EP68
「おぅおぅ、ねぇちゃん。こーんなうす暗い路地に一人で来ちゃ危ないぜ」
「ひ、ひぃ~・・・。な、なんなんですかあなたは」
「何って?見てわかるだろヤンキーだよ。
んで、これはカツアゲだ。ほら、痛い目に会いたくなければ素直に金出しな」
「自分のことをヤンキーなんて言うヤンキーなんて私知らないんですけどぉ・・・」
「う、うるせぇな!いいから黙って金置いて俺の縄張りからとっとと立ちさりやがれ!」
「そんなぁ、お金なんて持ってないです。許してください」
「『許してください』って言われて許すヤンキーが居るわけねぇだろ!」
「うち、両親が居なくて私普段毎日アルバイトをして弟を養う分のお金を稼いでて。
今日初めて『友達』と放課後遊びにこの街に来てるんです。だから見逃してください・・・」
「くっ・・・泣き落としか?き、効かねえよ!まぁ、でも可哀想だから50円で許してやるよ」
(50円って子供の小遣いか。効いてるんじゃないの、泣き落としが)
奈乃先輩と不良少女のやり取りをしばらく見ていたが初めはすぐにでも割って入ろうかと思っていたが
どうやらその必要はなさそうに見えた。
「ほら、分かったらとっとと50円置いてきな」
「む、無理です!私にとっては50円でも大金何です!!!」
早く渡せばいいものの奈乃先輩は50円の為にぐずり始めた。
(せっかく穏便に事が終わりそうだったのに、先輩何をしてるのよ)
「面倒くせぇな!痛い目会いたくないだろ?後、10秒以内に出すつもりが無さそうなら・・・」
不良少女は拳をギリギリと握りしめその拳を奈乃先輩に向ける。
「その可愛い顔にデッカイ痣を作る羽目になるぜ・・・」
奈乃先輩はその言葉を聞き両手で顔を覆い隠す。
「へっ、やっぱり恐いんじゃねぇかよ。な?嫌だろ。分かったらほら早く出せ」
「か、可愛いだなんて・・・」
奈乃先輩の手の隙間から見えた頬は赤く染まっていた。
あの人、『可愛い』って言葉に反応して照れてるだけだ。
「な、なんなんだよ。さっきからお前・・・」
予想よりも自身のことを恐れてくれなくて初めと立場が逆転し今ではヤンキーの方が
恐怖に慄いていた。
だが、このままだと危ない気が・・・。
予想通り目の前の奈乃先輩が自分の思い通りにいかず更には不良少女視点、
自分の理解の範疇を越えてしまった結果不良少女は我慢の限界を迎え結果
握りしめていた拳を奈乃先輩に向かって振りかざした。
「な・・・!」
私が振りかざしたその拳を止めると不良少女は驚きと、
そして若干の恍惚の笑みの様な表情を混じらせていた様にも見えた。
不良少女はすぐに拳を戻すと後ずさる。
「何だよ、お仲間さんか?」
「・・・まぁ、一応『友達』ですので」
「美香ちゃん・・・!」
「おいおい、何だよこんな真昼間からイチャコラついてんじゃねぇぞ!」
「へぇ、こんな真昼間からカツアゲだなんて犯罪紛いのことをするのはいいのね」
「あ?喧嘩んのか、あ?」
私の返答に分かりやすくキレてみせると不良少女は私をギリリと睨みつける。
「・・・いいわ。ヤりましょう」
私は奈乃先輩を一旦路地から避難させた後答える。
「・・・乗ったな」
「?」
「俺にはただ一つ、普通の奴には無い才能ってのがあんだ。
それが喧嘩に絶対に負けない、喧嘩に関しての天性の才があるんだよ。
お前は今俺の喧嘩に『やる』と応えた、つまりお前は・・・もう、俺には勝てないんだよ!!!」
不良少女の言うその才能、というより特殊な変異から来る能力の実態が現場を見た事が無いので
イマイチよくわからないがどうやら出会ってからずっと彼女が自身満々なのはその能力の恩恵で
今までどんなに屈強な相手にも負けたことが無いからだろう。
だけど、彼女は一つ勘違いをしている。
「おらぁ!吹っ飛べぇ!!!」
彼女は喧嘩のつもりなのだろう、だが私にとってはそんな生温いモノじゃなかった。
幸いここは路地裏、一目にもつかないだろう。
辺りを確認すると私は慣れた手つきで短剣を取り出すと向かって来る不良少女に向ける。
「おまっ!?それって!」
彼女は勘違いをしている、私は喧嘩をやろうだなんて一言も言ってない私にとってのさっきの返答を
文字起こし出来るのならその表記は『殺りましょう』。
つまりはこの場で成立したのは喧嘩でなく、殺し合いだ。
短剣を見て怯えた表情のまま止まらない足を必死に抑える不良少女に私は短剣を振りかざした。




