EP39
取り合えずラトにはリビングのちゃぶ台の前に腰を下ろしてもらった。
押しかけてきた形とはいえ客人なのでお茶の一つは出さなければ失礼だろう。
「え?ちょちょちょちょちょ!?圭吾様なななななにを!?」
俺が食器棚から人数分のコップを準備している後ろ姿を見るやすぐに
ラトは大声で驚き立ち上がった。
「お茶の準備だけど」
「そそっそそそそんな!?な、なりません!」
「そうは言たって、客人なんだし」
「圭吾様ぁ・・・その気遣いは大変にご立派ですが、
私の事なんかは客人として扱ってもらわなくて大大大丈夫です。
なにせ私は主に使える立場の存在ですから」
「そうは言ってもお前は俺にじゃなくて心に使えてるだろ?」
「じ、実はっそ!そ!そのことで今日は来た!き、来て!こ、こ!越させていっ頂きましたぁ!!!」
「あー、ヘマしすぎて追い出されたんだ。それは残念だったね」
「ちが・・・くわないですけどー!何ですぐに言い切るんですかぁ!?」
「・・・イメージ」
「一番気づくやつじゃないですかぁ・・・」
「じゃあなにさ」
俺が早く核心に触れたく踏み込むとラトは深刻そうな顔をし俯いてしまった。
その表情に思わずこちらも釣られて口を閉じてしまう。
「じっ実はですね?私、今までお店に居た頃からとっ、殿方にしか奉仕をしたことがなかったので。
女性の主に尽くすことがあまりしっくりこなくて・・・。
そこで!圭吾様がよろしければわ、私にほ、ほほっ!ほぉ・・・。
奉仕をさせていただけないかと、こっこの度はご訪問をさせて頂いたきましたっ!
圭吾様のご命令であれば朝から夜まで下の世話までさせて頂きまっ!ます!!!」
「間に合ってます」
「な!?なんでなんですかぁー!?私、自分で言うのも図々しいですが美人ですよねー!?」
「図々しぃなぁ、おい!」
断られると思ってなかったのか動揺したラトは自分の顔に指を差し驚いたマヌケ面をした。
確かに、他二人含めケルベロス三人共顔は整っており当然ラトもなのだが。
別にこの世中顔がよければ何をしても許容されるわけではない、それは当然今の状況にも適用される。
そもそも一人暮らしを前提に借りた家に既にサタンと二人で住んで居るのに、
これ以上増やせる余裕はこの家には無い。
それにまだケルベロスの他二人、レフやマナならともかく
その中で唯一悪い意味でも一番騒がしいラトを受けれてあげられる心の余裕もない。
せっかく来てもらったがここは元の巣(心の家)にお帰り頂くとしよう。
「うん、やっぱりさっきも言ったけど間に合ってるかな・・・」
「・・・そ、そうですか。圭吾様に奉仕出来ないとなれば、
他に知人の殿方も居ないのでお店に戻るしかないですね。まぁそれもそれでありですが・・・」
(・・・・・)
「それでは、きゅっ!急に押しかけて申し訳ございませんでした・・・って圭吾様?
肩を急に捕まれてどうしたんですか?」
「分かった。うちで匿おう」
「っ!い!い!良いんですかぁ!?あぁ・・・ありがとうございます!」
もし、今この場でラトを受け入れずその結果ラトがお店に戻るとして
心が大人になった時一体どう思うだろうか。
悲しむだろうし、何よりそんな決断をした俺を軽蔑するかもしれない。
それに、そんなことを抜きにそんな場所へと戻ろうとしている女の子を止めないわけにはいかない。
俺は渋々ラトを家のメイドとして住まわせることになった。
ちなみにサタンは「そうか!こき使ってやるか!」と簡単に受け入れていた。
少し自分の心の中でサタンが嫌がってくれればそれを免罪符に断ってもいいかななんて
思っていたんだが、そう上手くはいかなかった。
そんなこんなで次の日からラトとの生活が始まった。
ーーーーー
「ん、んぅ・・・」
翌日は日曜日で休みだったが普段から朝早起きをし
一杯のコーヒーを飲むことを楽しみにしている為自然と目が覚めてしまう。
とはいえ俺もまだ学生ではある為前日の夜は当然夜更かしをすることもあり実際今も若干眠い。
そんなまどろみの中目を擦り立ち上がりリビングへと向かう。
ガサゴソ
今から向かう先である扉一枚を挟んだ先のリビングから物音がした。
(まさか泥棒か?だとしたらやたらと健康的だな)
勝手なイメージだが夜に空き巣をするイメージがあった為つい関心してしまった。
それに今の俺はサタンからもらった悪魔の力があるので、
その気になればただの空き巣に負ける事なんてない。
が、相手を興奮させるのは悪手であることに違いはないので、
俺はゆっくりと寝室のドアを開けた。
「ふへへ・・・け、圭吾様はまだ寝てるでしょうから。
今のうちに、こっ!このサキュバスのコスプレ衣装を着て寝起きを襲っちゃいます。へへ・・・」
リビングに居たのは空き巣ではなく服を脱ぎ下着姿で、
またもド〇キホーテで売ってそうな安物のサキュバスのコスプレ衣装に
着替えようとしていたラトだった。
「んふっ・・・んふふ、って!け、圭吾様!?な、なんで起きてるんですか!?」
「起きてたら、何か都合が悪いのか?」
「わ、私はもっとだ、だらしない殿方の世話をしたいんですから。
こんな早い時間け、圭吾様はまだ、
て、テントをおっ立ててアホ面でヨダレを上と下の口から垂らして寝てればいいんですよぉ!
け、圭吾様はもっとだらしなくなってください!」
滅茶苦茶言うラトに寝起きということもあり苛立ちを覚え昨日振り二日連続の
げんこつをこのピンクの脳みそを守っているラトの頭蓋骨にかましてやろうと思ったが、
ふと、突然にラトの下着姿を意識してしまい口を噤んでしまう。
ラトの下着は布面積が少なく見せる機会がある仕事をしていただけあってか
下着にまで常に気を使ていることが読み取れる。
「け、圭吾様・・・?あ、も、ももしかして”意識”しちゃいました?」
俺の様子に気が付いたラトニヤニヤしながら手元にあったコスプレグッズの角と尻尾を
手慣れたように身に着けると、普段の怯えた様子とは違い
自身満々な表情でゆっくりと一歩こちらへと距離を詰めた。
俺は普段身近に感じた事のなかった危険な色っぽさに当てられてしまい脳が上手く働かない。
ただ、訳も分からないが、
あの細い指で触れられたら自分の理性が制御出来なくなる気がして一歩下がる。
それに比例してラトも強きに一歩詰めるそして俺が再び一歩下がる。
そんなことが数ターン続くもこの家自体決して広くはない為すぐに壁に背がついてしまった。
そんな、袋のネズミ状態の俺を見たラトは淫靡に笑った。




