EP6
キンコーンカンコーン♪
学校中にお昼ご飯の時間を知らせるチャイムが鳴り一斉に生徒たちが大移動を始める。
弁当や既製品を家から持参している生徒たちは教室内の机を動かしくっつけ合い
談笑をしながら食事の準備を進め。
持参をしてきていない生徒は
昨日の校内案内の際に教えてもらった学食へとぞろぞろと向かい始めていた。
そんな彼らを見ながら俺は自分の机に座ったまま今日一日での利き手が使えない事から生じた
不便さに疲れを感じていた。
色々とあるがまずクラスメイトへの説明がとんでもなく面倒くさい。
当然そのまま「昨日放課後境内さんに握手されて骨折しちゃった」なんて言えるわけなく
ソレっぽい嘘でごまかす必要があり変な精神的な労力がかかる。
そして利き手がギプスで塞がれているため教科書が一人で捲れずこれもまたかなりのストレスだった。
そのため隣の席のサタンに頼るしかなかなく頼んだところサタンは快諾してくれたのだが、
「・・・ケイゴ。教科書一緒に見るんだったらもっと近寄らなきゃ見えないだろ」
「あ、ああ。そうだな・・・って!お前なんでそんなに引っ付いてくるんだよ!」
「だから近づかないと二人一緒に見れないだろ遠慮するなよ、ほらほら」
サタンが善意を寄せてくれるがその善意よりも大きいサタン胸が当たる。
(くっ、利き手が使えないっていうのに・・・)
これじゃあ家に帰っても発散が出来ないくて生殺しじゃないか!
なんてことが続き午前中の時点で俺はかなり参ってしまっていたのだ。
(あぁ、色々と疲れた)
「ケイゴ今のままだと一人でご飯も食べれないだろ?手伝ってやるから一緒に移動しようぜ」
四時限目の途中から眠りに落ちチャイムの音に起こされたサタンが俺を気遣い昼飯に誘いをしてきた。
正直滅茶苦茶ありがたいのだがこれ以上煩悩を刺激されると困るので断ることにするとしよう。
「い、いや流石にこれ以上お前に迷惑をかけるわけにもいかないし、とりあえず今日は一人で食べるよ」
「まぁオマエがそういうなら別にいいか。また何か困ったら頼ってくれよな!」
そうしてサタンのおっぱいから逃げることに成功した俺は、
購買で購入した菓子パンと缶コーヒーを持って、
人目のつかない階段に腰を下ろし食事の準備を整えていた。
人が寄り付かない=埃が積もっているわけなのでせめて自分が尻を付ける場所だけは綺麗にしようと
口に空気を溜めて息でなんとか清潔を取り戻そうとしていた。
「ふーふー・・・、ふぅー!」
「圭吾・・・貴方こんな所に来たと思ったら何をしているの貴方?正直滑稽よ、今のその様」
「うわぁ!・・・ってミカエルか」
こんな人に見られたら馬鹿にされそうな光景をよりにもよってミカエルに見られてしまった。
「ちょ、その名前で呼ぶのはやめて頂戴。他の人間に聞かれたら貴方なんて弁明するつもりなの?」
「じゃあ、ミカ」
「・・・下の名前で呼び捨てなのが引っかかるけど、まぁ良いわ。
それでこんな所で何をするつもりなのよ」
「ただの昼飯だよ」
「アイツは一緒じゃないの?」
「アイツ・・・あぁサタンか。
昼飯に誘ってはくれたんだけど頼りっぱなしなのも申し訳ないからお断りさせてもらったよ」
「ふーん、それでその結果がこんな所でそんな質素な食事なのね」
「なんだよ俺が何食べようがお前には関係無いんだし別に何食ったていいだろ」
「関係あるわよ。貴方昨日ゼウス様から直接与えられた使命を軽く見てるんじゃない?
貴方に天使と悪魔それぞれの種の存続がかかっているの」
「そうかもしれないけど俺からしたら現実離れしすぎてて、実感が沸かないんだよ」
「はぁ、本当ダメな奴ね貴方。
ま、卒業の日まで生きてくれればいいから早死にしたければその翌日以降にしてね?
それまでに死なれちゃ困るけど」
本当に天使なのか?コイツ。
「ん、それは?」
「私の今日のお昼ご飯よ」
意外や意外ミカエルの昼ご飯は手作りのお弁当だった。
よくある楕円形の弁当箱に色とりどりの食材が詰め込まれており美味しそうな仕上がりになっている。
「ほら、とっと口を開けなさい」
「え?」
いきなりミカエルが自身の弁当箱からおかずを摘まみ上げ「あーん」と口を開けるよう促して来た。
展開がいきなり過ぎて、これが読み進めてる最中の漫画や小説だったら、
1~2ページほど飛ばしてしまったと思い、読み返すだろう。
「分けてくれるのか?」
「何言ってるのよ。そんな貧相な偏った食事ばかり摂られて早々に逝かれたら
この聖戦の決着がつかないじゃない。だから・・・仕方なくよ」
なるほど。決して俺の為ではなく自分たちの種の為にってことか。
けど箸でつまみ上げられている野菜の肉巻きはとても美味しそうだ。
「それじゃあお言葉に甘えて、いただきます」
身体を少しミカエルに寄せ口で箸を迎え入れる、これは・・・。
「・・・美味しい」
「当然よ」
肉巻きに使われているお肉は薄いはずなのに何故か驚くほどジューシーで、
中に巻かれている野菜には火がしっかりと取っているのにシャキッとした触感が残っている。
何より冷めているのにビックリするほど美味しい!
母さんには悪いがこれは実家に居た頃に出ていた弁当にダブルスコア付けるくらいの出来栄えだ。
「何呆けてるの?お昼ご飯の時間だって有限なんだから早く次に食べるものを決めなさいよ」
そう言うミカエルの弁当箱にはまだまだ美味しそうな料理が詰まっていた。
何よりミカエルは胸が小さいから当たる心配がなくて安心するな。




