半身に牛の顔をしていて、さらにはケンタウロスのように牛の胴体が背中にくっついている四足歩行のミノミノルス。
前足の二本は人間の足をしているが、後ろ足の二本は牛の足をしている変な生き物。なんていうか、本当に背中から牛の身体が生えている感じなのだ。
「“ひそひそ”まぁ、普通に考えたらアイペングなんとちゃいますの?牛さん裸で寒そうやし」
「“ひそひそ”だよねぇ。じゃあ、ペンギンにデバフでもしてあげるか?」
「“ひそひそ”ええんとちゃいます。わからへんけど」
なんだか無責任だなぁとか思ったがその意見を採用することにした。
そもそもミノミノルスって身体の一部が人間なせいであんまりなんだよな。
素材を売ろうとしてもあまりにも人間すぎて売れなかったりする。
ん?ならミノミノルスにデバフをかけた方がいいのでは?
まぁ、早く終わってくれればありがたい。
もしアレだったら連続で別のモンスターも狙ってみるか。
よし!今日は働くぞ!!
「負力!」
「なんやねんマイナスパワーって……って、少々うるさいんとちゃいます?」
「しまった!なぜか声を張り上げてしまった!」
「アホや」
俺はアイペングにデバフ魔法をかけた。
そのときに気合いが入りすぎて声が大きくなってしまった!
一応、声がデカイ方が魔法の効きはよくなるけど、でもこのタイミングでするようなことじゃなかった!
「アレやない?二人ともこっち見てるんとちゃう?」
「うわぁ、確かにそうだ。牛とペンギンの顔がこっち向いてるのがめちゃくちゃ見える……」
「どないする?逃げる?」
「……でもなぁ、お金が……」
“ドタドタドタドタ!!!”
お金のことばかりを考えていた俺……たちの元に二匹のモンスターがやって来た!
なんだよ!!なんでさっきまでいがみ合ってたのに急に協力してんだよ!
アイコンタクトを交わすためにベルギの方を見るともうすでにだった。
全く本当にもう逃げ足が早いお方で……大層ですね。
「おいおい!!ちょっと待ってくれって!」
「これが正解やん!僕たちのフォーメーションってこうやろ!?」
そればっかりだ!!
正解ばっかり言ってんじゃねぇぞ!!
もっと俺の感情に寄り添ったことは言えないのか!!?
「せやけど!!せやけど!!!」
「こんなときまでうっとーしいなぁ……ヤられてしまわんかな?」
「聞こえてるぞー!!」
重装備で、全速力で逃げる俺。
当然だけど、ベルギに追い付くような気配はない。
さらに言うとアイペングは自分の氷の身体を使ってスケートみたいに氷上を“スイーッ”と移動している。それはまぁ、もう追い付かれたくらいには速いのだった。
「ベルギー!!助けてくれ!!」
「大丈夫や!!神頼みでもしとき!」
「ナンマンダブナンマンダブ……これ意味ある!?」
もうダメだー!!と思った!
接近してきたアイペングは俺に対してスケートの勢いそのままに突進してきた!
“ドガーン!!”
衝突したことで大きな音が氷のステージに響く!
それによって思いっきり“ぴょーんっ”と吹き飛ばされる俺。
でも、思ったよりもダメージはなかった。
さらには吹き飛ばされたことでベルギよりも前に行くことができた!
コノヤロー!俺を置いて逃げやがってー!!
「ベルギ!!ちょっと待て!!」
「僕のおかげで助かったみたいやね!感謝しいや!」
「はぁ!?なにを言ってんだ!」
「僕がアイペングを弱らせた方がいいって言ったおかげやん!さっきの攻撃でダメージ食らってへんの。せやろ?」
たしかに。
なんかあんまり痛くないと思ったら「マイナスパワー」してたからだ。
なんかその通りな気がしてきた。
「そうかも?そうなのか?」
「ここは言い争っとる場合ちゃうやろ!?逃げんと!」
「たしかに!逃げよう!!」
「飲み込みが早くて助かるわぁ!ほなら、タンクは任せるわ!」
「オーケー!」
俺はベルギに頼まれた通り、モンスターの前へ向かう。
そして、適度な距離を保ちつつ安全な場所まで移動するというタンクとして役割を全うした!
なんか、してやられてる感もあるが、まぁ、これが俺の仕事だしな。
他にもたくさん同時連載してます!
もしよかったらみてみてね?




