EP28
チャイムが鳴ると教室内の生徒たちはそれぞれ口々に
今日の授業で溜まった疲労の愚痴を皮切りに会話し始めた。
本日の授業は今さっきのマスで終わり部活動に入部しいる者は学校に残り
それ以外は速やかに下校するか校内に暇を潰すか勉強の為部活動に励む者と同じぐらい
もしくはそれ以上に居残る。
そして俺は帰宅部、つまり部活に入っていない為普段ならサタンと一緒に下校するのだが。
サタンが今日は数多先輩と放課後街へ遊びに出かける為、
この後暇を持て余すことが決まってしまっている。
そんなわけでどう暇を潰すかと幸せな悩みを考えていると、肩を小突かれた。
この時点で声を出していないのは大概ミカエルだ。
ミカエルは俺に何か用があるとき優等生モードで不自然な態度で俺にその場で話しかけるか、
今の様に小突いて教室の外に呼び出し普段通り会話をする2パターンがある。
無表情ながら有無を言わせない笑顔のままミカエルは席に座った俺を見下ろしている。
さすが天使、人間を見下ろすその姿は様になっている。
まぁ、その態度に何か文句を言おうものなら魔法でシバかれてしまうので情けない話だが黙って
ミカエルの背中に付いていくことにした。
「今からスナバ行くんだけど来る?」
スナバとは通称スナーバックスコーヒーの略称で、
オシャレな雰囲気が特徴的なチェーンのコーヒー屋だ。
コーヒー屋ではあるが一番の売りはホイップや、チョコソース等の様々なトッピングを
追加した甘いデザートドリンクが人気で、季節の新作が発売されると
キラキラSNS女子たちのタイムラインにはスナバの新作ドリンクがズラっと流れる。
だが、俺はミカエルのその誘いに乗り機じゃなかった。
「・・・スナバ実は入ったことなくて」
「あら、そうだったの。コーヒー嫌い?」
「いや、そういうわけじゃ」
「なら、甘いモノ苦手とか?」
「別に」
「・・・あーもうっ!じゃあ、なんなのよ?急にナヨナヨして何が言いたいの?」
俺が気恥ずかしく本音が言えない事に苛立ちを覚えるミカエル。
その気迫に押され恥ずかしさから隠してた本音を零す。
「なんか、雰囲気が入りづらくってさ」
「そう?そんなこと感じたことなんてないけど」
「ほら、初見さんお断りみたいな」
「だとしたら他の客は一体どうやって初見さんじゃなくなってるのよ」
「・・・顔パス?」
「バカじゃないの?要するに行ったことないから敬遠してるだけでしょ?
なら、私が付き添ってあげるから。今日、スナバデビューしましょう」
ーーーーー
学校から一番
近くに位置するスナバに行く為、普段放課後に通っている道とは別の道をミカエルと二人で歩く。
普段この道を通らないので見慣れない店が数多く並ぶ。
都会と言うのは通る道が少し違うだけでこんなにも雰囲気が変わるのか。
実際、今歩いてる道は流行りのお店や可愛らしい外装の店が
多く並んでいてなんだか歩くだけで落ち着かない。
「あ、ねぇねぇ見て。あそこにあるお店あるでしょ?」
「え、どこ?」
「あれよ、あそこにあるガラス張りのお店」
ミカエルが指し示す方向には確かに全面ガラス張りのお店があり。
外からは店内に居る客が美味しそうに大きく膨らんだパンケーキを食べたり。
口を付ける前に写真を撮る準備をし始める姿があった。
「あのパンケーキ屋さんか。確かに見えるパンケーキはどれも美味しそうだけど、
あのお店がどうかしたのか?」
「実はね、先日数多に連れて行って貰ったんだけどね。
あそこのお店のパンケーキすっごく美味しいのよ」
とてもすごいことを言う雰囲気だったのでミカエルが言いたかったのが、
ただの来店報告だったことに少し肩透かしを食らった気分だったが・・・。
まぁ、それほどいいお店だったという事なのだろう。
「へぇ、それは羨ましいなぁ・・・」
「でしょう?」
「気になるからさ、食べた時に”撮った”パンケーキ見せてよ」
「・・・”摂った”パンケーキを?け、圭吾貴方何を言ってるのよ」
「あぁ、そうかパンケーキ”撮って”無いのか」
「いや、”摂った”わよ?そもそもあそこパンケーキを売りにしているのよ?
”摂らない”わけないでしょう」
「そうだよなせっかくパンケーキ屋入ったんだから、そりゃ”撮る”よな」
「当たり前よ」
「じゃあ撮ったパンケーキ見せてよ」
「・・・だから貴方さっきから何を言って」
「だって気になるじゃん。せっかくならその美味しいパンケーキを共有したいじゃん」
「は、はぁ!?”摂った”パンケーキをきょ、共有したいって貴方正気!?」
「え、そんなにおかしなことか?結構最近だと普通のことだと思うけど」
今はSNSの発達で派手なモノや思い出に残るモノ、それこそ映えスイーツとかって
記録に残して後日友達とかとの会話で使うと思うんだけど。
中には普通の食事をネットに上げてる人とかも居るぐらいだし・・・。
「・・・それって、若い人間。学生とかもするの?」
「まぁ、するな・・・。それこそ学生の中でが一番盛んなんじゃないかな」
「えぇ・・・。で、でもそれなら入るのかしら?・・・”青春”の範囲に」
そうかミカエルはゼウス様から俺の青春を手伝うように言われてるんだったな。
だが、ミカエルは青春の範囲か否か確認するとすっかり黙ってしまった。
しばらくの沈黙が続き気まずい雰囲気が流れたがスナバについたことで会話が再開した。
時間帯が時間帯なのでやはり学校終わりの学生が多い。要するに入りづらい・・・。
「あ、ここよ。ってどこ行く気よまさか圭吾貴方、ここまで来て入らないつもり?」
「・・・分かったよ。腹を括るわ」
「そ、そんなに・・・?」
ドギマギしたミカエルとまるで覚悟を決めた武士の様な表情の俺はまるで戦地へと向かうような
勢いでスナバに入店した。




