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2 俺たち、スカベンジャー!

 

 何度も火の玉が直撃して、何度か頭を爪で裂かれそうになってようやく体力が切れたヒドラグ。


 もーー!本当に大変だったわぁ。


 そんな戦闘能力があるんなら最初っから真っ向勝負をしてるんだ。そういうのいろいろとムリだからこうして“コソコソ”やってるっていうのに。

 はぁ、なんか冷や汗かいたぁ。


「はぁーー!助かったぁ!マジでなんでそんなに薄情なんだ!お前!やっぱり裏切りやがったな!!」


「なんのことだかさっぱりやわ。タンクさんが前に出るべきとちゃいますの?」


「それはそうだがぁ。まぁ、それはそうか」


「聞き分けがよくてありがたいですわぁ。そんじゃ、漁りましょ?」


 たしかに考えてみればベルギが逃げるのは悪いことじゃなかった。


 俺が前にいないと矢もまともに当たらないだろうし、仕方がない。


 俺の基本的な戦闘スタイルはタンク。そして、補助魔法だ。言い忘れていたが俺は本当に“ガチガチ”の鎧を来てこの場所に居る。マジで蒸し暑すぎて死にそうだった。

 でも、大丈夫だ。俺は今日の朝に山盛りのアイスクリームを食べてきた。業務用のやつが我が家にあるのだ。あと、一応暑さ対策の肌着を着てきている『冷たい技術』と呼ばれているそれを着ていた。


「うわぁ、結構“ボロボロ”だなぁ。これどんぐらいになるかなぁ」


「オモチャにされてはったからなぁ。尻尾も潰れてしもうてからに」


「本命はゴリラかな。まぁ、とにかくとっとと漁ってさっさと帰ろう」


「せやね」


 まずは目の前にいるヒドラグの素材を収集する。


 しかし、やっぱりあんまり綺麗な物はなかった。


 鱗はどれも潰れてしまっていて、めぼしい物はない。


 まぁ、一応牙や爪は綺麗だけど、そもそもあんまり大きい個体じゃなかったから、小銭稼ぎくらいにしかならなそうだ。


「こっちは中々綺麗やね。ええんとちゃうの?」


「そうだな。アレ?ゴリラって食用の需要とかあったっけ?」


 モンスターの中には食用に使われるヤツもいたりする。


 しかし、基本的に家畜などで食は間に合っているので、本当に美味しいモンスターにしか需要はない。


 明らかにゴリラに需要はなさそうだったが、一応聞いてみた。


 ベルギは頭がいいからこういうのに詳しいのだ。


「ないんとちゃうかな。そもそもゴリラを食うなんてそんなけったいな人おらんやろ」


「それもそうか」


「覚えてないってことはないってことで間違いないやろ。そもそも僕、料亭の息子やで?」


「そっか」


 ベルギは料亭の息子で、割りとイイトコの坊っちゃんだ。


 そのはずなのに今はこんなことをしている。


 なんかあったんですかね?とか、考えてみたりして。


「毛皮硬いなぁ。こんなことしてたら血の臭いで別のモンスターが来ちゃうよ」


「僕はヒドラグの方をやっておくわ。そっちはよろしゅうね」


「はいはい。仕方ないねぇ、仕方がない子だねぇ」


「面白い人やね~」


 ゴリラの死体の処理は地味に大変だ。


 毛皮がガッツリ肉についているので剥がすのに手間がかかる。


 しかも、こっちはそれなりに綺麗なのでちゃんと気をつけながら剥ぎ取らないといけない。変なところに穴を空けたりしたら商品価値が下がってしまうのだ。

 それに比べるとアッチは楽だろうな。どっちにしろ汚いから雑にやってもあんまり怒られないし。


「はぁ……疲れたぁ……」


 普通の狩人はもっとたくさんの人数で狩りを行っているらしい。


 グループで数日、長いときには数年もダンジョンに籠っているらしい。


 人を雇っている分お金を稼がないといけないから大変なことも多いそうだ。


 モンスターを倒す係と剥ぎ取りをする係、その他にも見張りをしたりなんだったりをしたりで数十人グループになることもあると聞いた。そういうのはいろいろとムリだ。

 実力がある狩人とかだと傷を着けないように狩りをしたりもあるのだが、スカベンジャーの俺たちにはそういうノウハウとかなんて関係がない。

 楽な仕事と言えば楽な仕事だ。全然楽じゃないし、全然尊敬もされないけど。


「そっちはどう?終わりそう?」


「せやね。そんなに丁寧にやっても仕方ないし、“パッパッ”と終わらせてしまったわ」


「もうちょっとだけ待っててくれ……うわぁ、ここのカーブがめんどい……」


「ガンバレーー」


 ちなみにスカベンジャーっていうのはハゲワシなどの死体を食べる動物のことだ。


 そこから転じて俺たちみたいな狩人はスカベンジャーと呼ばれている。


 結構蔑称的な風味もある言葉なんだけど、その通りすぎてあんまり効いてない。

 だってやってることは本当にハゲワシとか、ハイエナというそういう系の動物と一緒だしな。これでも一応生活は十分に送れるくらいのお金は稼げてるし、まぁ、そんな悪いもんでもないよ。


「ふぅーーー。やっと終わったぁ」


「おつかれさん。さぁ、帰りましょ」


「もう、汗が止まらねぇ……」


 そんなことを思いながら毛皮を剥がしていると無事に綺麗に剥がすことができた。


 ちなみに大人数系の狩人は死体を持って帰って、家とかで解体をするらしい。

 でも、俺たちは荷物になって仕方がないのでいつも現地で捌いていた。

 なんか、いいですよねー?俺たちもなんかそういうのいいなぁ。

 そんなことを思うときもあったが、まぁ、普通に今の生活には満足してた。


他にもたくさん同時連載してます!

もしよかったらみてみてね?

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