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EP46 VS首落早苗終

倒れた後もしばらく緊張が続いたがその緊張も首落が一向に立ち上がらない事で解けた。

殺人鬼との戦いに勝ったのだ。

「す、すすす凄いです!圭吾様ぁ!」

「おわっ」

勝利の喜びからラトが涙ながらに抱き着いてきてくれたが、

まだ問題は残っている。


「心大丈夫か!」

俺達よりも先に首落に襲われ目玉を抜かれてしまって倒れていた心に駆け寄った。

「・・・この、声はお兄ちゃん?」

「あ、あぁ!俺だ!」

「・・・ごめんねお兄ちゃん。いつかお兄ちゃんの力になって、

お兄ちゃんを守ってあげたかったのに・・・私、チカラ無くなっちゃった・・・」

心は涙こそ流せなくなってしまっていたが、

その声は少女らしからず悔しそうな感情を込め呻き声の様に泣いていた。


「そ、そういえばレフとマナの二人は!?」

しばらくラトも心の傍に寄り添っていたが、心と共に俺達よりも先に襲われていた

ラトの二人の姉妹レフとマナが居ると首落が言っていた工場の奥地へと走っていた。

心の方も泣いて体力を使い果たしてしまったのか眠ってしまっていた。


心を一度ゆっくりと降ろすと、今度は倒れているサタンの元へ駆け寄り

その肩を揺すった。

「はっ!ケイゴ!あれ?あの斧女は!?」

「アイツならあそこに居るよ。終わったんだ戦いが」

俺の言葉にサタンは緊張した顔を緩め首落が倒れている方角を見ると

再び顔を強張らし、

「まだだ、アイツはまだ死んでないぞ!」と大声で叫んだ。


その声に反応し俺も首落へと振り向くと、首落の身体が浮かび上がっていた。

「な、なんだあれ、手品か何かか?」

「あれはアイツの能力の超能力、サイコキネシスだ」

だが今度は斧ではなく首落本人の身体が横たわったまま浮かび上がっており、

首落は喋りこそしなかったがサイコキネシスで首をこちらに向けると、

睨んだ後に、横たわった状態で浮いているという、

まるでギャグマンガの一コマにありそうなシュールな姿で

工場を物凄い速さで出て行った。

結果として、問題は残ったままだが一先ずこの戦いには勝利したのだった。


首落が逃走してすぐに今度は奥からボロボロの姿のレフとマナを両肩に背負った

ラトが工場の奥地から戻ってきた。

「け、圭吾様~。何とか二人共無事だったみたいですぅ」

一番最後まで確認が出来ていなかった姉妹二人の生存を確認できたことでラトの

顔は涙と鼻水でグズグズになっていた。


「良かった、お二人を助けるのが遅くなって申し訳ない・・・」

「何言ってんのさ・・・むしろ謝るのはこっちだよ。ご主人の容態は?」

「そうです、マナの言う通り圭吾様やサタン様にはむしろ感謝してもしきれません」

「まぁ、でも殺人鬼には結局逃げられちゃったけどね。それと心の方なんだけど・・・」

「え、う、噓ですよね圭吾様!まさか、息を・・・?」

「違うんだ、息はしてるそれはさっき確認した。

勿論ゆっくりとしてられる程容態も良くはないが、それよりも問題は・・・」


心の姿を見てレフとマナの二人は膝から崩れ落ちた。

自分たちの力不足でまだ幼く可愛いらしい主の両目が抉られ、

見るも無残な姿だったのだからそれも無理はない。

二人は夜中の野良犬の様にその後もしばらく大きな鳴き声を誰も居ない夜の工場に響かせた。


ーーーーー


あの斧を持った殺人鬼、首落沙苗との戦いから一か月程経った。

俺達学生たちにはその一か月の時の流れにはかなりの大きな意味がある。

もう少しで夏休みに入るのだ。


そんな夏目前の暑いカンカン照りの中、俺は久しぶりにあの高級住宅街へと向かって歩いていた。

インターホンを鳴らししばらくすると、

ドアが開き俺は久しぶりに見るその姿、心の立っている姿に再会早々感動していた。


「ご主人様にご客人が来られています」

「え、誰だろう・・・?」

感動の再会といってもまだそれは一方的なものだった。

心には俺が視えていないのだから。

「ご主人がずっと会いたがってたあの人ですよ!」

「け、けけけ圭吾様お久しぶりですぅ・・・」

「あぁ、ラトも久しぶり」

俺の声を聞いた瞬間目の前心が反応した。


「え、お兄ちゃん!お兄ちゃん来てくれたの!?」

相当喜んでくれているみたいで心は玄関まで引率してくれていた

レフの手を離しよろよろと何にも捕まらず補助もなしにこちらへと向かって来た。

「って、ご、ご主人?危ないよ!」

マナの忠告を気にしない心は予想通り大きな玄関を歩きこちらに向かい俺の元にたどり着く前に

大きくよろけ身体を前へと倒した。

俺は倒れながらこちらに向かって来る心をそのままハグをする形で受け止めた。


「よっと・・・」

「あ、ありがとうお兄ちゃん」

「大丈夫、大丈夫。それに心は軽いしな。

むしろ困ったときはもっと杖代わりに抱き着いて来てもらって構わないぞ」

「むぅ・・・私はお兄ちゃんからハグしてほしいのに!」

頬を膨らませながら心は可愛く怒る。どうやら様子を見る限り大分立ち直れているみたいだ。


あの首落との戦いの夜からしばらくメイドのケルベロス三姉妹づてから聞いていた話によると

かなり荒んでいたらしくあの夜から笑うことも一人で歩こうともしなかったみたいだったが。

聞いてた話よりも自体が良い方向に進んでいて安心していると耳元でコッソリと

ラトが教えてくれた。

「じ、じ実はですね・・・?

圭吾様が来られた今さっきまで心様、一回も笑ってくれなかったんですぅ。

でも、来客者が圭吾様だと耳に入れた瞬間やっと笑顔になってくれたんです・・・。

あ、あああ、ありがとうございます・・・」


「ね、ねぇお兄ちゃん・・・もし迷惑じゃなかったらなんだけどね。

この後、一緒に散歩に行きたいんだけどいいかな?」

心の言葉にケルベロス三姉妹は驚きと感動の声を上げた。

どうやら退院後はずっと家に引きこもりっぱなしだったみたいだ。

「勿論だ」

「やったー!」

危なっかしくぴょんぴょんと跳ねる心は、

すぐにケルベロス三姉妹と共に久しぶりの外出に向けた身支度をウキウキで始め。

その後の散歩の最中心の手はずっと俺の手を握り続け離さなかった。

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