4 ズル賢すぎるベルギ
「はぁぁー!!鑑定終わったぁ!!」
「おつかれさん。ご褒美のプリンや」
「なー!ホントにいいやつだよねー!ベルギは!」
「まだ引っ張ってた!?解決したはずじゃ!」
モノクルのようなメガネを着けていたサンちゃん。
数十分間同じような姿勢で鑑定をしていた彼女は汗だくになっていた。
鑑定ってこっちが思っているよりも疲れるらしいな。
「買い物ってそれだったんだな。ちなみに俺の分は?」
「あるわけないやん。サンのためを思って買うてきたんやし」
「ホンマに!?うわぁ!嬉しい!」
鑑定の時間は長かったので、ベルギは途中で買い物に出かけていた。
俺はここで“ポーっ”としているだけだった。
鑑定中は誰かが鑑定士のことを見守るのが基本だ。
なぜならば悪い鑑定士は素材をちょろまかしたりするからだ。
まぁ、信用はしてるけどもしものこともあるから。
俺がそうしている間に自分の好感度を上げやがって、姑息な奴め。
「で?どないやった?中々よかったやろ?」
「うーん……まぁ、悪くはなかったけど――これぐらいかな?」
サンちゃんは電卓に数字を打ち込む。
俺たちに提示されたその数字はぶっちゃけ微妙だった。
これだと明日も狩りに行かないといけないかもなぁ、うわぁ、めんど。
「ホンマ?なんか淋しいな?せっかく一生懸命頑張ったのにな?」
「え!?でもなぁ……」
「僕ら、もしかすると引っ越さなアカンかもしれんな。ここでの生活は“カツカツ”で苦しゅうて苦しゅうて――でも、そうなったらここに来る機会も減るやろなぁ。まぁ、仕方がないなぁ、諸行無常やしな」
なんかあざといことしてるなぁ。
まぁ、それのおかげで取り分が増えるならありがたいからいいけど。
こんな微妙にイケメンな奴からこんなこと言われたらアカンやろ!
サンちゃんは子供だからそういう気持ちはわからないけど、アカンやろ!
“ジッ”と考え込んでしまったサン。可哀想に……
「……まぁ!!オマケね!?お得意様だからね!居なくなっちゃったら困るし!」
「おおきに。いい人や」
“ニタニタ”笑いだ。
またこの笑い方をしたベルギを他所に、電卓に新しい数字を打ち込むサン。
これって本当は俺が嗜めるべき?まぁ、いいか。
「これならどう!?これなら二人も十分でしょ!」
「うわぁ、ホンマにええんかぁ?こんなに人に優しくしてもらったの初めてやわ」
うそつきうそつき!!
でも、もし仮にコイツが女性だったら俺もヤバかっただろうな。
マジでビジュアルいい奴っていろいろ得だよな、多分。
でも、さすがに言い過ぎですわ。
「……いいすぎだろ……」
「なんか言うた?アシヤはん?」
「言うてませーん」
俺が変に真似したからかちょっとだけ“ピキッ”としたベルギ。
軽い気持ちで方言を真似すると割りと怒られるのだった。
「じゃあ!これでいいね!?お会計でいい!?」
「どうすんの?ええ?」
「もちろん!今日は本当にありがとね、サン……」
あぶな、今言っちゃいそうだったわ。
「あぶなかったね?せっかく僕が頑張ったのに無駄にするところやったね?」
「止めただろ?いいじゃん」
「サン?コイツがアイスクリームを奢るときには僕も呼んでや?ええやろ?」
「いいよーー!!」
「いいよーー!!」じゃないんだよ。
そんなことしたらベルギの分も俺が奢ることになるだろうが!
なんか、ずっとしてやられてる感じがするわ。
裏切るかどうかは知らないけど信用できないのは間違いない!
「はぁ……まぁ、じゃあ、三人で行くか?」
「せやね。三人で行きましょ?……そんなに落ち込まんといてよぉ。タカが知れとるやん、アイスの値段なんてね?」
「そういうことだけじゃない……まぁ、とりあえずはもうそういうことで」
少しはサンちゃんの純粋な笑顔を見習ってほしいもんだ。
“ピカピカ”光るみたいな笑顔をしているサンと、薄暗い笑みを浮かべるベルギ。
愛嬌あったらマジでモテそうなんだけどなぁ、コイツ。
「お会計はこちらになります!またのご来店を!」
可愛らしい女の子からそれなりの重さがあるコイン袋を受けとる。
結構色付けてもらってるからなぁ。
まぁ、ソフトクリームくらい別にいっか。
コイツに奢るのはマジで不服だけどな。
「まぁ、それじゃあ今日は本当にありがとう。また今度来るから」
「ありがとー!楽しみにしてるよー!」
「僕も楽しみやわ。三人で一緒にお買い物をするの」
「お買い物!?」
ソフトクリームだけじゃないぞ!?
コイツが狙ってるのはソフトクリームだけじゃぁない!!
気をつけないとダメだ!
「それじゃあ、二人とも!バイバーイ!!」
「またねー!サン!」
「またよろしゅうね?サンちゃん?」
「あぁー!!また言ったぁー!!」
“バタン”と扉は閉まる。
捨て台詞みたいな感じでちゃん付けしたベルギは楽しそうだった。
こんなに性格悪い奴他に居んのかな?中々珍しいよね?
「ほなら、僕たちもお別れするとしますか?」
「そうだな。てか、なんかいろいろとズルいぞ」
「ズル賢く生きないとアカンよ?そうしないと搾取されるだけやからな」
「そういうもんか?」
「そういうもんやん。人生ってな」
なんだか実体験がありそうな含みでそんなことを言った男。
「じゃ、さいなら」
「さいなら~」
「はぁ……『さいなら~』ちゃうわ」
最後にお返しだ。
これぐらいはしてもいいくらいにはやられてるしな。
なんだか睨むような表情で去っていくベルギだった。
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