EP33
照れて顔を逸らしていた心ちゃんだったがしばらくし思いが伝わったのか、
ゆっくりとこちらへと向き直った。
そのことがとても嬉しかったがまだ心ちゃんの顔からは不審がる表情が残っていたので
俺は無言で力強く頷く。
そして根負けしたのか真っ赤に染めた大福みたい今にも零れてしまいそうな頬を両手で抑えながら
まだ泣いていた時の余韻を残したような焼けた声で口を開き始めた。
「だったら、これからも一緒に居てくれませんか?圭吾お兄・・・ちゃん」
お兄さん呼びからのお兄ちゃん呼びの変化に若干の動揺をしつつ、その発言の真意を確かめる。
「私、さっきも言った通り能力のせいで友達を作るのが苦手で・・・でも、圭吾お、お兄ちゃん!となら」
「そんな言い辛かったら「さん」に戻したら・・・」
「そ、それはダメですよ!だってその呼び方じゃ堅苦しくて距離があるみたいじゃないですか!」
俺には理解出来なかったが心ちゃんの中では砕けた呼称が譲れないポイントの一つらしい。
「私、昔からの夢だったんです。
同じ境遇でお互いの秘密を知り合った上で本当の意味で仲のいい関係を築くのが。
それと、ですね・・・」
何かを言いかけから急に心ちゃんがモジモジし始めた。
「お父さんとお母さんが昔から家に居なかったので・・・その、寂しかったんです。
だから贅沢は言いません、たまにでいいので・・・甘えさせてくれませんか?」
「あ、甘えるって・・・?」
「本当のお兄ちゃんと妹みたいな関係で私を扱ってほしいなー・・・なんて。
気持ち悪いですよね・・・」
そう言い切ると再び下を向いて心ちゃんは黙ってしまった。
心ちゃんと出会ってからその礼儀正しさや賢い言葉使いから幼い子として認識出来ていなかったが、
やっぱりどれだけ大人っぽく振る舞っても子供は子供なのだ。
膝を地面に付け腰を下ろし俺は心ちゃんの目線まで自分の頭を下げる。
そして自分の言ったことに恥ずかしさを覚え後悔をして今にも再び泣きだしてしまいそうに震える
心ちゃんの頭に手を乗せ優しく撫でる。
「・・・え?」
「ダメじゃないよ。本来心ちゃんぐらいの歳の子にとって、
年上に甘えることは当たり前のことなんだから。
俺、妹とか居たことないからちゃんとお兄ちゃん出来るか分からないけど、
それでも心ちゃんがよければ出来ることなら協力するよ」
「ほ、本当ですか!?なら、早速のお願いなんですが私のこと
「心ちゃん」じゃなくて「心」って呼び捨てで呼んでくれませんか?」
「別にいいけど、それ一番最初にお願いするようなことなの?」
「大事に決まってます!
さっきも言った通り呼称一つで心の距離がとんでもなく変わっちゃうんですよ?」
まるで命に関わることのように決死の表情で訴えてくる心ちゃんの表情は年相応の顔になっていた。
その顔に思わずこちらの表情が緩み笑みが零れる。
「なんで笑ってるんですか圭吾お兄ちゃん」
「え、いやぁ。心も年相応の可愛らしいところがあるんだなって思ってさ」
「ふぇ?それはまぁ私まだ小学生ですから」
「それなのにこんなに大人よりもしっかりしてて偉いな、心」
「えへへ・・・。
そうです、私は小学生で圭吾お兄ちゃんの妹なので甘えるのも当然のことなんです。
だからもっと撫でてください」
「そんなのお安い御用だ」
「それと、もう一つワガママ言ってもいいですか?」
「勿論」
「この後帰っても私の家誰も居なくて寂しいんです。
なので良かったらこの後私の家に一緒に行きませんか?」
まさか、小学生の女の子から
「・・・今日、家親居ないんだけど。来る?」的なことを言われると思っていなかったので
動揺しながらも、勿論”そういう”のとはまた違う意味だと言うのを自分に言い聞かせる。
「それならお言葉に甘えてお邪魔させてもらおうかな」
「や、やったー!じゃあ早く行きましょう。
自慢じゃないですが私の家綺麗なのできっと圭吾お兄ちゃんも気に入ってくれると思いますよ」
俺の承諾の言葉に若干被せながら心は喜びを素直に言葉に表しその小さな手で俺の手を握った。
その後、心の自宅に向かう道中心はまるで散歩が大好きな大型犬の様に
俺の手と腕をグイグイと引っ張りながら今日の小学校で受けた授業の話を凄く楽しそうに話してくれた。
ーーーーー
あの公園から15分程歩いたとき、
「あ、ここが私の家だよ。お兄ちゃん」
俺の手を引っ張っていた心が足を止めた。
そして俺は心の指さす一軒家を見て見せ槍をされたエロ漫画の穴役のようなセリフを漏らした。
「・・・デッッッッッカ」
心の自宅の正体はとんでもない豪邸だった。
いや、正直ここに来る道中に「・・・ん?」と思う出来事はあった。
ほんの少し前から歩いてる道の辺りの様子や風景が変化していったのだ。
公園から大体10分程辺りまでは普通の住宅街でさっきの公園とはまた違う公園などが幾つもあり、
のほほんとした雰囲気漂う普通の住宅街だったのだが。
その後しばらくして雲行きが怪しくなっていた。
段々と付近の道路に高級車がよく通るようになったり。
周りの住宅に庭や大きな車庫、
駐車している車が高級車になんてことが当たり前になっていたのだ。
そんな庶民家出身の俺はそんな心の自宅に圧巻されてしまった。
「自分の実家だと思ってくつろいでいってね、お兄ちゃん」
出来るかぁ!全然うちの実家と違うわ!こんな立派な豪邸に比べたらうちの実家なんて犬小屋だよ!




