EP73
怒涛の勢いに足を取られそうになるが何とか持ちこたえる。
それに、何か引っかかる事も・・・。
「色々と言いたいことはあるけど一番は、俺が生きてるとなんだって?」
「だーかーら!審判者君っ!君が生きていると未来が大変なんだって。
・・・だってさ、おかしいと思わない?ただの人間だった君が悪魔や、天使や殺人鬼。
おまけに巨大なイカなんかと真っ向から恐れずに戦えているんだよ?」
「いや、でもそれはサタンからもらった”悪魔の力”のおかげで」
「ちーがーう!そうじゃない、勝ててる、勝ててないのお話じゃなくって。
そもそもそんな存在に対して立ち迎えてること自体がおかしいとおもわないのかい?って聞いてるの。
そんな現実、ただの勇気や蛮勇なんて言葉じゃ片付けられないと思うんだけど。ネ」
俺は目の前の死神の流す意味について行けず少しの間黙る。
ミカエルも同じ理由からなのか黙ってしまっている。
「だから。それがなんだって・・・」
「んー?でもさーでもさー、そこの天使サンは気づいてるみたいだけどね?
でも、それはそうだよね近くで見てたらおかしいと思うよね。だってさー、だってさァ。
君みたいな普通の、それこそ。”首落沙苗”みたいな快楽殺人鬼とは違う人間が天使だの悪魔だの言え人の形を模した存在を躊躇なく傷つけたり殺めたりなんかを、
出来るはずないよね?」
「・・・えぇ、そうね」
死神の問いに俺ではなくミカエルが答える。
「審判者君、君はね。悪魔の力が身体を巡った結果脳みそまで回っておかしくなってきてるんだよ。
君が今も生きていられるのがその証拠、サ。
近い未来、君は悪魔の力が完全に回りきったその体で完全に秩序を忘れ人の世を壊す存在となる。
ご主人様のあの悪魔と一緒にね。だから私は、
この先も続けてしまうであろう君の歴史をここで消さなきゃならない」
ノロりと鎌を持ち上げると死神、RIPGIRLは構える。
「今の私は歴史保全人だ。神様も許してくれる、正義は味方してくれている」
そう呟き、つまの行方をこちらに向けた死神はポケットから一つの硝子玉を取り出すと
片目を瞑り覗き込むと笑ってみせた。
「私、勝機の無い戦いはしない主義でね。・・・いくよ」
硝子玉を大事にポケットへ仕舞い直すと、途端にこちらへ向かって走り出し鎌を振りかざした。
俺へと向けられた鎌の刃は力強く地面にぶつかるとアホ程な威力で地面を抉ってみせた。
(穏便に済ます気はないみたいだな)
なら、戦うしかない。例え相手が死神だろうとこっちにはミカエルだっている。
まだ死神の実力を分かってない状況で油断するつもりはないが、引けを取らないはず。
だが、やる気に溢れた俺に対しミカエルは普段と違い血気な様子は見せておらず。
むしろ戦いを前にして戦乙女らしくない、何か迷ったような顔をしていた。
「ミカエルこんな時にどうしたんだ?」
「・・・いえ、なんでもないわ。それよりもアイツ相当手練れみたいね、気を付けていきましょう」
「・・・とはいえ」
ミカエルも体勢を整えてこれから戦いが始める瞬間、死神は鎌から手を離し地面に落とすと、
嫌な金属音を響かせると呟いた。
「まだ日が落ちていない中こんないつ人目が付くか分からない所で
ドンバチ起こすのは危険かもしれませんね」
死神は再びポケットに手を突っ込むと先ほどとは少し違うまるで鏡を丸めた様な、
そんな硝子玉を手に取りいきなり宙に投げた。
「贋作塗映世界」
そう死神が呟いた瞬間に硝子玉は地面に落ち砕け散り途端に閃光が弾けた。
目潰しかとも思い焦ったが、視界が戻った時死神はまだ鎌を持っていなかった。
だが辺りは変わり鏡で覆われた趣味の悪い空間へと移り変わっていた。
「ここは、私の世界だから。
他の関係の無い人間が巻き込まれることも、発見されることもないよ」
そう説明だけすると、死神は再び鎌を持ち直し構えた。
肝心な時にはしっかりと武装解除しこちらに歩み寄ってきてくれるところを感じるに、
ひょっとしたら話し合いも可能なのでは?と思えてくる。
だが、考えは変わらないようで死神はこちらに二度鎌を振りかざし襲い掛かる。
引き付け、引き付け、引き付けた所で大きく後ろに避け鎌を回避する。
鎌なんてリーチこそ長いが、外してしまえばその分次の攻撃をするまでに時間がかかるはず。
実際先ほど地面を抉った際ももたもたとした印象を受けた。
だからあの降りている鎌が完全に降りたら、今度はこちらの番が回る。
そう思っていたのだが、目の前の現実は少し違った。
予想では鎌が地面に完全に振りかざされれば鈍い音がなり、鎌が止まると思ったのだが。
鎌は地面にぶつかるどころか勢いそのまま地面、正確には地面の役割を担っている足元の鏡に
飲み込まれてしまい。しまいには死神の手から鎌は完全に離れていた。
嫌な予感がするが考えが追いつかない。
(そりゃ、嫌な予感の一つもするさ。
絶対に目を離しちゃいけない相手の武器の鎌が捉えられないだから)
と、突然に。「圭吾上ッ!」と叫ぶミカエルの声が聞こえた。
反応ままに上を向いた時には既に天井、というよりも空の役割を担っていた鏡から
先ほど消えた鎌が飛び出してきて。一瞬のうちに俺の頭に抉り刺さった。
その場に倒れた俺の目には地面の鏡に反射した、血まみれの俺の姿が映っていた。




