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EP65

「お待たせ!こっちが、ナポリタンとメロンソーダ。

それでこれが苺のショートケーキとアイスコーヒーのブラックだよ!」

料理を持った奈乃が私と数多、それぞれの前へと慣れた手つきで配膳する。

私の前にはイラストの通り美味しそうな苺のショートケーキとアイスコーヒーが置かれた。

アイスコーヒーをテーブルに置いた際に鳴った氷の音に反応がして私も喉を鳴らす、

放課後辺りから何も飲んでいなかったおかげか喉がカラカラなのだ。


数多の方には綺麗な色をした緑のメロンソーダとまだ湯気が感じ取れるくらいできたての

ナポリタンが、粉チーズの入った筒と共にテーブルの上へと置かれていく。

メロンソーダは、まぁ市販のモノなのだろうがもう一方のナポリタンからは

メロンソーダとは違ってこっちは出来合いでは無く手作り、

厨房に居るであろう作り手のこだわりが伝わってくる。

香りを伝ってこっちまでその気概が伝わって来て少し興味が湧いてくる。

私はナポリタンからの誘惑を断ち切る様にアイスコーヒーを香りと共に飲み込んだ。


「私、このお店長いんですけど閉店前なのにお店のソファーに座るの初めてだから

なんだかヘンな感じがしちゃうよ。お仕事中に休んじゃって良いのかなぁ?」

「店主さんには許可を貰っているんでしょう?」

「そうだけど・・・」

「そこのお客さんが言ってる通り俺が良いって言ってんだからそれ以上言及するな」

許可を貰って尚業務中の食事に申し訳なさを感じている奈乃に厨房の奥で

先ほどで私たちの料理を用意していた店主の男性がホールへと出て釘を刺した。

「そうですけど、労働で基準な法とかそういうのは大丈夫なんですか?」

「お前が中学生の頃からこき使って来た俺が今更そんなモノ気にするわけないだろ」

「そ、そこはありがたく思ってますけど・・・ちょっとは気にして下さいよ!」

「でもまぁ、たまには友達と放課後を楽しむのもいいんじゃないか」

普段から働きっぱなしであろう奈乃を気遣う素振りを見せた店主は、

少し恥ずかしそうに足早に厨房へと戻ていった。

(今の店内に私たち以外には客は居ないのに、分かりすいのね)

恐らく家庭の事情で普段から働き詰めな奈乃のことを気遣いたくて仕方なかったのだろう。


奈乃は厨房の方へ向け申し訳ない顔をしつつ

手元のカフェオレを啜ると表情を一転させ「美味しい」と笑った。

「そうだ、美香ちゃん。ここのケーキもね店主さんこだわりの一品なんだ!食べてみてー」

その言葉にケーキの存在を思い出し食べようとフォークを持ったところで奈乃が私に向けて

何かを向けて来た。

「・・・奈乃?私、貴方と同じものを頼んでいるわ」

「え、うん。知ってるよ!オーダー取ったの私だもん」

「ならなんで貴方、自分の分のケーキをフォークで刺して私へ食べさせようとしているの?」

「あ、ごめんごめん。私、友達付き合いもだけど後輩ちゃんとの付き合いもしたことなかったからさ。

初めて出来た後輩ちゃんのお世話をしたくなちゃった」

敵意を向けられるよりよっぽどマシだが、

一見すると後輩の世話というよりも子供の世話に近い様な気がする。

「美香君が要らないと言うのなら僕へくれないか」

「もちろん良いよ。はーい、数多ちゃん。あーんして」

「あーん」

「・・・」

「ん?美香君、何か言いたそうな目をしてどうしたんだい?」

「いえ、ただ。

同じ歳をした人間でもここまでも差が生まれることもあるのねと、ふと思っただけよ」

「流石に、天才の私と比べるのはいくら何でも奈乃君が可哀想じゃないかい?」

「・・・そうね、可哀想ね」


「えぇ!数多ちゃんって天才なの?」

「あぁ!」

「へぇー数多ちゃんすっごーい!」

「キシシ!」

疑うことを知らない様な目をした奈乃に良い調子に褒められた数多は

とんでもないぐらい頬を緩め大笑いをしてみせた。

「奈乃貴方愛想がよくて接客向きだなとは初めて目にした時から思ってはいたけど、相当ね。

喫茶店よりもキャバクラなんかの方が沢山稼げて向いてるんじゃないの?」


本気で向いていると思い口にしたのだが、口にしてからすぐに自分で水商売が向いている

なんて相手の面を見て言うのはかなりの失言だなと思う。

だが、奈乃は一切の曇りも見せない快晴の青空の様な笑顔で「本当!ありがとう!」なんて笑った。

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