EP72 死神 RIP GIRL
「死神の噂?」
「えぇ、そうよ。最近この辺り、いえ。正確には少し前からここから少し離れた地域で
話題になっていた同一犯と思われる複数の殺人事件の現場が、
ここ最近この地域の周辺に他の地域よりも長い間発生し続けてるという話よ。
そしてその殺人事件を目撃したという目撃者が話した「鎌を持っていた」という証言から
この事件は死神の仕業だなんて言われて広まったの」
昼休み、俺はいつもの踊り場でミカエルから受け取った手作りの弁当を食べながら
その話を聞いていた。
「でも、なんで同じ人物だって分かるんだ?」
「全ての事件に二つの大きな共通点があるからよ。
1つ目は、大きな鎌の様な物で腹部等を切り裂かれた大きな痕が被害者に残っていたこと。
2つ目は、被害者の身体のどこかに必ずキスマークが残されているの。
このことから噂の中ではこれら全ての事件が死神の仕業じゃないかと言われているのよ。
というか圭吾、貴方ニュースとか観ないの?
最近の夕方のニュースこの辺りの地域含めこの死神のニュースで持ち切りなのよ?」
「最近はもうテレビを見ることもめっきり減ったからなぁ・・・。サタンは知ってたか?」
俺やミカエルよりも数段上の階段に腰を掛けジャムパンとアンパンをパック牛乳と共に頬張る
サタンへ話しを振ってみる。
「モグモグ・・・んぐっ、ぷはぁ!いや、オレもその事件は今初めて知ったな」
「ま、そうだよな。俺が知らない情報をサタンが知っているわけないよな」
「でも、事件の話は初めて聞いたけど。その犯人、心当たりがあるぞ!」
その言葉に「まさか」と箸を止める俺に対して、
ミカエルは何か察した様な顔で上の段のサタンを見つめた。
そして俺も数秒遅れて気が付きミカエルと一緒に呟いた。
「そうか犯人は・・・」「「悪魔か」」
なるほど、確かにそれならこの街だけ他の地域に比べて異常なまでに犯人区域が移動せず
まるで台風のように迷惑な程犯人が滞在し続けるのも理解出来る。
犯人である悪魔はこの街で俺を探しているのだ。
ーーーーー
「それにしても、貴方を探すのは良いとして。
どうしてそこまで関係のない一般人にも被害を及ばすのかしら?」
放課後、例の死神の狙いが俺なら護衛をすると自ら買って出てくれたミカエルと共に
学校から自宅へと向かっている最中ミカエルがふと、そう呟いた。
「首落沙苗、アイツみたいにただ単に殺しが好きなだけなんじゃないのか?」
「だとしたら今度は事件発生の頻度が低すぎるのよ。
悪魔程の存在なら毎日殺しをしてもおかしくないはずなのに、
事件の報道を見る限りそういうわけでもないみたいだし・・・」
「何か狙いがあるのかもな・・・ってなんだあれ?」
ふと、今視界の端の裏路地に向かって何か半月の様な物が入って行くのが見えた。
ミカエルの表情を伺おうと見てみるとミカエルの背からいつの間にか翼が生えていた。
ーーーーー
背後を取るのに足音で気づかれないかと不安だったが、
フードを被り鎌を持った死神はやたらと大股で軽快なスキップで移動をしていて、
自分の履いている厚底ブーツから鳴る鼻歌のせいで聞こえない様子だった。
すぐさまミカエルが死神の背後に付き短剣を静かに構えて短剣を死神の首元に向かって振りかざす。
ただ、少し振りかざした位置から死神の元まで距離があったみたいでナイフを撫でる風の
音に反応した死神は「おぉとっ!?」と間抜けな声と共に倒れ込んだ。
「チっ」
奇襲に失敗したミカエルは舌打ちを残し反撃を恐れすぐに後ろへと下がる、
だが死神は受け身とりでんぐり返しをした後そのまま四つ這いのまま何故か立ち上がらない。
「ど、どうしたんだアイツ?あのままじゃ隙だらけじゃないか?」
「待ちなさい、圭吾。もしかしたら誘い込みかも近づいたら何かが起こるかもしれないわ」
そ、そんな恐ろしい罠の様な事を!?と恐怖したのもつかの間死神の方から何か声が聞こえた。
「・・・バー・・ちゃ・が・・わ・・・ハンバ・・・ガーちゃんが・・・」
何を言ってるんだとよくよく様子を見てみると、
死神の倒れ込んだ付近には袋から飛び出た食べかけのハンバーガーが地面に転がり
見るも無残な様になってしまっていた。
そしてそのハンバーガーを見つめながら死神はポロポロと泣いていた。
「あ”ぁ!私のハンバーガーちゃんがー!!!まだ食べてる途中だったのに!!!」
「は、ハンバーガー?」
思ぬ展開にさっきまで死神に恐ろしい顔を向けていたミカエルも思わず疑問を口にして
そのまま開けた口を閉じれずにいた。
が、死神サイドは対してこちらに向かって喋り出す。
「そうだよ!私がこっちの世界で見つけた一番の大好物ハンバーガーちゃん!
貴方のせいで落っことしちゃったじゃない!」
「え、え、えぇ・・・」
恐ろし姿を想像していた死神だったのだがフードが取れた今、
その正体はハンバーガー大好きな女の子だった。
「もう、貴方たちどうやって責任を取ってくれるつもり・・・って!?
もしかしたら、もしかしなくても。貴方聖戦の審判者の人間じゃない!・・・ラッキー☆ミ」
(あれ・・・様子が)
さっきまで可愛らしい泣き顔だったのに今の彼女の笑顔は何だか嫌な程背筋がゾッとする。
それに大好物だと言い膝をつくほど悲しんだはずの食べかけのハンバーガーを、
彼女はその場で踏みにじった。
「・・・改めまして、やぁ!やぁ!審判者君。私の名前はRIPGIRL。
本来なら人の寿命を待ち命を刈り取る死神の中でもちょっぴりせっかちな性格なんだ、
だからこっちから積極的にお迎えに上がったんだ。そんな私はハンバーガー大好きな美少女死神サ!」
「滅茶苦茶立ち悪いじゃねぇか!」
「んーっ、まぁ。許してよ、これ以上君が生きてるとこの世界の将来の危険が危ないんだ!
ハンバーガー存続の為!未来の為!ここで私に素直に殺されてよ。ネ!
死んでくれたら私のキスマーク、サービスしてあげるからさ!」




