EP24
数多先輩を乗せたゴーレムはゆっくりと地面に足を付けると15メートル程あるその体を停止させた。
「数多先輩!」
「数多貴方・・・遅かったじゃない」
そう言いつつもミカエルの顔は安堵に溢れ俺が見た中で今までで一番数多先輩への当たりが優しかった。
「大丈夫かサタン君、立てそうかい?」
「あー・・・ちょっと厳しいすね」
「そういうことならこの子の番だな、
行けスーパー介護君!」
数多先輩がポケットから取り出し地面に落ちた球体はみるみるうちに変形していき
ポ〇モンに登場するゴ〇ットの様な丸っこい可愛らしいゴーレムが出来上がった。
「そのスーパー介護君は老人ホームでの活躍を想定された私の実験体の一つでね、
抱っこも寝かしつけも簡単にこなしてくれるんだ。スーパー介護君、サタン君を運んであげてくれ」
数多先輩の命令を受けるとスーパー介護君はトテトテと歩きサタンの元へ向かうと軽々持ち上げて
戦場の前線から逃走した。
「ミカエル君は・・・いつもより少し気迫が足りない声色だけど大丈夫かい?」
「ッ!大丈夫に決まってるでしょ?私は天使よ。悪魔みたいな軟弱者と一緒にしないでまだ戦えるわ」
「キシシ!・・・なら良かった。
圭吾君は大丈夫かい?」
「縛られては居ますけど危害は何も」
「了解。だがずっと縛られっぱなしってのも
辛いだろう?だからそろそろ解放といこうか」
「次から次へ助けがしかも全員女って、
圭吾様。私、一夫多妻制には反対ですよ?
それとあんな幼い子を手籠めにしているなんて」
「待て待て、
絡まった糸みたいにややこしいことになってるな。
俺も乱交みたいに廃れた恋愛は嫌いだし、
俺はロリコンではない」
「ではこれが終わったら
二人っきりでまぐわいましょうね。糸竜!」
『分かっている。
不意打ちに驚きはしたがこれ以上の遅れは取らん、
銅や鉄で出来ていようが
この牙と炎で壊してくれるわ!』
体勢を整えた竜は全力で
巨大ゴーレムへと立ち向かった。
巨大ゴーレムと数多先輩はと言うと、数多先輩が手元にあるルービックキューブをクルクルと回し
乗っているゴーレムを操作している。
『グオォォォォ!』
ドン!と竜の口がゴーレムの顔に噛みつくと、
『ふぅ・・・竜溜息!』
その顔面にゼロ距離ドラゴンブレスをお見舞いした。
数多先輩は離れた場所に位置している為問題はないがゴーレム自体の損壊の危機があった。
だが、竜が炎を吐けど吐けどゴーレムの身体が解け落ちることはなかった。
「この子はね、私が開発した特殊な金属で作られているから簡単に溶けたりはしないよ?」
そして顔を咥えられながらゴーレムは竜の前足二本を掴むと全力で引っ張り始めた。
『な!?ぐ、ぐぅ・・・貴様何をするきだ。
だ、だが我の身体の糸は我の力で頑丈なモノになっているそう簡単に引きちぎれるワケが・・・』
「これはただの過程さ」
そういうとゴーレムから第三、第四の腕が生え始め。
その先端には五本指ではなく電動ノコギリが装着されていた。
そのノコギリは「ギリリ」と笑っている。
『まさか、そんなはずが!想いは物理的に破壊されないはずだ!無駄なことを!!!』
竜の静止も意味を持たずノコギリの歯は竜の前足関節部分を貫通した。
複雑に編まれていた分、何回も糸が通っている重要箇所が切られると竜の身体は一瞬にして解け落ちた。
「そ、そんなはずが。私の糸が・・・そんな・・・」
「これはただの暴力的な答えじゃないさ。想いに勝るのは想いだけ。君の圭吾君への想いよりも
僕の実験への熱意が勝っただけさ。
分野は違えどぶつかり合えばどちらかは砕ける、そういうモノなんだよ想いっていうのは」
巨大な竜は消え今この場に残る最後の糸は一本だけ。運命の赤い糸だった。
だがすぐにその糸も消えた。
この不利な状況に恐怖した巡流が自ら薬指に付いた
赤い糸を振りほどき全速力で逃げだした。
「な、君!ここまで来て逃げる気かね!?」
「あ、当たり前でしょ!
死んだら元も子もないんだからーーー」
回転巡流は言っていた。
自身は、星垣圭吾と結ばれる"運命"だと。
それはきっとただの妄言なんかじゃなく事実。
あの龍がなんかしらの力で定められ、
そうなるものだったはずだ。
なら、近い未来俺と彼女が結ばれる運命ならば。
言い換えれば彼女はこの場で
絶対に死なないはずだった。
なにせ俺と結ばれる未来が確約されているんだから。
だが、彼女は今、
その運命を、自らの手で薬指から解いてしまった。
捨て台詞を言い切る前にそれを邪魔するような大きな発砲音が鳴り響く。
この感じ一度聞いた覚えがある。あれは確かサタンの拳銃。
「・・・カッコ悪いマネしてんじゃねえぞ」
回転巡流は地につき、糸蛇や竜たちは蘇ることもなく。そして俺の拘束は今完全に解けた。決着だ。
その後まもなく回転巡流は息を引き取ったのだが最後に呟いていた
「圭吾様・・・先に来世で待っていますよ・・・」と言う遺言には思わずゾッとした。
結局一人の少女の恋は実らず運命というのも
恐怖という感情、想いで上書きされてしまい。残ったのは不快感だけだった。




