EP59
ミカエルに連れ来れられた場所は家かなり離れた場所に位置する森にしてはやけに開けた場所だった。
お姫抱っこされている中ふとこれから着地する山の周辺は鉄格子で囲われており、
その鉄格子には等間隔で看板が立ってる事に気が付いた。
看板にはここがソーラーパネル設置の為に開発されている場所であり、
立ち入り禁止の旨の説明書きがされ危険であることを伝える
「△」と「!」を足したあの黄色の看板まで立って居た。
俺はその立ち入り禁止の文字を目に入れながらその地に足を付けた。
「ここなら、他にも迷惑掛けないんじゃないかしら」
この場所を選んだのもどうやらミカエルなりの気遣いらしい。
「気遣いは立派なんだが、それが出来るなら家の窓のことも気遣ってあげて欲しかったよ」
「貴方ねぇ。あの状況で私に丁寧に窓のロックを外して窓を開けてから飛び出せって言いたいの?
そんなことしてたら今頃あの家でドンパチ起こってたわよ?」
ぐっ・・・確かに、それもそうだ。
何より窓を割ってでも突然家を飛び出したから助かったこともあり、
俺はその件について何も言えなくなってしまった。
「こんな所まで来るなんて、手間を掛けさせないでください」
俺達を追いかけて来たザラが思っていたよりも早くこちらに追いつき追従する形で着地した。
俺は片翼を生やし、ミカエルは先ほどの家とは違う広い空間で戦え為
短剣ではなく槍を繰り出しザラへと槍の先端を仕向ける。
だが、誰一人として動こうとせず体感5分ほどその状況が続いた。
正直俺はこの中で言えば一番戦闘に慣れていないのでミカエルかザラに動いてほしいのだけども
二人は動こうとしない。
これはいわゆる達人の間合い的な、「先に動いた方の負け」というモノなのだろうか?
そんな空気に気圧されているとミカエルが小声でこちらに囁いた。
(ね、ねぇ。アイツ動かないけど?どうする?こっちから行くべき?)
(え、相手の動くのをジッと待てたんじゃなくて?)
(いや、アイツが動かな過ぎてタイミング見失ってただけよ)
「ん?お二人共、来ないのですか?待ちくたびれましたよ、私」
どうやらただ二人共待ってただけだったようだ。
このままじゃ埒が明かないし取りあえず俺が戦いの火蓋を切ることにした。
一先ず、ザラへと真っ向から走って向かいザラの顔に拳を放とうと近づく。
だがザラはまだ動こうとしない、腰に携えている剣を抜こうとしないのだ。
俺が飛び掛かり拳を引き勢いをつけこれから当ようとしている今もザラは動かず立ったまま。
(このままじゃ素直に当たるぞ、いいのか?)
そんなことを思いつつも俺の拳はザラへと向かって突き出され、
ザラの顔面へと当たる・・・その直前、突如強風が吹きザラも顔に俺の拳が当たるよりも先に。
俺の顔に何かが当たり俺はその衝撃で吹っ飛んだ。
「痛ッだぁ!!!」
吹っ飛んでいく最中に見たザラはビクとも動いていない様子だと言うのに、俺は何に殴られたのだ?
地面に着地した後も体中に泥を付けながら転がりながら吹っ飛んだ。
何かに殴られた顔の箇所を撫でながら立ち上がり辺りを見渡すと
付近に先ほどまで鉄格子に引っ付いていた注意書きの看板が転がっているのが目に入る。
「け、圭吾!大丈夫!?」
「いてて・・・大丈夫だけど一体何が起こったんだ?」
俺の元へミカエルが駆け寄り先ほど起こったことを理解する。
「貴方、突然吹いた強風の勢いで外れた看板に顔を殴られて吹っ飛んだのよ」
どうやら俺を襲った正体は不幸にも強風に煽られた看板のようだ。
「貴方はそこで一度休んでなさい」
ミカエルはそういうと交代でザラへと向かって槍を構えながら向かって走った。
だが今度はザラの後ろに生えていた木が突然倒れミカエルへと向かって倒れた。
ミカエルは槍を横向きに持ち替え持ちての部分で何とか防御をしたがその隙を
見逃さずザラはミカエルの腹部に鋭く一閃を入れた。
腹部に大きな横向きのパックリ裂けた傷を作ったミカエルはその場に無防備にも膝から崩れ落ち。
ザラはそんなミカエルを勢い蹴り飛ばした。
そうして俺達二人はあっけもなく戦いが始まってすぐピンチに立たされていた。
(にしても、一体何が起こっているんだ?)
先ほどから立て続けに起こる現象に疑問を浮かべていると、
その答え合わせをまるで自慢話をするようにザラが楽しそうに話し始めた。
「無駄です。私は祝福を受けた正しさを持った存在なのですから」
「・・・はぁ、はぁ。貴方なんかが、祝福を?」
蹴り飛ばされてから痛みに悶えるのに必死で言葉一つ発していなかったミカエルだが、
ザラの発言が気に入らない様で苦し紛れに疑問をぶつけた。
だが、ザラはそんなことなんか気にはならない様子。
まるで自分の中で揺るがない確証を持っていると言わんばかりに。
「えぇ、そうです。その証拠に先ほどから私は幸運に守られているじゃないですか」
「・・・幸運?」
「はい。先ほど貴方へと向かって突然飛んだ看板も、私をかばう為に倒れた木も。
全て偶然に起きたワケではなく。私が神に祝福され幸運に守られているからなのです!」
恐らくこれまでも幾度の戦いを幸運で乗り越えて来たらしい。
ザラの目に映る景色は既に現在ではなく。
この後に待ち構えている、神に約束された勝利を映し見入っていた。




